（スポーツにおける）テレワークの覇者はモータースポーツかもしれない ｜ GO AHEAD -僕の描く夢- 第290回

　こんばんは、坂岡 ユウです。今日は久々に、私が愛してやまないモータースポーツの話。特に、eスポーツの話をしますよ。

　新型コロナウイルスの惨禍で様々なスポーツが閉鎖状態となる中、モータースポーツも決して他人事とはいきませんでした。WRCのラリー・メキシコは日程が短縮され、F1のオーストラリアGPは既にチームが到着していたにもかかわらず、スタッフが感染したことによって中止。デンマークF3などの例外を除けば、いわゆる開店休業状態となっています。一部のチームはそのノウハウを医療現場に還元していますが、それでもスタッフの雇用や財政状況を維持できず、追加融資やバジェットキャップ（予算制限）の実施を金融機関や各種主催者に要請する事態。

　しかし、モータースポーツが他のスポーツと比べて、なんとかイベントとしてやっていける領域が一つだけありました。

　それは、eスポーツです。モータースポーツとeスポーツは元々とても相性が良く、F1ドライバーは実車で走行する時間以上にシミュレータでの経験を積んでいます。これはテスト制限があったり、予算の問題があったり、様々な要因があるのですが、他のスポーツよりもゲームをスポーツとして本気で楽しむことに抵抗が少ないのは事実です。

　たとえば、モータースポーツの最高峰であるF1や、アメリカで大人気のインディカーシリーズは公式で大会を開催しています。この大会にはF1ドライバーたちも参加し、ランド・ノリス（マクラーレン）やシャルル・ルクレール（フェラーリ）、マックス・フェルスタッペン（レッドブル）といった若手ドライバーたちが積極的に参加。インディカーシリーズは実際の中継とほぼ同じシステムをここでも使用し、現実に限りなく近い臨場感をファンに提供しました。彼らはパソコンやeスポーツ用のバケットシートを自前で購入し、ガチでプロゲーマーや他のドライバーたちに挑んでいます。

開幕延期のF1。新型コロナ危機で見えた、eスポーツレースの可能性 | Mondo Alfa

　このような公式イベントなどにも言えますが、モータースポーツにおけるeスポーツの最大の魅力は分野を問わず、モータースポーツのレジェンドたちの夢の競演が気軽に味わえることです。こんな感じで！

　これは昨日開催された「THE RACE ALL-STAR SERIES」の動画ですが、F1チャンピオンのフェルナンド・アロンソ、ジェンソン・バトン、セバスチャン・ベッテル、エマーソン・フィッティパルディを始め、元F1ドライバーのティアゴ・モンテイロ、エマニュエル・ピロ、ファン＝パブロ・モントーヤ、ミカ・サロ、ヴィタントニオ・リウッツィ、オリビエ・パニス、アンソニー・デビッドソン、エステバン・グティエレスなどなど、錚々たるメンバーが集結しています。

　他にも、ペター・ソルベルグ、マリオ・アンドレッティ、エリオ・カストロネベスもいますし、ドライバー自身が主催した大会ではさらに個性豊かなメンバーが集結しているので、これだけでも見る価値はあると思います。

　こういった「夢の対決が見たい！」という声は、ミシェル・ムートンらが主体となって運営されてきたROC（Race of Champions）で叶えられてきましたが、マシンそのものの成熟度が異なるため、完全に同じコンディションで闘えるeスポーツは本当の意味での夢の対決を実現させたといえるでしょう。

　しかしながら、ジャック・ヴィルヌーブの辛辣な声（「あれはスポーツではない。あれはビデオゲームだ」という発言。彼はもともとレースゲームでコースを覚えるほどのゲーマーだった）を始め、まだeスポーツに馴染みのない人にとっては、「戦略がつまらない」「ゲームだと臨場感がない」などの厳しい声もあり、しかもeスポーツ自体の認知度がまだまだ低く、競技として世界で有名になるには更なる進化が必要かもしれません。

　ただ、グランプリの通常通りの開幕はあと半年〜数年ほど待たなければならない状況です。もう、みんな待ちきれませんよね。ちょっとでもグランプリに触れていたい方、新鮮なスポーツに触れてみたい方は、こういったプロドライバーによるeスポーツを楽しんでみたり、自分でシミュレーターをプレイしたりするのも面白いと思います。

　最後に……意外に触れられていない魅力は、みんなが同じ環境でプロのタイムに挑めることです。インディアナポリスでアロンソのタイムを超えられた、ザントフォールトでフェルスタッペンのタイムを超えられた。こうした体験ができるのは、モータースポーツだけです。是非、プロフェッショナルに挑戦してみてください。自信を持って、オススメします！！

　2020.5.24
　坂岡 ユウ