見出し画像

対談企画「言語恋奏」第四回 | 「2020年とミュージカル」(W/宮前あかり・森中美結)

 こんばんは、坂岡 優です!
 今回は対談企画「言語恋奏」の第四回をお届けします。

 初回は創作家の鏡水たまりさんと、第二回は同じく創作家の千月薫子さんと「共同創作の魅力」、第三回は写真家のシノミヤさんと「写真と身体表現」についてお話させていただきました。

 さて、第四回となる今回は「2020年とミュージカル」というテーマで大阪音楽大学ミュージックコミュニケーション専攻の宮前あかりさんと森中美結さんをお迎えしました。大阪音楽大学ミュージックコミュニケーション専攻は9月に今年度初となるロビーコンサート「Curtain Call」を大阪音楽大学短期大学部ミュージカル・コースの皆さんと共に開催します。

 新型コロナウイルス感染症の影響で、さまざまなライブ・コンサートが中止となっている現在。

 みんなが心に秘めた「音楽の魅力、ミュージカルのおもしろさを伝えたい!」という想いと、この時期に「どうコンサートを作り上げていくのか?」という過程を今回はお届けしていきます。

今回の対談相手

宮前あかりさん(大阪音楽大学ミュージックコミュニケーション専攻2年)
森中美結さん(大阪音楽大学ミュージックコミュニケーション専攻2年)

 二人ともに、ロビーコンサート「Curtain Call」では制作を担当しています。また、今回のコンサートの草案を創り上げた、いわば“発案者”でもあります。吹奏楽とクラシック、ポピュラーをメインにしてきた二人がどのように企画と関わり、仲間と共にコンサートを創り上げていったかを訪ねていきたいと思います。

 (なお、今回はわたしもミュージックコミュニケーションの専攻生なので、専攻生同士の対談という形式になります。お互いに緊張することなく、「中の人」ならではの視点でさまざまなことをお伺いしていけたらと考え、この形式にしました。その辺もご留意の上、お読みいただけると幸いです……!!)

公演と各団体のご紹介

画像1

画像2

豊中市立文化芸術センターロビーコンサート
大阪音楽大学ミュージックコミュニケーション専攻プロデュース Vol.12「Curtain Call」

【日程】9月9日(水)
【会場】豊中市立文化芸術センター 展示室(〒561-0802 大阪府豊中市曽根東町3-7-2))
【出演者】大阪音楽大学短期学部 ミュージカル・コース
【企画・プロデュース】大阪音楽大学 ミュージックコミュニケーション専攻
【申込】先着順(定員60名)
【料金】無料

【出演】津輕 夏帆(専攻科)・前田 紗希(専攻科)・麻生 麗奈(助手)・石賀 舞(2年生)・上野 なな花(2年生)・杉村 奈々花(2年生)・田中 瑤音(2年生)・濱口 喜惠 (2年生)

【振付・ステージング】麻生 麗奈(助手)
【ピアノ】藤井 いづみ(講師)
【監修】羽鳥 三実広(教授)・松田 ひろ子(准教授)

【ミュージカル・コースについて】
ミュージカル俳優に必要なのは「表現技術」と「想像力」。指導陣に多彩なクリエイティブスタッフがそろうこのコースでは、劇団四季の中心メンバーだった教員や、ヴォーカル、クラシックバレエ、ジャズダンスの指導者らが「上達する方法」を惜しみなく伝えます。ヴォーカル、ダンス、演技の勉強を重ね、ひたむきにレッスンに励むことで、作品の感動を伝える俳優を目指します。

【DAION座について】
2017年4月1日、「DAI-ONミュージカル研究会」から改称して新たに「DAION座」がスタート。 学校法人大阪音楽大学が承認する、短期大学部音楽科ミュージカル・コースの上部団体で あり、 大阪発信のミュージカル作品の上演、コンサート活動、ワークショップ等々、幅広い文化活動を行っている。また、CD発売も行われている。

(主な作品)「湖底のブラームス」「ガラスの戦士」「ママ、ふり向かないで」

1.あなたのここまで 〜 音楽との出逢いの話

坂岡 まず、あなたと音楽の出逢いについてお伺いします。演奏でも、歌でも、あなたと音楽との出逢いはいつくらいでしたか?

