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【TOKYO-雨】006変化

曲:tsutomu キャスト:藤江和久・ふみふみ・服部ユタカ
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ボイスドラマ「TOKYO-雨」第六話。
シリーズ前話は(005オリオン)はこちら→ https://note.mu/yutakahattori/n/n6b7ba4c85c49

tsutomuさんの曲「change_bpm120」 https://note.mu/fkt/n/n96df771abbc9 を元に文章をつけ、ボイスドラマとしました。今回は少しテンポをいじらせていただきました。よく左右に音が揺れるので、ヘッドホンなど推奨。

新キャスト、藤江和久さんとふみふみさんとの初共演。

以下、本文。

***

ジオフロントに帰還して、三日目の休息日。正午過ぎに、俺は工業区の一角にある小さな工房を訪れていた。

事前に連絡を入れていなかったが、ゴーグルを付けた若い男は文句も言わず、預けていた物品をすぐに取り出した。

「んで。ついにこれからってェわけだなァ?」

整備の完了した無反動銃と、防護マスクを作業台に並べながら、ニカイドウは弾む声でそう言う。

「ああ、それで例の『容器』はなんだが」

「へェへェ、できてるっつーの。あっしの仕事を舐めてもらっちゃァ困らァ!」

そう言って、キャスタ付きの椅子を滑らせ、作業スペースの奥へと移動するニカイドウ。

ややあって、ちょうど「人の頭部」が丸々入りそうな、透明な袋を手に戻ってきた。その口には、飲料用の缶にも似た円筒状の機械が取り付けられている。

「にっししし! 生命維持装置付きのヘッド・キャリーバッグ! あっしの! あっしの!! あ!!! あっしの特製!!!! 首から上だけでも三日間は、生きてられるっていう、お役立ちグッズ! したらば、こいつであの――」

「ニカイドウ」

標的の名前を口走ろうとしたニカイドウが、俺の目配せで口をつぐむ。

「――おっと、まー、アレだなァ。ま、とにかく、持ち運びにも便利な代物だァ。上手く使ってやってくれィ」

装置の操作説明が終わる頃には、クラシカルなサイフォンの中でコーヒーができあがっていた。

「やはり電子制御のコーヒーメーカーにしないのか」

「あっしはどうにもノーミソに機械入れるってなァ好かんからなァ」

ニカイドウは腕利きのメカニックだが、自身の体内に機械部品を埋め込むことを選ばない、今時分珍しいタイプの人間だ。

曰く、機械に使われる日が来るというなら、それは大多数のアホが原因だ、と。

ニカイドウがコーヒーを陶器のマグに半分まで注ぎ、残りをミルクと砂糖で埋める。

「レイジよォ、飲んでくかァ?」

「……いや、その暇はないかもしれない」

「あん?」

俺は、即座にヘッド・キャリーバッグを他の荷物で隠し、ドアへと振り返った。


ゆっくりと工房のドアが開かれ、壮年の女が姿を見せる。その後ろで護衛らしき黒服の女がさらに二人、こちらに背を向けて立っている。

「クローズド、と札を返しておいたはずだが。カンザキ」

「私の立場を知っていますね。この工房も私の管轄内です」

統括区の人間に、こちらの都合というものは通らない。

「要件はなんだ」

「レイジ。あなたの休暇を切り上げます。明朝、急ぎ出立してください」

「規定では東京滞在時の――」

「そう、最低でも倍の日数が休暇として、与えられるようになっています」

これは、クリーニングカンパニーの人間にとって常識である、デボート・ワン・フォー・ツー(一日を二日のために捧げよ)という原則だ。

「ついに俺を過剰汚染で殺す気にでもなったか」

「もちろん、必要量のリフォーマーは支給します」

よどみなく発言するカンザキの目から得られる情報は、少ない。

「俺以外にも控えがいたはずだが」

「……既に都合、三名。三名の出征していた部隊員が緊急用の信号を残し、それから一切の連絡が途絶えています」

三名もの部隊員が消えたとなると、俺に任されるのは、消えた人間の捜索、また、エリアの脅威判定か。

「体よく使えるのは俺だけ、というわけか」

「あなたの功績を評価しての抜擢です」

「ふん」

俺は、思考を巡らせる。少なくとも、博士の行動範囲を特定するための口実が、想像よりも早く訪れたのだ。

この好機を、逃すわけにはいかない。

「条件が二つある。まず、第一に――」

カンザキは、こちらの提示した条件をすぐに飲み、工房を後にした。


ドアの窓から連中の姿が見えなくなるまで、ニカイドウは椅子の背もたれを前に回して、身を預けながらぼんやりとしていた。

「おいおい、こえェくらいにすんなり話が進むなァ。気をつけろよォ?」

ニカイドウが首だけを半ばこちらに向けながら言うと、ドアをゆっくりと蹴り、工房の中央を椅子に乗ったまま滑って移動した。

「ああ。わかっている」

「ならまァ、構わねんだけどもよォ、っと」

勢いをつけて椅子から立ち上がり、マグを傾けながら奥へと引っ込む姿を見送ると、俺は受け取った物をバッグに詰めて、ドアをくぐった。

「またなァ」

俺はここでニカイドウの言葉をもっと深く噛み締めるべきであった、と後に思うことになる。

東京での凶兆をこの時、察知しておくべきだった。俺は先を急ぐあまり、変化に対して鈍感になっていた。


そして、俺はジオフロントを離れた。

***

キャスト
ニカイドウ:藤江和久 https://note.mu/fujie696969
カンザキ:ふみふみ https://note.mu/fumifumi2016
レイジ:服部ユタカ

ちなみに。
tsutomuさんの楽曲が個人的に頭の中でマジハマりでした。詳しくは語れないのですが、その原因のひとつが、ニカイドウとカンザキの登場です。彼らが物語に変調を起こす存在であるので、まさに、今回のテーマとタイトル、曲調がマッチしていたんです。
そして、面白いまでにハマったお二方の演技を聴きながら作業するのは、また面白い。実に面白い。これまでのキャストとも少し違った関わり方をしていくので、ぼく自身が楽しみです。

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また、今回楽曲を使用させていただいたtsutomuさんの他の楽曲が、こちら( https://note.mu/fkt/m/m96a5b57416f3 )で聴けます。捉え方がたくさんある楽曲が実に楽しくて、時に不思議な気持ちになります。

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統合失調症やら色々あった31歳。人生三度目の引きこもりを脱して就職。小説を書いています。神奈川在住。長編小説「東京、雨降りしきる廃都」公開中。

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原案:花本恵介 シナリオ:服部ユタカ 各種参加者募集中の近未来SFボイスドラマ「TOKYO-雨」のマガジンです。

コメント (19)
私は、読むのも聴くのもあまり長いのは苦手なのですが、素敵なBGMに引き込まれました。脚本、音楽も大切ですし、キャストの選択も間違えれば違和感を感じます。本当に複雑なコラボ作業を頑張っておられるのだなと思いました。
>すなめりさん んふんふ。台詞だけのボイスドラマだと効果音頑張って、かつ説明口調が必要になるので、テイスト変わるんですよね。次回、また来週には入るかなーと。お待ちを〜。 >tsumugiさん BGMに関しては、名前の感じが似ておられるtsutomuさんをチェックチェック! 割とそうですね、複雑かも。ただ、作業って表現で創作してますけど、疲労消耗してる感じはないんです。楽しいので。
東京雨楽しみにしています(*^^*)面白いです!
ありがたい〜! お言葉〜!
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