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れいゆ詩集「どしゃ降り」電子版


原稿用紙34枚(5384文字ほど)※あと何編か追加します。500円は有料部分の値段ではなく全体の値段です。




一万年宣言


キリストだってキリストよりずっとむかしにうまれた

みんな一万年前にうまれた

一万年たって、じぶんにきづいた

ある日、べつのじぶんと会った

べつのじぶんは、このじぶんじゃないみたい

一万年たって、かなしくなった

あと一万年いきてみる


Christ even born a long time ago from Christ.

Everyone was born to 10000 years ago.

After 10000 years, i was self-conscious.

One day, I met with another self.

Another self is seem not my self.

After 10000 years, I became sad.

I will live now 10,000 years.





ぼんやりと肉がうごいている


空気だって水だ!

時間だって水だ!

シャーベットのような鋭く香ばしい音ひとつふたつ浮かぶだろ、庭の石の中心から。

雨ときどき曇りの中空に明滅する枯山水のそこらの石に耳あてたんだろう。

骨が崩れて木っ端微塵、接着された小惑星けらけら笑ったんだろう。

溢れていく水をすくうひと!

指の隙間から堕ちていく古代のミネラル、暦のふりしてました。

ぼんやりと肉がうごいている。

庭から遠く離れることは自己が庭になることを意味した。

移動式枯山水。

ぼんやりと肉が。

膨らみつづけるあれは街だ。





amegasuki


バカヤローな街さ東京。一万年たってもこの有り様だ。都市の舗道に血まみれで立ち尽くす。三千世界に浄化の雨が降る。好きな落語は首提灯と千両みかん。好きな渡世人は木枯し紋次郎と座頭市。好きなプリキュアはキュアラブリー。神と脱力。森から都市へ。自虐でも比較でもギャップでもなく。颱風と暗闇を超えていく。誤魔化さない地平。ナンセンスな笑い。興味深いアート。文化のふりしたエロ。宇宙の平和。見えないものは私のもの。地獄のような世界を、それでも美しいと思え。カラフルなブルーズ。昔おぼえた魔法。思わずお金を渡したくなる。雨が好き。 





シビれる


宇宙をたべて

シビれる

昨日の雪は

浪花節

おおそみれろい

狂った歯車

シナリオ通り

あざらひょうじ

骨が光るよ

曇天さま

傷が眠るよ

お月さま

ぐげんじみる

さあお立ち会い

神と私

還元される

どうのげんじょ

お前いつかの

無法者

てゆたたのはん

てゆたたのはん

開演時間だ

緞帳あげろ





yoha

時のないかわりに

いつも雨降る

還らないものは何

腰掛けたまま痛む躰

余波

街の空気は文化だろうか

知ることもない

確かなことは

沈黙するために発する

ことば

ああまるで私

湾岸戦争のときの

鳥さんが佇む水辺に

浮かぶ醜い石油のようだ

いつになったら

水になれる

ただやさしい空から

降る雨粒で誤魔化している





愚者(SHINJUKU)

こんにちは
きみ新宿って知ってるの
新宿
新宿
東海道最初の宿場町だよ内藤新宿

弥生の乾燥性と縄文の湿地性なんて言って中沢新一じゃないんだから

唐十郎の紅テント
紀伊国屋書店でかくれんぼ
好き
この街
歩いてるだけで濡れちゃう
VR生きてる実感
愚者は都市を疾走する
時空が歪む
迫り来る空気中の泡
意識にひび割れ
風が吹きます雨は小雨でご勘弁
暦のにおい
30世紀のバカボンが
ゴールデン街でいきだおれ
それは美少女だったが
AカップのところをDカップのブラしてる両性具有の美少女だったが
歩いてばかり走ってばかりジャンプしてばかりで疲れちゃって倒れちゃって死んじゃった
笑いながら死んじゃった
泡吹いてドロン
見つめた空に浮かぶ月
あれはおっかさんと満州で見た月とおんなじだ
通りがかったデビュー前夜のTAMORI
眠れない
眠らない
これでいいのだ花もこし
無意味への賞賛
ものみな通過する





賢者(KICHIJOJI)

なんでもよかった
そうあればいい
確かめることもない
傷の痛み
カラダの重さ
変わりはしない
きょうは気分がいい
思い出なんてない
誤魔化すことが恥ずかしい
かたちがないように
風景を眺め
一日を暮らす
すべて僕の責任だ

WATARU

罪と預言が
ひとつだなんて

永遠のごあいさつ





「うちゅう」

by 邪悪な谷川俊太郎


うちゅう、ってどんなひと
やさしくてこわいひと
よるになったり
あさになったり
ほしをまわしたりする
いつかだれかがいってた
やさしいひとはこわいんだって

うちゅうからみたら
にんげんはひかりのちり
さだめも
うそも
あしどりも
どうでもよくなって
ただほのかにひかってる

うちゅうって、おかあさん
はじまりはビッグバン
でもそんなのむかしのこと
きのうのことも
おもいだせないで
あっちからこっちへ
こどもたちはあるいてる

だから、ぼくはこのちきゅうにおりたった
おまえたちをほろぼすために





obentou


一秒前の街はお祭り騒ぎ
音も立てずにお祭り騒ぎ
自分探しに夢中なガキが
どこかでパクった言葉をコラージュ
それを弁当箱にちょいと詰めて
けっきょく自分で食べている
けっきょく自分で食べている

ホームランは夕焼けだ
あるく喫茶店はカミサマ

いちばん傷つかない方法を
いちばん誤魔化せる方法を
すぐに見つけた哀れなガキが
身のほど知らずのなぐさめあい
それをカメラでちょいと見せて
けっきょく自分で濡れている
けっきょく自分で濡れている






新宿/パレスティナ


愚者のための二月の雪
あからさまなビルの曲線
分断されていくわたくし
ここは確かに新宿だが
同時に遥かパレスティナの
九月のオリーブ畑に立ち尽くす
冬の寒さに震えているのか
敵の弾圧に震えているのか
鼓動は加速度的におさまらない
それはビッグバンの残響だ
宇宙はずっと開闢したままで
人類の歴史は落ち着かない
からだ越しに吹いてゆく風さえ
季節や風土を忘れてしまった
人のふりをしたわたくしが
知恵の足らないまま
人のかたちで《ここ》にいる

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