森中 では、私から。しっかりやり始めたのは中学一年生くらいです。学校のコーラス部がきっかけとなって始めました。それと、一番「音楽楽しいな!」って導いてくれたのが中一で始めたギターですね。六年間、部活でコーラスをやっていて。でも、人数が少なくて、五人とかだったんで。ソロもあって、ソロをいただいたら「頑張らないと!」という想いが込み上げてきて。ギターもバンドをやっていたので、他のメンバーに迷惑かけないように練習頑張ろうって感じで。周りがみんな上手かったので、熱心に頑張れました。

宮前 わたしと音楽の出逢いは、幼稚園の頃にピアノを習い始めたことです。高校三年生まで続けていました。今も大学のレッスンでピアノを続けているんですけど、それが一番の音楽との出逢いで。中学と高校では吹奏楽部に入っていて、そこで管楽器の世界に出逢いました。ピアノは連弾で弾くこともあるけど、ほとんどは一人。吹奏楽だと40人、50人、多いときで60人。最大で150人もありましたし。大人数でひとつの音楽を作れることに楽しさを感じていました。中高の時は吹奏楽に夢中になっていたし、より音楽が好きになって「音楽大学に進学したい」と思えるようになりました。

坂岡 ありがとうございます。次は、ミュージックコミュニケーション専攻を知ったきっかけを教えていただけますか?

森中 正直なところを話すと、第一志望ではなかったんです。最初は映像系の大学に進もうと思っていて。もともとは中高の文化祭で自分の意見をプレゼンするのが好きだったので、そういう場を与えてくれるこの専攻に魅力を感じましたし、これから将来音楽のことをしたいと受験生ながら「パッ」と思いまして。だから、一般の大学よりも、音楽をより専門的に学べる音楽大学に進もうと決めました。

坂岡 なるほど。映像っていうと、映画ですか?

森中 そうそう、映画。

坂岡 ちなみに、好きな監督はいますか?

森中 有名どころで言ったら、ロン・ハワード監督とか。(注:映画「RUSH/プライドと友情」「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」などでお馴染みの映画監督)

坂岡 なるほどね。宮前さんはどうですか?

宮前 幼い頃から演奏が中心だったので、高校生の時はピアノの先生になりたかったんです。大阪音楽大学にはピアノ指導者コースがあって。わたしの高校には普通科の吹奏楽コースがあるんですけど、そこは大阪音楽大学の特別推薦をいただけるんですよね。漠然と「音楽系を選ぶならそこかなあ……」と思っていました。最初はピアノで進もうかと考えてましたが、高校の時にコンサートミストレスをさせていただいていたことがあって。それはコンサートマスターのような首席奏者が手がける役職なんです。もともと演奏も大好きで管楽器で進もうとも考えていたものの、高校の吹奏楽部で演奏会を作る楽しさを知って。そこからミュージックコミュニケーション専攻を知りました。気づけば、ピアノ、管楽器、マネジメントっていう流れになっていましたね(笑)。

坂岡 では、実際入ってみてどうでしたか?

森中 一年生の頃は、実践の場が少ないとは思っていました。でも、二年生になって、ロビーコンサートやミュージックカフェなどに携わる機会が増えて「大変だな」と思う機会が増えていますね。コミュニケーション専攻だけど、意外と引っ込み思案な子も多いんです。だけども、我が強すぎると上手くコミュニケーションが取れませんし、難しい立場だなと思います。

宮前 私も入ってみて、一年生は基礎的なことを学ぶ時間だったので、専攻で何かをするということは少なかったように思いますが、二年生になってロビーコンサートの企画・製作が始まって、企画と向き合うようになって。これまでも企画をすることはありましたが、「企画考えて終わり!」ということが多かったんですよね。でも、二年生になってからは実行することを考えなければならなくなり、企画の非現実的な面白さよりも、現実的な予算や時間の壁を知って。今、まさに苦戦中のところなんです。最初、二年生でロビーコンサートをやって、三年生・四年生でもっと規模が大きくなるので苦労が絶えないかなと思うんですけど、前向きに取り組んでいけたらいいですね!

