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アジア版YC - Sequoia Capital IndiaのSurge第一期スタートアップまとめ(前編)

こんにちは、ジェネシア・ベンチャーズの河野(@yutodx)です。

今回はSequoia Capital Indiaのインド・東南アジア向けアクセラレータープログラムSurge第一期スタートアップまとめ(前編)です。後編はこちら。個人的に調べていたのですが、せっかくなのでnoteで記事化してみようという試みです。

Surgeは$1-2Mのシード投資と、米国、中国、インド、東南アジアのSequoia Capital投資先スタートアップの起業家がメンターを務めるワークショップで構成された16週間のアクセラレータープログラムです。第一期では1,500社以上の応募から、16社が選出されています。

ジェネシア・ベンチャーズの東南アジア支援先からは、インドネシアのデジタル保険QoalaとIoTカプセルホテルBobobox、ベトナムの医薬品購買プラットフォームBuyMed(Thuocsi)の3社がSurgeに参加しています。

Bobobox - IoTカプセルホテル

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サービスローンチ:June 2018
合計調達額:$13M
地域:インドネシア
投資家:Horizons Ventures, AlphaJWC, Genesia Ventures
事業概要:IoTカプセルホテル
※ジェネシア・ベンチャーズ投資先

BoboboxはインドネシアでIoTカプセルホテルを運営しています。

東南アジアで格安バックパッカー旅行をしたことがある方ならイメージが湧くと思いますが、便利な立地の一泊2,000円以下の安宿を探すと、不清潔でWi-Fiが遅くお湯が出ない1.2つ星ホテルやホステルしか選択肢がないことがあります。

Boboboxは自社設計・開発のIoTカプセルホテルによって、ミレニアル世代の旅行者やビジネスパーソンのためのクオリティが標準化された安価で快適な宿泊体験を提供しています。予約、決済、設備の施錠・開錠、証明やエアコンのコントロールなどがアプリ上で完結し、COVID-19前の平均稼働率は80%を超え、アンケートでは宿泊者の98.5%がBoboboxを友人や知人にお勧めすると回答しています。

こちらはインドネシアのインフルエンサーのBobobox紹介動画です。

本記事のサムネにもしていますが、創業者の2人はメルボルン大学の同級生で、CEOのIndra氏は自身でバジェットホテルチェーンを運営していた経験があり、COOのAntonius氏は大手不動産会社の経営に携わってきた経験があります。

COVID-19によりインドネシアのホテル業界も大きな打撃を受けていますが、Boboboxはターゲットがローカルユーザーで、清潔で安全な宿泊体験を提供することで、稼働率は50%前後と高い水準を維持しています。2020年5月にはFacebookやZoomへの投資実績のあるHorizo​​ns Venturesなどから$11.5Mの資金調達を発表しています。

1979年に大阪で世界初のカプセルホテルが開業したことをきっかけにカプセルホテルは日本各地へ広まり、今では世界中に広がっています。Boboboxは東南アジア最大のバジェットホテルチェーンとなるべく、COVID-19後に東南アジア諸国への事業展開を見据えています。

Azani Sport - D2Cスポーツウェア

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サービスローンチ:November 2017
合計調達額:$1.5M
地域:インド
投資家:Fireside Ventures
事業概要:D2Cスポーツウェアブランド

Azani Sportはインドで男性向けのハイクオリティD2Cスポーツウェアを提供しています。

創業者のSiddharth Suchde氏はハーバード大学出身で、在学中に米国の大学レベルのスカッシュ大会でNo.1となり、卒業後もスカッシュ選手として活躍して、2010年のアジア競技大会では銅メダルを獲得しているスーパーマンです。2012年に引退し、スポーツECサイトLive Your Sportを立ち上げ、2017年にD2CスポーツウェアブランドAzani Sportをローンチしています。

Azani Sportはインハウスでスポーツウェアやシューズのデザインと製造を行っており、自社ECサイトだけでなく大手ECサイトやオフラインのスポーツショップも販売チャネルとしています。

Siddharth氏のネットワークを活かしてプロスポーツ選手にAzani Sportのスポーツウェアを着てもらうことで、プロダクト認知向上とブランディングを強化し、スポーツジムとのパートナーシップを通じて販売チャネルを増やしていく戦略だと思われます。

NikeやUNDER ARMOURなどを初めとしたグローバルブランドやインドのローカルブランドもひしめく中で、Azani Sportが勝ち筋を見つけられるか注目です。

