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【AISTS #10】 8週目 各スポーツ組織の取り組みから考えるフットサル (2019/11/11-17)

今週は、ローザンヌ周辺のスポーツ組織からのプレゼンが多くありました。ジュネーブ近郊にある国際バスケットボール連盟(FIBA)には訪問して話を聞いてきました。

スポーツ組織によるプレゼン

修士論文のテーマ選定の一環で、各組織が重要と考えているトピックを伺いました。論文執筆を通して、実際のスポーツ組織との接点を持つことができるのもこのプログラムの特徴です。
今週、話を聞いたスポーツ組織はこちら。

・スイスオリンピック協会(Swiss Olympic)
・スイスバレーボール協会(Swiss Volley)
・OMEGA(オリンピックの公式タイムキーパー)
・国際オリンピック委員会(IOC)
・Responsiball(サッカー組織の社会的責任関連の機関)
・欧州サッカー連盟(UEFA)
・国際バスケットボール連盟(FIBA)
・ドーピングの独立検査機関(ITA)

Respopnsiballという機関のことは知りませんでしたが、世界のサッカーリーグの社会的責任のランキングを発表しています。評価の軸は、Community、Environment、Governance。
ちなみに2019年は、スウェーデン、デンマーク、イングランドに次いで、Jリーグは4位でした。

FIBAでは、思いがけない嬉しい発見もありました。

ただし、今はFIBAの178人の職員の中に日本人は1人もいないとのこと。今後のバスケットボール界で、日本人の存在感が大きくなっていくことを期待します。

フットサルのあり方を考えるヒント

特に、スイスバレーボール協会、UEFA、FIBAからのプレゼンでは、フットサルについて考えさせられる内容があったので、結論には至っていませんが、気づきを書いていきます。

まずはスイスバレーボール協会からの、(インドア)バレーボールとビーチバレーボールの戦略についての話。
大まかに言うと、インドアは普及育成、ビーチは競技(オリンピックでのメダル獲得)を重視して運営しているとのことです。インドアで良い選手を揃えて強豪国に勝つことは難しいが、ビーチは有力な2人の選手を育てればオリンピックでメダル獲得の可能性もあることが背景にあります。
そして、過去にはインドアとビーチの分裂の議論もあったとのこと。結果的には、競技の入り口はインドアでその後ビーチに転向する選手が多いこと、インドアにスポンサーが多いことが主な要因で、現状は一つの協会の下で運営されています。

サッカーとフットサルの関係で言うと、スポンサーについては同様(差は更に大きいはず)ですが、競技の入り口としては、「フットサルからサッカー」という流れをより広く作ることはできると思っています。
あとは、思いつきですが、連帯貢献金(過去所属クラブが移籍金の一部を受け取ることができる)のような形でそれをお金にすることができると、少し先が見えてくるのではないかと思っています。


続いてUEFAからは、論文のテーマとして6つのトピックが提示されました。そこにフットサルが含まれていることは嬉しい驚きでした。やはり発想の中心はサッカーにあるようですが、クラブの大会をサッカーと同様のチャンピオンズリーグにリブランディングするなど、新たな取り組みも見られます。

・審判:一般からの認知とイメージの向上
・競技運営:大会招致からレガシーまで
・ICT:AI、消費パターン、IoT
・社会的責任:人種差別、コミュニティの分断、環境
・フットサル:近年のトレンド、サッカーに与える影響
・教育:プログラム設計、卒業生コミュニティ運営

昨年、UEFAが運営するスポーツマネジメント修士(MIP)の卒業生が競技フットサルの発展についての論文を書いています。連携を取りながら、UEFAともネットワークを作っていければと思っています。

http://www.dougreedfutsal.com/2019/07/developing-futsal-competitions-generating-fan-interest-part-1.html


最後にFIBAからは、3x3(3人制バスケットボール)の話が興味深かったです。(ちなみにFIBAとしては、3x3は「スリーエックススリー」と読ませたいようです。)
3x3専門選手の尊重と、各国バスケットボール連盟(NF)の巻き込みがキーワードのようでした。
どちらにも関連しているのが個人ランキングです。3x3には、チームスポーツとしては珍しく、選手個人のランキング制度があります

オリンピックの代表選手の条件として、このランキングにおける順位やポイント数が設定されていることで、例えばNBAのスター選手が飛び入りでオリンピックだけ出場するようなことはできない仕組みになっています。
3x3専門選手の収入は賞金とスポンサーが基本で、まだ不安定な状況ではありますが、国際連盟がこのような仕組みを作っていることは興味深いです。

(参考)3×3バスケットボール 2020年東京オリンピック日本代表への道(TOKYO DIME)

そして、この個人ランキングは、オリンピック出場権に関わるNFランキングにも直結します。先日発表された4カ国は、この時点でのランキング上位国です。

特に目を引くのがモンゴル女子ですね。これはまさにFIBAの狙い通りとのことでした。国際大会を自国で開催して、多くの自国選手が参加しやすい/実力を発揮しやすい環境を整えることで、個人ランキング、ひいてはNF(モンゴルバスケットボール連盟)としてのランキングを上げて、出場権を獲得しました。
このような仕組みで大会招致のインセンティブをしっかりと提示して、活性化することに成功しています。今では、主要国際大会の招致には10〜15カ国が集まるそうです。

また、モンゴルのように5人制では強豪に太刀打ちできない国にもチャンスがあるというのが、大きな意義の一つです。
この点は、フットサルにも同様のことが言えます。ヨーロッパでは東欧諸国が健闘していたり、東南アジア諸国(タイ、ベトナム、インドネシアなど)も力をつけてきています。
個人的には、東/東南アジアは競技フットサルにもっと力をかけて強豪国の仲間入りを目指すべき、今はまだそのチャンスがある、と思っています。このあたりの話は一度しっかり整理してみようと思います。

課題活動(遊び)

週末はイタリア人のクラスメートとミラノに行ってきました。行き帰りは電車とバス、11人でホステルを2部屋貸し切るという学生っぽい旅でした。
この人数で国籍もバラバラなので、ちょっとしたいざこざは起きたりもするわけですが。諸々含めて楽しんできました。

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定番のドゥオモもよかったですが、サン・マウリツィオ教会がきれいでした。近くのレオナルド・ダ・ヴィンチ国立科学技術博物館は、ダ・ヴィンチのスケッチや模型の展示が全て閉鎖中(2020年12月に再開予定)で残念でした。

ACミランとインテルミラノのホームスタジアムである、サンシーロにも行ってきました。

来週の予定

いよいよチームプロジェクトが始まります。学生4〜5人のチームで、スポーツ組織をクライアントに、実際の課題解決に携わりながら学ぶ実践的な取り組みです。このプロジェクトを通して、スポーツ組織の内部の人と関係を構築し、就職につながるケースも多いようです。楽しみです。


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