坂岡 たしかに。一年生から二年生になって、より焦点が定まった気がします。まあ、いろいろありましたよね(笑)。

森中 いろいろありましたよね(笑)。

坂岡 ふふふ。さて、これはあったらで構わないのですが、もし他に個人でやっていることがあれば、教えてください。

森中 私は高校生の頃からの友人とバンドをやっています。コンサートやコンテストには出ていませんが、(趣味として)ワンオクのコピーバンドをやっています。大学の子だと他の専攻の子とまだ出会って一年しか経っていないので距離感が掴みづらい部分もありますが、地元の同級生となら息も合ってやりやすいです。

宮前 私は母校の吹奏楽部のOB・OGバンドがあるところが多いと思いますが、母校にはなかったので顧問の先生が「やりたいね〜」と言っていたので、メンバー集めから動き始めました。やっとメンバーが集まって、去年の一月に枚方市の吹奏楽フェスティバルに出演できたんですよね。それで、今年は「単独の公演をやりたいね」という話をしていましたが、今はコロナの影響で活動が止まっています。なので、今は何もできていないですね。

坂岡 なるほど。せっかく去年入ってきて「人と人との距離感」がわかってきたのに、この状況になってまた離れてしまったような気がしています。ありがとうございます。

 では、次でこのパートは最後の質問になりますが、これから入学したい、この専攻に興味がある後輩のみなさんに「こういうのが好きな人が向いている」とか「これをやっておけばいい」とかがあれば、一言お願いします。

森中 とにかく、どんなジャンルでも構わないんですけど、考えることが好きな子は向いていると思います。自分の考えを言葉にする、表すスキルは後々身についてくるので、いろいろ考えることが好きな子が向いているのと、同級生とも、先輩とも、先生とも、別の学科の方とも、外部の方とも、とにかくありとあらゆる方々とコミュニケーションをとるのは絶対に必要です。そのため、「こう話せば快く引き受けてくれるだろうな」「こう書けば失礼にならないな」という適切な言葉遣いが大切になります。とにかくコミュニケーション能力が企画をうまく進めるために本当に大切なので、そういう子が一人でもいたらいいなあと思います。

坂岡 確かに、社会一般で必要なこととか全部やってますよね。ありがとうございます。宮前さんはどうですか?

宮前 私は多趣味というか、自分の知らないことに「面白い!」って吸収できる人が向いていると思います。高校では部活動や勉強で時間にゆとりがないことも多かったですが、大学では時間にゆとりができます。だから、映画をたくさん観るとか、本を読むとか、できるだけ時間を見つけて新しいものに触れてみると良いです!!

2.立ち上げの話

坂岡 続いて、企画過程の話ということで、まずは企画立ち上げ時の話を尋ねていきたいと思いますが、最初のコンペの段階で採用には至らなかったけれど、面白い企画があれば教えてください。

森中 私は花言葉の企画が好きでした。九月に咲く花にちなんだ曲をボーカル・パフォーマンス・コースのみなさんにやってもらおうという話もありましたし、九月は敬老の日があるので「おじいちゃん・おばあちゃんに感謝を伝えるコンサート」として昔の曲を歌うコンサートも良いなあと思っていました。昔の曲も好きなので(笑)。

宮前 このロビーコンサートはどの専攻に依頼するかが自由なので、これまではクラシック系の方が多かったのですが、私はコロナで好きなアーティストのコンサートやミュージカルの公演がなくなったというショックが大きかったんです。だから、音大にはクラシック以外の専攻も魅力的なので、これまで多かったクラシックではなく、それ以外のジャンルに焦点を当てたコンサートをやろうと考えました。そこで、みんなが企画を出してくれた企画も、ポピュラー系の方に出ていただきたいという企画が多かった。最終的にはミュージカルに決まりましたが、「クラシック以外の音楽を魅せたい」という基本路線で進んでいきました。

坂岡 なるほど。では、この企画はどこが良かったですか?

