速く走れないシューズ、アルトラ

季節労働を始めたことと、『Born to Run』という本に感化された私は、積極的にランニングをするようになりました。

 『Born to Run』という本の中に、〝ベアフット・ランニング(裸足で走る)〟という言葉がでてきます。

 70’sの後半にナイキが〝エア〟を搭載したランニングシューズを開発し販売したことによって、いままでの薄底のランニングシューズから、エアなどが搭載されたより厚底でクッション性のあるシューズを好んで履く人が増えました。

 しかし、ある研究などではクッション性のあるシューズの方が実は足に悪影響である場合もあることがわかりました。素足で走るには痛く、負荷がかかりすぎる走り方でも、クッション性のあるシューズ履いてでは走れてしまうのです。例えば、裸足で道を走るとき私たちは決して、踵から着地しません。そんなことをしたら痛すぎるし、すぐにかかとが壊れてしまいます。たぶん私たちは、足裏の半分からさき、つま先により近い方を使って走ります。そうすれば痛くないですし、自分の足の限界より速く走ることができないので、自然に足を衝撃から守ることになります。

 そのようなクッション性のあるシューズに対抗して、よりナチュラルで、本来の足の使い方にそった、裸足やクッション性のほとんどない、より素足に近い感覚のシューズを履きランニングすることをベアフット・ランニングといいます。

 私はこのベアフット・ランニングの文章を本の中で読み、それに関連する記事を雑誌やインターネットのサイトをみていくなかで、アメリカのALTRA(アルトラ)というブランドのシューズを見つけました。

 アルトラのコンセプトはシューズのヒール(かかと)の部分を削り、つま先との高さを同じにする(アルトラ社の言い方でゼロドロップ)にすることでヒールストライク(かかと部分から着地する走り方)を限りなく無くすということでした。それにより、より自然な走り方にたどり着き、怪我を最小限にとどめることができるのです。

 アメリカのメーカーのシューズなので、デザインは正直言って欧米人好みなのかなあと思います。ちょっとダサいです笑。でも、ヒールとトップとの高低差を無くすこと、また、余計なクッションなどの機能を避けることによって素足に近い感覚を与えてくれます。普段私たちが履いている靴は必ずと言っていいほど多少の傾斜がかかとからつま先にかけてあるので、初めてアルトラを履くと、重心がかかとよりになり、その不安定さから違和感を感じます。しかし一度走り始めると、このゼロドロップという機能がなんとも心地いいのです。

 ただ、タイトルにも書いたようにアルトラは一般のレーシングシューズと比べると決して〝速く〟走ることのできるシューズではないと思います。それは、つま先の形状にあります。より、自然に近い走り方をするために、つま先の形も足の指に沿った広がりを持っています。それが足の指を圧迫せず、より指の指を自由に動かすことができるので、開放感を与えてくれます。しかし、速く走るためにはつま先はある程度一箇所に集まり、尖っているような形状が好ましいのです。それは、シューズの先端が一箇所に集まっていた方が地面を蹴ることによって地面から受ける力がより集約され、前に進む推進力がより大きくなるからです。つま先が広がっていると力が分散してしまうため、より大きな力を受けることができず速く走ることが難しくなるのです。

 まちなかを見ていると本当に沢山の人がランニングをしています。大会に向けて走っている人、健康のために走っている人、ストレス発散のために走っている人、1ヶ月後に会う恋人を驚かせるために走っている人、なにかアイデアを浮かべるために走っている人もいるかもしれません。私の場合は身体を鍛えるためや、気持ちよさを求めて走っています。

 速くは走れないし、デザインもカッコよくないけれど、限りなく気持ちよく走れるシューズ、アルトラ。

 気持ちよく走りたいそこのあなた!

 一度試してみてはいかがですか。

 http://altrazerodrop.jp/

 おわり

 

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