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静止画で観るマトリックス アクション編

皆さまあけましておめでとうございます。唐突ですが今年の「映画初め」でマトリックスを見ました。何故、いまマトリックスなのか、と疑問に思われる方も多いと思うので最初に言っておきたいのですが、マトリックスは映画史上最も過小評価されている作品なのではないか、と思っています。

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若き日のキアヌ・リーブス

なぜ過小評価されてしまうのか。それはひとえに生まれた時代が悪すぎたためです。1999年のこの作品は「20世紀のオールタイムベスト」で黒沢明やゴダールと並ぶにはいささかクラシカルな権威が足りないのです。かといって21世紀の作品ではないので先日BBCが公開した「BBCが選ぶ21世紀最高の映画100本」などには選ばれようもありません。1位のマルホランド・ドライブは僕の生涯ベスト10に入る作品なので文句はありませんが生み出された年が2年違っただけでこうもスポットライトの当たり方が変わってしまうのはどうにもやりきれない思いがあります。

なので今日は「静止画で観るマトリックス」と称して、細かいこと抜きに、マトリックスという作品がいかにおもしろいのか、偉大なのか、というのをスピーディにご説明しようと思います。

先ず、マトリックスの素晴らしさを理解するうえで一番手っ取り早い画像があるのですが、それを見る前にある一つのシチュエーションを想像してみてください。

銃撃戦です。あなたは柱の陰にかくれて敵の銃撃を防いでいます。さらにその奥の柱との間に銃があります。ただそれを拾おうとすると敵に無防備な姿をさらすことになってしまうので出来るだけ。姿をさらしたくありません。さあ、どうしますか?

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スライディング、ローリング、そっと手を伸ばす、そんなアクション偏差値の低い回答が浮かんできたと思うのですがマトリックス的正解はこうです、

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答)側転しながらとれば動きに無駄がないし、敵の弾に当たらない

「なるほど、その手があったか」と思った人は才能ありです。そのまま読み進めてください。「え?なんで? 晒す面積広くなってない?」と思ったあなた、大丈夫です。徐々にアクション偏差値を上げていきましょう。

ちなみにアクション偏差値が高まると次のような応用もできます

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以上の二つの静止画を見ただけで多くの人にマトリックスがどういう映画かをお分かりいただけたと思います。そうです、マトリックスはある種ギャグ映画なのです。

そして幸いにして日本で生まれ育った僕たちにとってこのギャグはとても分かりやすいのです。もういくつか例をみてみましょう。シーンはキアヌが演じる主人公ネオが味方組織のボスであるモーフィアスと模擬格闘戦をしています。

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真正面からいったら敵わないからとりあえず柱を登るキアヌリーブス。

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この技はもう皆さんご存知でしょうね。
そうです。北斗千手壊拳です。

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段々とあなたのアクション偏差値が上がってきているのではないでしょうか。そうなのです。マトリックスというのは仮想世界(夢の中のようなもの)なので現実離れすればするほど強いのです。宣伝用のショートムービーで映えるために派手なシーンを撮ってるわけではなく、アクション偏差値の高さがイコール強さにつながる世界で戦っているのです。

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銃で撃たれたらスウェイで避ければいいキアヌリーブス

さて、そろそろ「バカにしてる?」と思われる方もいるかもしれませんが、僕は今回改めて映画マトリックスを見て本当に面白い映画だと感激しました。今回はアクション篇なのでストーリーについてはあまり触れませんが、映画の最後のほうは座っていたソファーからいつの間にかおりてテレビの前に齧りつくように見ていました。

なんでこんなにも面白いのか。それは多分「撮ってる人が本当に楽しんで撮ってるのがビシビシ伝わってくる」からなんですよね。一見ギャグのようにも見えるけど、とても真剣。というか真剣だからこそとても面白い。「それ本気で映像化しちゃう?!」と5分に1回は思わせてくれるほど密度たっぷりでアクション偏差値の高い「難問」が押し寄せてきます。

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ビルに突っ込むヘリ。衝撃の余り水面になる。

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何故かお互い飛びかからずにはいられない銃撃戦(しかもスローモーション)。これはシンの南斗獄屠拳からエージェントスミスが着想を得た可能性がある。

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これ見よがしに割れるグラサン。

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運悪くエージェントの前に立ちふさがってしまった野菜を持つ男性。

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めっちゃ飛びます。

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この左右のパンチを繰り出す技はあの有名な

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おそらく攻殻機動隊よりも北斗の拳の影響の方が強いのではと思いました。

さてあまりお見せしてしまうと静止画だけでおなか一杯になってしまいかねないのでこの辺で自重しようと思います。
アクション映画としてのマトリックスは映像の革新性や斬新さで一世を風靡しましたが、どこか一発屋的な捉え方をされたような気もします。けれどこれほどの本気で映像化するなんて誰も思わなかった着想を次々と映像化し、世界のアクション偏差値をひとつの映画で10ほど上げたマトリックスを絶対に忘れてはいけません。

映画って映像を楽しむものだよね! というとてつもなくシンプルな方程式をなんとなく忘れ去ってしまった今こそ、みんなで観よう、マトリックス!


もしよかったらもう一つ読んで行ってください。