森中 この企画の発案者が宮前で、企画書を書いたのが私なんですよ。それで、最初のラフスケッチをもらった三月の話をすると、ちょうど観に行こうと思った劇団四季の公演がコロナの影響で中止になったんですよね。だから、個人的には「めっちゃ良いやん!」というタイミングで。すぐに「ミュージカルをしよう!」という方向に向くことができましたし、若い世代にもターゲットを向けることができるし、単純に新しいことをしてみたいという気持ちが強かったからですね。そこを突いてきた「宮前かっけえ」って感じですね(笑)。

坂岡 たしかに、これまでのロビコンを見ていたら、クラシック中心で民族音楽がたまに入るという傾向でしたもんね。

森中 そうそう。ガムラン(注:インドネシアの銅鑼や鍵盤打楽器などによる合奏の総称)とか。

宮前 ミュージカル出身者の方にも楽しんでいただけるミュージカル公演の案を出したのは私なんですけど、今回のコンサートのポイントが「ラジオ風MC」を取り入れたミュージカルコンサートなんです。そのアイデアを考えたのが森中なので、ちょうど発案者ふたりが揃ってますね(笑)。

森中 ふふっ(笑)。

宮前 これまでは綺麗な司会が多かったんですけど、今回はポップな感じのMCが取り入れられるので「いいね!」となった感じですね。

坂岡 そっか。たしかに、最初企画書を読んだとき、幅広い方が行きたくなりやすい企画だと感じましたからね。新鮮でした。なるほどです。

3.立ち上げの話 - コロナとロビーコンサート

坂岡 では、さらに立ち上げの話を伺っていきます。このロビコンの企画を考えるときにやはり新型コロナウイルス感染症との兼ね合いがあったかと思いますが、そこをどう捉えたのかを教えてください。

森中 コロナは飛沫感染をすると言われているので、まずは「声を出すミュージカルはいいのか?」というところから始まりました。きちんと確認を取って、大人数の合唱は難しいけれどミュージカルは大丈夫ということだったので、その段階で安心はしましたね。でも、これまでは声を出さない少人数のコンサート(楽器演奏や少人数の合奏)が中心だったため、そちらの方が良いのかな……という想いもありました。もちろん前例がないので、「もしクラスターになったらどうしよう」という不安もありましたし、先輩にも誰にも聞けないので、企画時にいちばん心配だったのはそこですね。

宮前 本当にその通りですね。

坂岡 まず、「歌っていいのか?」というところからですもんね。声を出していいのかって。

森中 (ホールのコンサートに比べると)距離が近いですもんね。

坂岡 確かに。では、コロナ期に入ってから様々なコンサートが中止になって、コロナだからこそ発表できるアーティストが増えたと思うんですけど、新型コロナウイルス感染症の影響で二人の音楽との関わり方で変わったところがあるのか・ないのかを教えていただきたいなと思います。

森中 私は決まったアーティストしか聞かないので、あかりに任せようかな。

宮前 じゃあ、私が話しますね。もちろんライブがなくなって辛いのは同じだと思うんですけど、オンラインフェスを観ても「生じゃない……」という感覚が強くて。しかも、私は韓国のアーティストが好きで、彼らは兵役があるんですよね。兵役のメンバーを送り出すために、最後のライブにファンが集まるんですけど、それが無くなったのがつらいですね。遠距離というか、国際恋愛みたいなもの。また、自粛期間はインスタライブやYouTube LIVEのように無料で配信したり、アーティスト自身が過去のライブを配信したりして「勇気づけよう」としてくれていたと思うんですけど、最近は有料のライブが増えましたよね。でも、緊急事態宣言が明けると有料配信が増えてきて。それで、無料だったら観ますけど、「お金出してまで観たいと思えるかなあ」という気持ちが生まれてきたんです。せっかくコロナ期で面白いバンドを見つけても、配信ライブは結構な値段なので「生じゃないのにこの値段か」という感覚が芽生えて。距離が出来てしまう。だから、サブスクでは聴きますが、結局今まで好きなアーティストしかグッズを買ったり、応援したりしなくなってしまいました。何目線かという感じもしますが、今人気出たアイドルやシンガーソングライターは「しんどいだろうなあ」という気がしますね。

