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【編集部取材】 国際航路で国内旅行需要喚起?「関釜フェリー」と「青春18きっぷ」が結びつく背景とは。 山口県下関市

2018.07.17

今年も間もなく、「青春18きっぷ」の夏シーズンが幕開けする。

旅慣れた人にとっては「釈迦に説法」となるが、「青春18きっぷ」とは、学生が「夏休み」「冬休み」「春休み」となる期間中に限り、JR全線の普通列車(快速列車や一部特例を含む)が乗り放題となる格安きっぷのこと。

価格は5日分が1セットで11,850円(1日1人あたり2,370円)。

同一行程であれば、2~5人で利用することも可能だ(5人で利用すれば、1セットを1日で使い切る形となる)。

このきっぷを利用すれば、1日2,370円で、始発列車から日付が変わる直前まで、丸々1日乗り通すことができる。

例えば、東京の品川駅を5時10分の始発列車で出発、普通列車や快速列車を「順調」に乗り継げば、当日の23時50分には、本州最西端の下関駅に辿り着く。

移動時間は19時間にも及ぶが、この区間の「正規運賃」は13,180円だから、青春18きっぷは、実に「約8割引き」の格安きっぷとなる。

そして、その本州最西端の下関と釜山を結ぶ関釜フェリーでは毎年、青春18きっぷ利用者を対象とした半額キャンペーンを実施しているのをご存知だろうか。

さすがに、品川の始発から乗り継ぎ、23時50分に下関に到着したのでは、フェリーの乗船に間に合わないが、出発地が関西であれば、充分に間に合う。

言わば、格安移動手段+格安移動手段という組み合わせで、国内旅行+αの「旅」を、個人レベルで「造成」してもらおうというのである。

ではなぜ、このような「尋常ではない」レベルの割引が可能となるのか?

そこには、多くの交通事業者に共通する「即時財」という宿命があった。


<目次>

■「需要」に合わせて「供給」することが難しい交通事業。

■青春18きっぷの原価は、限りなくゼロに近い?

■青春18きっぷは、「無」から「有」を生み出す。

■トラックの「ついで」に旅客を乗せる?フェリー。

■フェリーを悩ませる、空間的な需要の偏在。

■意外にも?青春18きっぷとの相性がよい関釜フェリー。

■国内旅行の「ついで」に釜山へ立ち寄り?

■夜景クルーズ付きのホステル?「宿泊施設」としての側面も。

■必ずしも凹と凸があっているわけではない?

■永久に取り戻すことができない「空席」の完売という理想。

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