Bulbul - ローカル言語ライブコマース

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サービスローンチ:December 2018
合計調達額:$3.5M
地域:インド
投資家:Leo Capital
事業概要:ローカル言語ライブコマース

Bulbulはローカル言語ライブコマースでインタラクティブな購買体験を提供しています。

アプリを見ると、テレビショッピングのモバイル&インタラクティブ版のようなイメージで、家電や電子機器、アパレルやジュエリーなどの商材をディスカウントして販売しており、中国のソーシャルコマースPingduoduoのようなグループ購入機能も実装しています。下記はライブ動画サンプル(ヒンディー語)です。

インドにはFlipkartやAmazonを初めとしたECサービスは多数存在していますが、ローカル言語対応や商材・物流などの問題で地方ユーザーを十分に取り込めているとは言えない状況です。インドの英語話者比率は意外と低く2011年時点で12.6%、公用語のヒンディー語を第一言語としている人は約45%であり、特に地方には多くのローカル言語ユーザーが取り残されています。

2019年10月時点で累計GMV Rs.15 cr(約2.14億円)、28万ユーザー、40万トランザクションを記録しています。Bulbulは中国輸入ビジネスで有名なYiwuにも拠点を構えており、中国から商品を輸入してライブコマースでバルク販売することで、ハイマージンを実現しているようです。

創業者のSachin Bhatia氏は大手OTAのMakemytripやデーティングアプリ
TrulyMadlyのCo-Founder、Atit Jain氏はNetmedsに買収された医薬品デリバリーアプリPlussのCo-Founderです(Atit氏は3年前にバンガロールでお会いしましたが、頭キレキレでした...)

インドにはMeesho、Dealshare、GlowRoad、Mall91、Simsimなど多数のソーシャルコマースアプリが生まれています。インドネシアでもソーシャルコマースの波が来ており、EvermosやSuper、Chilibeliなど複数のスタートアップが立ち上がっています。

DancingMind - VRセラピー

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サービスローンチ:September 2018
合計調達額:$1.5M
地域:シンガポール
投資家:*Surgeのみ
事業概要:認知症やアルツハイマー病、脳卒中患者向けVRセラピー

DancingMindは認知症やアルツハイマー病、脳卒中患者向けにVRセラピーを提供しています。

シンガポールでは、フィリピン人やベトナム人などの外国人労働者が医療業界に多く従事しており、言語障壁などの問題から適切なリハビリセラピーを受けることができないという課題があります。

DancingMindはシンガポールとイギリスの15の医療機関向けにVRセラピーソリューションを提供しており、VRコンテンツだけではなくヘッドセットを着用している患者のデータを取得して、医療従事者が患者の経過観察ができるようにしています。

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創業者のJennifer Zhang氏は18歳の頃にEdtechスタートアップを立ち上げ、Oxford University卒業後にDancing Mindを立ち上げた24歳の若手起業家です。今後は中国やインドへの事業展開を目指してるようです。

DancingMindは自社VRヘッドセットは開発しておらず、Oculus GoやHTC Viveなどの汎用的なヘッドセットを活用しています。一方でスイスの医療用VRヘッドセットを開発するMindMazeはヘッドセット装着中のユーザーの表情から感情の読み取りが可能なデバイスを開発し、ユニコーンとなっています。日本でもsilvereye社の高齢者向けリハビリテーションツールキット「RehaVR」のようなソリューションが出てきてますね。

Doubtnut - AI問題解答検索サービス

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サービスローンチ:October 2017
合計調達額:$18.9M
地域:インド
投資家:Tencent, WaterBridge Ventures, AET Fund, Omidyar Network India
事業概要:AI動画学習サービス

Doubtnutは中高生向けに数学と科学の学習における疑問を解消するAI動画学習サービスを提供しています。

2020年1月にはTencentやSequoia Capital Indiaなどから$15Mの資金調達を実施しており、アカツキのCVCであるAET Fundも前回ラウンドに続いて出資されています。

生徒は数学や科学の問題において疑問が生じた際に、DoubtnutのアプリかWeb、Whatsappに問題の写真をアップロードします。するとAI画像認識と言語解析により、適切な回答と解説ショート動画を提供され、生徒は疑問を解消することができます。下記はDoubtnutの紹介動画です。

2020年1月時点でWeb、アプリ、Youtube、Whatsappで1,300万MAUを達成しており、インド11言語に対応することでトップ10都市外の地方ユーザーが85%を占めています。インドは教育レベルの地域格差が大きく、Doubtnutはインドの教育の民主化を進める意味でも素晴らしいと思います。