坂岡 たしかに。わたしも8月24日と25日にALFEEの配信ライブを観ましたが、「4000円かあ……」という気持ちはありましたね。照明やセットはいつもとあまり変わらなかったんですけども。

宮前 フェスとかでも5000円だと悩みますよね。「うーん、5000円かあ。あまり観たことのないミュージシャンもいるけど……買うかあ!」みたいな。

坂岡 なるほど、確かにお金の価値が変わったような感じがしますね。では、先ほどは音楽との関わり方の話をしましたが、よく聴くミュージシャンはコロナ前とコロナ期で変わりましたか?

森中 なんだろうなあ。私は好きなアイドルのライブによく行きますが、そのライブはアルバムリリースツアーだったんですよね。それも中止になってしまったので、ツアーのテーマになったアルバムをよく聴いていました。あとは、コンサートでしか歌われない曲もあって、「アイドルとファンの間の大切な曲」を聴いてモチベーションを保ってましたね。

宮前 さっき言いましたが、私は韓国のアイドルが好きなんですよね。韓国ではライブアルバムがよく発売されていて、トーク部分以外は全部ライブ音源というCDがあるんです。だから、ライブ感のあるものを求めるようになったように思います。あと、ディズニーランドがめちゃくちゃ好きで、パークBGMやショーのBGMをよく聴くようになりましたね。

坂岡 たしかに。私もステイホーム期間で課題に集中するためにフュージョン系を聴くようになって、そういうライフスタイルの変化で聴く音楽が変わるのかなと思いましたね。

4.立ち上げの話 - 実際に企画してみて

坂岡 では、今やってみて上手くいったこと、逆に苦労していることがあれば教えてください。

森中 あまり周りの人に頼りすぎず、今自分にできることを早めにやっておくと後々困らないということを痛感しましたね。あとは、最低限のコミュニケーションを取れる方がいいです。友人同士でも、きちんと挨拶をするとか、返事をするとか、「ごめんね」「ありがとう」を言えるとか、そういうことをちゃんと言える子の方が信頼できるなというのをひしひしと感じています。やっぱり「この子にお仕事を頼もう」と思っても、LINEの返事が遅いと心配になってしまうので、即対応できるかというところと、礼儀をきちんと出来ているかというところ。私も、そこで上手く対応できないというのがありました。

宮前 上手くいっているところは、コンサートの内容ですね。昨日稽古を観に行きましたが、「これを無料で観てもいいの!?」ってなるほどの内容。ここはハードルを上げても大丈夫だと思っています。難しいなと思うところは、人によって作業量が変わってくるところですね。作業量が変わってくるとスタッフのモチベーションを保つが大変になってくるので、そこを回している森中は大変だと思います。

坂岡 ミュージカルを無料で観られるって、すごく贅沢ですもんね。では、次のロビーコンサートに向けての要望や観てみたい内容があれば、教えてください。「こうしたらやりやすいんじゃないかな?」「こういう内容を観てみたい!!」のような感じで大丈夫です。

森中 私は、最近の楽曲をバンド編成で楽しめるコンサートを観てみたいですし、クラシックに振り切るのではなく、楽しく盛り上がれるコンサートを、騒げるような面白いコンサートを観られたらいいなと思います。そんなコンサートがあれば、卒業後も観に行きます!

