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長期雇用の保証より自分らしさが発揮できる環境の方が社員は定着する?

フリーランスとして働いていると、組織に所属していない自由さがありますが、それと引き換えに、少しさみしさを感じることもあります。

毎日通うオフィスがあり、PCを立ち上げたら会社や同僚から連絡が入ってくるという状態は、自分に組織の一員なんだという安心感を与えてくれていたのだと思います。

所属している組織に何を期待するのか、どのような意味を見出すかということは人によって異なると思いますが、ドイツの社会学者テンニースは、組織が提供している機能として、ゲマインシャフトとゲゼルシャフトの2つがあると言いました。(堺屋太一さんはそれぞれ共同体組織、機能体組織と訳しています。)

共同体組織は、そこにいる人達に心地よさや安住感を提供し、機能体組織は役割と責任のもと、貢献実感や自己成長の場を提供してくれていると言います。

人は安心安全に暮らしていくことばかりでなく、多面的な興味関心があります。家庭や会社だけでなく、趣味やボランティアなどの場も含めて、私たちはこの2つの機能を無意識に得ようとしているのかもしれません。

最近の会社の動きを、この共同体と機能体という2つの側面から見ると、
パーパス経営、ジョブ型、リモートワークなどのキーワードに代表されるように、会社の目的や、そこで働く人の責任を明確化することが機能体組織としての側面を維持していく方向性だと感じられる一方で、心理的安全性という言葉に象徴されるように、会社で自分らしくいられることで共同体組織としての機能を満たそうとしているようにも見えます。

以前は一度入社した会社で長く働き続けることが多かったですが、昨今は雇用形態も働き方も様々ですし、プロジェクトによっては外部の会社やフリーランスの方と一緒に働くことも増えました。会社内と外との境界線が薄くなり始めています。

そうなると、たとえば、伝統的な会社の中には比較的、社員を家族の一員と考えて、雇用の保証や安定的な仕事環境を提供することで共同体意識を提供してきたものが、もはや価値として認識しづらくなってくるということが起きているように思います。

そこに代わるものとして、前述のような施策、パーパスを軸とした組織づくりや心理的安全性を確保し個人の自分らしさの発揮を促すことなどが、今の時代に合った機能を補完していくという社会の変化を捉えた形なのかもしれません。

会社に対しての愛着が高まり、結果的にここで長く働きたいという求心力を保つのは、直接的に長期雇用の保証をすることではなくなってきているというのは押さえておくべき観点ではないかと思っています。

また来月もよろしくお願いいたします。

2022/10/26 VOL143 sakaguchi yuto 

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