あなたしか…
大学1年の春、私は恋に落ちた。
出会いは大学の食堂だった。相手の名前も学年も学部も何も知らない。 でも私は気付けばその人を目で追っていた。 一目惚れだった。
そこから、私は彼のことを色々と探り始めた。 名前はなんていうのか、学部、学年、出身地、所属しているサークル・部活動。
幸いにも彼は私と同じ文学部の1年生で、名前は堀之内結城くん。部活動には所属しておらず、バスケットボールサークル「ブザービート」に所属していた。
私はバスケなんてしたことなかったけど、すぐにブザービートへの入部を決めた。だって結城くんが入っていたから。
そこから私は、毎週のサークル活動に参加し、サークル後の飲み会にも結城くんが参加するなら参加した。
そして、私はついに結城くんと話すことができ、LINEも無事交換できた。
「今日のサークルと飲み会楽しかったね。同じ文学部だし、仲良くしてください🙇♂️」私は帰宅後すぐにこのLINEを結城くんに送信した。
「もちろん!こちらこそよろしくお願いします!」 初めての結城くんからの返信だった。
同じサークル・学部の私たちが仲良くなるのにそう長くはかからなかった。特に学部が一緒だったのが大きかった。なぜならほとんどの授業が結城くんと一緒だから。授業では毎回結城くんの隣の席を死守した。
授業以外でも一緒に食堂でお昼を食べたり、サークルまでの時間を図書館で過ごしたりした。この時も何人かの男女グループでいたが、結城くんの隣だけは誰にも渡さなかった。
LINEも欠かさず毎日した。おはようからおやすみまで。会話の内容が尽きることはなかった。
もしかして、結城くんも私のことが好きなんじゃないか。そう思い始めたのは、5月に入ってすぐのことだった。初めて2人だけで映画を見にいこうと誘われた。しかも、映画の後に夜景を観に行こうとドライブにまで。
私の予感は的中した。夜景を見ながら結城くんが私に向かって「好きです。付き合ってください。」告白してきた。私は笑顔で頷き、嬉しさのあまり結城くんに抱きついた。結城くんは優しく私を抱き寄せ、初めてキスをした。
付き合ってからは、付き合う前以上に一緒にいることが多くなった。1番変わったことは、大学だけでなく、互いの下宿先に行き来するようになったこと。
デートもいろんな場所にいった。県内のデートスポットだけでなく、日本の色々な場所に旅行に行った。デートや旅行に行くたびにプリクラを撮って、私たちの思い出はプリクラと共にどんどん増えていった。
気がつけば、付き合って1年。私たちは2年生になっていた。2年生になってからも結城くんと私の履修はほとんど同じで、サークルも毎週参加している。大学生活に結城くんがいることが当たり前になっていた。結城くんがいない大学生活は意味がないほどに。
唯一の問題点は、結城くんは文学部でも1、2を争うイケメンだったということ。文学部の同期・サークルの同期女子たちが私の目を盗んで、結城くんに近づこうとしていた。私はそんな姑息な女子たちを1人1人蹴散らしてきた。結城くんは誰にも渡さない。私だけのもの。
でも結城くんは優しいから、私以外の女子とも仲良く接していた。結城くんは本当は私にしか興味ないのに可哀想だと思いながら、結城くんは私のものと心の中で優越感に浸っていた。
そんなある日、いつものようにサークル終わりに一緒に結城くんと帰っていると結城くんが私に何か言った。なんて言っているのか聞こえなかった。いや、理解できなかった。
「もう、別れよう。」
何を別れるんだろう。一緒に帰ること?今日は1人で帰りたいのかな。結城くんが言っている言葉が全く理解できなかった。
「俺と別れてほしい。」
そう言われてから5秒後、ようやく理解した。結城くんは私と別れたいと。
「どうして?私はまだこんなに結城くんのこと好きなのに。結城くんはもう私のこと好きじゃないの?」
「もう、疲れたんだ。もう無理、お前しんどすぎる。今日で終わりにしてくれ」
今まで優しかった結城くんとは思えない強い口調で結城くんは私に言った。
「どうして」
私にはフラれた理由がわからなかった。疲れたって何?しんどいって何?私はこんなに結城くんのこと好きなのに。愛しているのに。私たちの今までの思い出って何だったの?
1時間ぐらいだろうか、私は結城くんに別れを告げられた場所にただ立ち尽くしていた。ようやく現実に戻り、私も帰宅した。結城くんの家に。
1年以上半同棲していた。合鍵を持っていないはずがない。
結城くんの家に帰ると、結城くんはかわいい顔で寝ていた。本当に可愛い寝顔だった。
私は結城くんを失いたくなかった。でも結城くんを悲しませたくない。
次の日、私はいつも通りに大学の授業を受けていた。でも結城くんの姿がない。今日私が起きてからも結城くんはまだ寝ていたから寝坊してるのかな。
大学が終わって、結城くんの家に帰ると結城くんはまだ可愛い顔をしながら眠っていた。
私はそっと結城くんを抱き寄せた。冷たくなっている結城くんを。
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