チャイに魅せられて(映画『マサラチャイ』より。)
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チャイに魅せられて(映画『マサラチャイ』より。)

 久しぶりに、インドが舞台の映画を見ました。
 映画『マサラチャイ』は、チャイの屋台で働く様々な立場の5人のチャイ売り(チャイワラ)を追ったドキュメンタリー映画です。インドの人々の日常に深く入り組んだ存在のチャイ。60分と短い映画ですが、この映画からはそんなチャイを通して、結婚、カースト、格差、宗教、女性差別、ジェンダーなど、インドが抱える様々な社会問題が見えてきます。
 インドの現首相であるナレンドラ・モディも、元々はチャイワラであったと言います。小さな屋台のチャイワラが、将来は人口13億人超の大国インドをまとめ上げる首相に成りあがるという話、漫画の設定のような壮烈な武勇伝、まさにチャイドリーム。
 そうそう、チャイワラの「ワラ」というのは、「チャイ(笑)」と馬鹿にしている訳ではなく、ヒンディー語やベンガル語で「専門的な技術を持った人」の事を指します。つまり、日本にも「ワラ」は沢山いて、寿司ワラ、大工ワラ、飴細工ワラ...などなど。なんだかいい響きです。(笑)。
 インド人は、朝食として、おやつとして、食後に、仕事中に、仕事終わりに、一息つきたいときにはとにかくチャイを飲みます。一日に平均で3~5杯は飲むでしょうか。僕がコルカタに留学していた際にも、チャイは毎日息抜きに飲んでいて、通っていた大学では「チャイブレイク」なるものがあり、授業中にチャイが振舞われることもありました。
 日本でいうと、煙草や珈琲の立場と同じような感覚でしょうか。しかし、インドでは残念ながら、煙草も珈琲もあまり登場しません。「アーユルヴェーダの神に呼ばれた気がした」、「ガンジス川でバタフライがしてみたくなった」など、インドにどうしても行かなくてはならなくなってしまったヘビースモーカーやヘビーコーヒードリンカーのあなたは持参することをお勧めします。
 チャイの屋台はそこかしこにあり、インド中どこに行っても一杯5~10ルピー(8円∼10円)で飲むことができます。素焼きのおちょこサイズの土器に入っていたり、最近では紙コップやプラスチックのカップ、グラスを使用する屋台もあります。少しいいカフェやゲストハウスではカップ&ソーサーというイギリススタイルで提供されます。
 びっくりするのですが、多くのインド人はカップからソーサーにチャイを少しずつ移して、すすりながら飲むのです。子どもの頃に、ペットボトルのジュースをキャップに移してちびちび飲んだ感覚で。これが母に見つかると「お行儀悪い」と怒られたものです。インドでも同じようなおふざけがあったのかと、インドに親近感を感じますが、この飲み方は元々イギリスでされていたらしく、冷ましながら飲むというれっきとした理由があったのです。
 映画でも言っていましたが、インド人は真夏にも熱々の沸き立てチャイを飲みます。僕はインドでこの光景を見た時、インド人全員狂ってやがると心の奥底から思いました。きっと彼らはおうちでは熱々のチャイを湯船に沸かして極楽浄土に浸かっているんだろう、そうに違いない。
 インド人のぶっ飛び理論からすると、「熱が熱をやっつける」ということらしい(映画参照)。最初は、馬鹿言えと思い、キンキンに冷えたペプシを飲んでいた僕だが、一度だけ真夏日にチャイの味が恋しくなり飲んでみた。案外、悔しいが、いけた。「熱が熱をやっつける」の意味が手に取るようにわかった俺も、インド人同様ぶっ飛んでいることが分かった。全インド中のチャイワラに笑われた気がした。

(Amazon Prime Videoで視聴可。)



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板前見習いの大学生の日常の断片をエッセイに綴り発信。アナザースカイはバングラデシュとインド。