Doubtnutは中国のEdtechユニコーンスタートアップ作業帮(Zuoyebang)Onion Math(洋葱数学)をベンチマークにしていそうです。作業帮は問題解答検索サービスでユーザーの面をとってから、ライブ授業でマネタイズしており、コロナ禍の影響で最も成長した中国のEdtechスタートアップです。おそらくDoubtnutも同様の戦略をとると思われます。ちなみに日本では同様のサービスとして韓国スタートアップ Mathpressoの運営するQandaがありますね。

Flynote - 旅行版ソーシャルコマース

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サービスローンチ:April 2018
合計調達額:$1.5M
地域:インド
投資家:India Quotient
事業概要:旅行版ソーシャルコマース

Flynoteはトラベルエキスパートとユーザーをマッチングして、旅行計画や予約のできるオンライン旅行プラットフォームを提供しています。

グローバルで「Flynote Fellows」と呼ばれるトラベルエキスパートのコミュニティを構築しており、Flynote FellowsはFlynoteのスポンサーシップを受けて旅行することができます。そしてFlynote Fellowsはその旅行経験やSNSの影響力を活用して、トラベルエージェントとしてFlynoteユーザーやSNSフォロワー、コミュニティメンバーの旅行計画をサポートすることで収益化することができます。

同様のコンセプトだとP2PトラベルエージェントTRVLがありますね。

COVID-19による旅行業界の低迷と返金対応などの影響を受けて、ランウェイが大きく圧迫されたことから、Flynoteは従業員130人のうち90人のレイオフを実施しています。とても面白い事業モデルですし、なんとか乗り越えてほしいです...

Hippo Video - 動画マーケティングSaaS

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サービスローンチ:July 2018
合計調達額:$1.5M
地域:米国/インド
投資家:Kae Capital
事業概要:動画マーケティングSaaS

Hippo Videoはマーケティング、セールス、メールキャンペーンに活用する動画の作成、編集、ディストリビューション、効果測定ができるSaaSを提供しています。

マーケティングやセールスでは、これまでテキストベースで送っていたメールにパーソナライズされた動画を添付することで、コンバージョン率を高めることができ、メールキャンペーンではGmailやHubspot、MailchimpやLinkedInなどに対応しており、効果測定もできるようです。

動画が埋め込まれたメールはほぼ受け取ったことがないのであまりイメージが沸かないですが、動画はテキストより情報量は多く、真新しさもあるので確かに一定効果がありそうです。

Interviewbit - オンラインプログラミングスクール

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サービスローンチ:April 2019
合計調達額:$21.5M
地域:インド
投資家:Sequoia Capital India, Tiger Global Management, Global Founders Capital
事業概要:オンラインプログラミングスクール

Interviewbitはインドでオンラインプログラミングスクールを運営しています。2020年1月にはSequoia India, Tiger Global and Global Founders Capitalなどから$20Mの資金調達も発表しています。

インドでは医者、弁護士と並んでエンジニアが人気な職業と言われていますが、その分競争も激しく、エンジニアリングを学んだ大卒の80%はエンジニア職を得られていないそうです...実際にインドでは大卒者向けのオフラインプログラミングスクールが多数存在しています。Interviewbitはそうした大卒者や若手エンジニア向けにオンライン学習カリキュラム、大手IT企業で働くメンターによるライブレッスン、テック企業への職業紹介サービスを提供しています。

2020年1月時点で20万以上の申込みの中から2,000人の生徒が6ヶ月間のプログラムに参加しており、数百人がGoogle, Uber, Amazon, Facebook, Flipkart, NetApp, Myntraなどのテック企業に就職しているそうです。

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プライシングモデルは3つあります。一番人気は一般的なアップフロントの受講料支払いですが、Income-sharing model(卒業後に一定以上の年収の仕事を得られた場合にその15%を2年間支払う)も採用しています。

プログラミングスクールは日本ではテックキャンプDMM WEBCAMPなど、米国ではLamda Schoolmicroverseなどのサービスがありますね。

個人的にプログラミング以外の職業教育のアップデートができないかを最近考えており、その辺りで事業を考えている方がいましたら是非お話しさせてください。

おわりに

日本やアジアでこれから起業する方やシード/プレシリーズAの資金調達を考えられている方がいらっしゃいましたらDMからご連絡ください!

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