宮前 今は難しいとは思いますが、もっと参加型のコンサートができても面白いんじゃないかなって思いますね。

坂岡 確かに。バランス良く、逆にこの時期だからこその配信特化でやってみてもいいのかなという気がしますね。

5.ミュージカルの魅力① - ミュージカルの入り口

坂岡 次は宮前さんに対しての質問になりますが、ミュージカルにのめり込んだきっかけになった作品があれば教えてください。

宮前 実は、ミュージカルの公演自体はたくさん観に行ったわけではないんです。もともとミュージカルは好きでしたが、高校生の時に公開された「The Greatest Showman(グレイテスト・ショーマン)」にめちゃくちゃのめり込んで。ミュージカルが苦手な方は「なんでそこで音楽が入るん?」と言われる人もいますが、この映画はとても自然で。ナチュラルに曲が入っていくので、ミュージカルならではの不自然さが少なくて、気がつけば凄いことになっていて。

坂岡 観てるだけで、笑顔になれますもんね。

宮前 そう! 観た後にサウンドトラックを聴くのも楽しいし、曲を聴いたらシーンを思い出せるし。

坂岡 ちなみに、特に好きな俳優、好きな作品があれば教えてください。

宮前 ザック・エフロン(Zac Efron)さんです。「Hairspray(ヘアスプレー)」がすっごく魅力的なので、よかったら観てください。

坂岡 良いですよね。私もミュージカルが好きなんですけど、もはや「歌わないと満足しない」みたいなところまで行っちゃって……

森中 そこまで行っちゃったか(笑)。

坂岡 インド映画とか観ると楽しいんですよね。気づけば踊ってる。めっちゃ面白い。

宮前 また観てみよう(笑)。

6.ミュージカルの魅力② - ミュージカルの好きなところ

坂岡 先ほどもミュージカルの好きなところを伺いましたが、ミュージカルのいちばんの魅力、好きなところってどこですか?

森中 私は乃木坂46が好きなので生田絵梨花さんが出演されているミュージカルを観に行っています。そこで感じたのは、ミュージカル俳優ではなくとも、女優さん・俳優さんが歌うことで「こんなにも心が動くんだ!」と思わせてくれるところです。最初観たとき、とても大きな衝撃を受けました。いつもミュージカルを観られている方には響かないかもしれませんが、今回はじめてミュージカルを観る方にはそこに注目していただけるとハマるんじゃないかなと思います。

宮前 なんだろうなあ。ミュージカルの魅力は、すごく普通のこと言ってますけど、歌とダンスと演技と全部一緒に観れちゃうところだと思います。劇団四季を観に行くとセットがすごくて没入感が凄いし、歌も素敵だし、全部まとめて観られる、好きなものを詰め込んだようなボリューム満点のところが好きです。

坂岡 たしかに、その辺はミュージカルだけじゃなくて、他のお芝居にも共通するのかなと思います。

7.コンサート「Curtain Call」について - この公演でいちばん伝えたいこと

坂岡 さて、続きまして、ここからはコンサート自体のことをお伺いします。今、この時期に公演をやるにあたって、お客様に一番伝えたいことってなんですか?

森中 ミュージカルは敷居の高い印象がある方もいるかと思いますが、観たら絶対ハマるので、その楽しさを知ってほしいですね。あと、企画書にも書きましたが、いつも足を運んで観る機会が少ない同級生や若い世代のみなさんに来てほしいなと思います。実際、観に行くと大人の方が多くて、こういうコンサートで「ミュージカル、退屈じゃないよ」「楽しいよ」ということを伝えられたらと思います。

宮前 私も同じく、ひとりでも多くの方に来ていただけたらという気持ちでいっぱいです。普段、ロビーコンサートは地域のお年寄りの方に来ていただくことが多くて、いつも来てくださっている方に知っていただくのはもちろん、「大阪音楽大学=クラシック」だと思われている方も多いかと思いますが、皆さんに大阪音大の学生がクラシック以外でも活躍しているということも知っていただけたらと思います。とにかく、出演者の方のひとりひとりが魅力的なんですよ。同い年の方もたくさん出ていますし、「学生でここまで作れるんだ」というものが届けたいですね。

8.コンサート「Curtain Call」について② - この公演の見どころ

坂岡 では、今回の「Curtain Call」というコンサートでいちばん観ていただきたい曲、ここは注目してほしいというポイントを教えてください。

森中 ここはあかりから、決まってるでしょ?(笑)

