債権者集会

倒産した出版社から未払い印税を回収した話(1)

 かつて、出版業界は「不況に強い」と言われていた。景気が悪くなれば、高額商品の購入や旅行が控えられ、「読書」という自宅で手軽に楽しめる娯楽が重宝されるからだ。

 ところが、1990年代後半以降、本は、より安価で手軽なインターネットにとってかわられた。特に、若い世代には「本を読む」という習慣がなくなった。出版業界の経営環境はますます厳しさを増している。

 不況のしわ寄せは弱者へ来る。出版業界の弱者は「フリー」と呼ばれる人たちだ。「フリーライター」「フリーカメラマン」「フリーエディター」「フリーデザイナー」「フリー校正者」など、この業界には出版社の社員ではないが、本づくりに欠かせない人たちがたくさんいる。編集長以外は全員「フリー」という雑誌も珍しくない。

 にもかかわらず、「フリー」は冷遇されている。一般に、年収は同年代の社員の3分の1から3分の2程度。出版社が「フリー」と契約書を交わす習慣がないため、突然、報酬が下げられたり、何の保証もなく仕事が打ち切られたりする。そもそも、出版社が「フリー」に仕事を依頼しながら、報酬が支払われるまでは金額がわからないなどということがまかり通っている。

 このような「フリー」の弱い立場は、出版社が倒産すると、さらに顕著である。ただでさえ支払いが遅れていた報酬がスズメの涙ほどしかもらえなくなってしまうのだ。その一方で社員たちは倒産直前まで給料を受け取り、倒産後も未払いの給料や退職金が労働債権として保護される。

 しかし、「フリー」が泣き寝入りする必要はない。ねばり強く交渉していれば、未払い報酬が全額回収できることもある。実際、私は、そうだった。

 以下、私が、ある出版社の倒産に巻き込まれ、問題が解決するまでの経緯をリポートしたい。同じような境遇の「フリー」がいくらかでも参考にしてくれれば幸いだ。

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1967年2月9日、東京生まれ。 大学在学中、自動車雑誌『ニューモデルマガジンX』でジャーナリストとしてデビュー。 警察官、検察官、裁判官、自衛官などの不正を追及し続けている。 2014年、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」から「100人の報道のヒーロー」として表彰された。
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