東京思い出川柳 その⑤

チャリでこけ四、五針縫った奥多摩湖

川柳の字数合わせの為に「四、五針」と設定したわけじゃないんです。
マジで四、五針だったんです。
マジでチャリでこけたんです。
あーもうほんと恥ずかしかった。
忘れもしない、あの悲劇が起こったのは東京都の西の端っこ、奥多摩である。
その日は友人の提案で、自分含め三人組でサイクリングに出かけたのだ。
なんというか、そいつはとにかく色んな「遊び方」をちゃんと心得ていて、いつもなんとも粋な提案をしてくれたし何よりつるんでいていつも楽しいやつだった。
奥多摩駅から奥多摩湖までの初心者でも楽しめるめちゃくちゃ気持ちいい自然豊かなサイクリングコースをレンタサイクルで、という企画。
感動的なレベルの趣味の良さです。
遊びの提案としてそんなアイデアが出てくるあたりにもうそこはかとなく滲み出ているんですよ、育ちの良さが!!
敢えて都市部から離れ都内郊外の緑豊かな場所に出向くという行為からして既に真のアーバンなエスプリそのものである。(なんのこっちゃ)
こちとら逆立ちしたってそんな小粋なアイデアは出てこないっつーの。
ホンモノの都会育ちはやはり遊び方さえも洗練されていた。
湖までの往路は緩急のある上り坂である。
樹々の中をえっちらおっちらチャリを漕いで、一休みして深く美しい渓谷を望む吊り橋の上でキャッキャとはしゃぐ。
そしてまたチャリチャリ行って汗だくになってやっとこさ辿り着くのが巨大な人造湖である奥多摩湖とその隣のダムである。
なかなか見応えのある大パノラマでした。
いやいや冷静に考えてこんな絵に描いたような素敵な秋の行楽あります?
贅沢過ぎました。
そして腹ごしらえに湖の近くにあるレストランでめちゃくちゃ美味しい定食を頂くわけですが、その時はまだその直後に我が身に降りかかるおぞましい惨事などは当然知る由もなかったのです...。
行きが上り坂だったからめちゃくちゃ当たり前なんですが帰りは下りなんですね。
だから漕ぐのも行きに比べてま〜楽チン。
いよいよ上機嫌でみんなでスイスイ進んで行きました。鼻歌まじりに。
そんで道中に、アスファルトで舗装された道で道幅が狭い+急勾配+急カーブみたいな所があったんですよ。
まぁ危ないっちゃ危ないところではあるんですが、
「あ、意外とこの坂急だわ」
と思った瞬間咄嗟に握った前輪のブレーキが予想より遥かに強くかかり、バランスを崩し前のめりに体が放り出され、それはそれは見事に上半身の前面とアゴを地面に強打したのだ。
まぁ早い話がすっげぇ派手にコケたんです。
さて、皆さんは転倒時に胸及び腹を強打したことはありますか?
めっっちゃ苦しいんですよあれ!!
身体中死ぬほど痛いし、カッコ悪くコケて死ぬほど恥ずかしいとかももちろんあるんだけど、それら全てを差し置いてまずとにかく苦しいのだ。
しばらくちゃんと息ができない。
「大丈夫!?」
という友人の声に応えることもままならず、気づけば目の前には自らの顎から流れ出た血がアスファルトに線を引いている。
いやーもう何これ笑笑
書いてて笑えてきたんですけど笑笑
まぁそこからはもうみんなのテンションだだ下がりっすよね、当然ながら。
ショック状態?みたいになってブルブル震えながらレンタサイクル屋さんのお兄さんの車をその場で待ち、みんなでそこから病院に直行。
田舎の築年数相当いってそうな大きな病院の独特のあの雰囲気の中、当直の先生に局部麻酔ですぐにぱっくりイっちゃった顎の傷をチクチク縫ってもらう。
ガーゼ?とか包帯とかで患部を覆いそれをテープみたいなのでとめた気がする。
もう正直ここら辺は気もそぞろなので記憶が曖昧である。
本来の予定では、レンタサイクル屋さんにチャリを返した後近くの日帰り温泉でひと風呂♪というこれまたサイコーなプランだったのに、そんな事できる心身のコンディションではなくなってしまったから当然それもキャンセル。
台無しである。
馬鹿が一人コケて怪我したせいで楽しい遠足の後半が台無しになったのだ。
もうひたすらに申し訳なくて、顎痛くて。
帰路の電車の車中何度「いやーマジごめん」と言ったことか。
その都度友人達は
「いやほんと大丈夫だから、謝らないで」
「しょうがないよ、また来よう!」
みたいな人間の鏡のような返答に終始したのだ。
友の優しさが心とアゴに染み渡った秋晴れの東京である。
皆様くれぐれも交通事故にはお気をつけ下さい。
ちなみに転倒時に口ずさんでいた鼻歌はビートルズのlet it beでした。これなんかとってつけたっぽく聞こえるかも知れないんですがガチなんですよ。
レリビー♪
レリビー♪
レリビー♪
レリビー♪
ウィスパーワーズォブウィズダム♪
レリ..............ッボゴォォーン!!!!!!!
みたいな笑笑
さすがにあるがまま過ぎたんですねきっと。

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