宮前 いや、個人的な感情が入りまくりだから……(笑)

森中 私も全部観てほしいんですけど、二択で迷っていて。うーん、どうしよう。全部良いんだけど……

宮前 そう、全部いい(笑)。

森中 じゃあ、La La Land(ララランド)の「Another Day Of Sun」という曲をやっていただくんですが、この映画自体の代表曲でもありますし、今回の作品でもこの曲が導入なんです。有名な曲を最初に持ってくるという意気込みを感じてほしいですし、最初は歌わずに視覚だけで引き込んでいくという本気感を味わっていただきたいです。

坂岡 宮前さんはどうですか?

宮前 二曲目でも大丈夫ですか?(笑)

坂岡 大丈夫ですよ。

宮前 私が『観たい!』という気持ちで入れたんですけど、「ディズニー・プリンセス・メドレー」というプログラムがあるんですよね。出演者の方がひとりひとり違うプリンセスになって代表曲を歌う演目ですが、そこで出演者のみなさんの魅力を味わっていただけますし、ただ立って歌うのではなく動きもあるし、衣装もドレスで綺麗ですので、ディズニー好きとしてはそこを是非観ていただけたらと思います!

9.コロナとコンサートについて

坂岡 では、次で最後から二つ目のパートに入ります。「コロナとコンサート」ということで、いまコンサートを開く意味、音楽をやる意味を考えていきたいと思います。現在、音楽と社会のあり方など、いろんなことを耳にされると思いますが、わたしたちだけでなく、さまざまな音楽家たちがこの時期にコンサートをやるということに、どのような意味・意義があると考えていますか?

森中 あまり社会と結びついた話ではないかもしれませんが、私が応援しているアイドルは関西で万博に向けて活動していく予定だったんです。でも、コロナで活動ができなくなって。そのため、無観客で万博開催予定地でライブをしたんですよね。それで、実際に万博に行ってみたいという方を見て、アイドルが宣伝をするという効果があると思いましたし、他の私が好きなアイドルでもチャリティーソングを出されている方もいます。社会貢献のために曲を発表したり、活動をしたり、医療従事者の方は気持ちだけでも嬉しいと思いますが、実際にチャリティーとして寄付金を提供できたら動きはあるかなという感じです。芸能人、アーティストなど、影響力のある方がチャリティーソングを出すことによって、ファンの方が少しでも「頑張ろう」という気持ちや、社会貢献しようという気持ちになれると思うので、そこがコロナ禍の中で良い動きなのかなと感じています。

坂岡 なるほど。

宮前 (手を上げる)今回私たちも学生の授業の一環として開催していますが、ミュージカル・コースの皆さんも発表する場が減っていて、私たちのコンサートができないと学びの場も減ってしまいます。学生って、留年しない限り四年間で、ミュージカル・コースの皆さんは短大なので二年なんです。今の自粛のムードがいつまで続くかわかりませんし、終わりが見えない中でいつかは始めないとこの業界も死んでしまいます。だから、小さい規模でも始めないと次に進まなくなってしまうので、空白の学生期間をつくってしまうのだけは避けたいと思っています。私たちも前例がないのがとても大変だと感じているので、できるだけ多く前例をつくっていくことで次の方もやりやすくなると思います。そのため、危機管理はきちんとしながら、できるだけ多くの方が動きを見せていくことで、もう一度コンサートを以前のように行える動きに繋げていけたら良いですね。

坂岡 たしかに、コロナ期に入って、エンターテインメントに人がかけられる余裕がすごく少なくなったような気がしていて、無料でコンサートが観られることによって有料のコンサートへ行く人が減ったり、「音楽にお金を出すことに価値があるのか」という問いかけをする人も増えたりしているように思えるので、本当にこのままだと空白期間ができるし、社会的に芸術の重要性や必要性を再定義していく必要があるのかなと考えています。

 というわけで、先ほども一部触れましたが、今回の公演における新型コロナウイルス感染症の感染防止対策を教えてください。

森中 ホール側はもちろん、専攻側でも独自の対策を行なっていて、演者さんは公演二週間前から毎日検温を行い体調管理を徹底すること、人の多い場所を避けること司会の私と宮前もマスクやマウスシールドを着用して飛沫感染を防止すること、ホール内の徹底的な消毒、観客数の大幅な制限など、ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)をきちんと確保しています。お客さまへのお願いとしては、スタッフが検温するのでご協力していただきたいのと、マスクの着用、検温時のアルコール消毒もご協力お願いします。あと、鑑賞時の歓声や拍手はご遠慮いただけるようお願いいたします。この内容は文章でしっかりお伝えさせていただくので、安心して足を運んでいただければ幸いです。

坂岡 ありがとうございます。宮前さん、補足はありますか?

宮前 大阪府のコロナ追跡システムへの登録をお願いしたいのと、いざという時にご連絡するための個人情報を記載していただくアンケートへの記入をお願いいたします。もちろん、演者内での感染やクラスターが発生しないように、感染対策を徹底してまいります。

坂岡 さて、このような時期でご来場が心配な方や、どうしても当日現場に行けないという方も出てくるかと思いますが、当日来れない方に向けて、SNSやウェブサイトでどのように発信していくかを教えてください。

森中 今のところ、シンプルに人手が足りておらず、配信は予定していません。ただ、公演後に何かしらの発信を行っていこうとは考えているので、公演まではSNSに力を入れていきたいです。

宮前 あと、動画撮影は著作権上の問題で難しいので、公演の写真を載せていきたいとは考えています。

坂岡 おそらく、それだとライブレポートを載せたり、SNSに一曲ごとの紹介をしたり、楽曲を使わない形で発信していけたらいいんじゃないかな……と思いました。

10.最後に 〜 みなさまへのメッセージ

坂岡 それでは、次が最後の質問になります。最後に、この公演の見どころ、公演にかける意気込みなどをご自由に語ってください。

森中 見どころは本当に全部ですし、そう自信を持って言えるくらい素敵な公演になっています。基本的な情報として、ミュージカル・コースのみなさんは全員女性で、みなさんの魅力を最大限に活かせる「ディズニー・プリンセス・メドレー」は最大の見どころです。高齢者の方には白雪姫やシンデレラなどを楽しんでほしいですし、若い方には「Frozen(アナと雪の女王)」や「Tangled(塔の上のラプンツェル)」も楽しんでいただけると思うので、それぞれの推しプリンセスを味わっていただきたいです。

宮前 この公演の見どころは、もう全部って言いたい気持ちでいっぱいです。とにかく、ミュージカル初心者の方から何度も公演に足を運ばれているミュージカル大好きな方まで、みなさんに楽しんでいただけるような公演になっています。ミュージカルの代表的な楽曲はもちろん、お芝居も交えた見どころたっぷりの一つの作品を題材とした楽曲もありますので、みなさんご来場お待ちしております!

坂岡 ということで、以上でインタビューは終了です。おつかれさまでした!

二人 ありがとうございました!!

あとがき

 2020年8月22日、夜……

 諸用で森中さんと話し込んでいた時に浮かんだ企画が、こうして無事に形になりました。ふたりには忙しい中、親身に協力していただいて感謝の気持ちでいっぱいですし、わたし個人としては想定よりも短い期間で創り上げられたことが大きな収穫です。

 文中にも書きましたが、みんなのつくる企画が本当に面白いんですよね。ひとりでは浮かばないようなアイデアがどんどん出てきますし、わたしがつくったアイデアをもっと膨らませてくれる素敵な仲間がいる。残念ながら、今年度に入ってからはみんなと一度もお会いできていませんが、また共に良い作品や場をつくっていけたらなと思います。 

 みなさまも是非、9月9日のコンサート「Curtain Call」に足を運んでくださいね……!!

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 (※ 他にもいろいろ書いています。よければ、どうぞ……!!)

 2020.9.2
 坂岡 優

最後までお読みいただき、ありがとうございました。 いただいたサポートは取材や創作活動に役立てていきますので、よろしくお願いいたします……!!