カオス化している"DX"をなるべくシンプルに解釈し直してみる試み
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カオス化している"DX"をなるべくシンプルに解釈し直してみる試み

こんにちは。今回はタイトルの通り「DX」について自分なりの理解と整理を書いてみたいと思います。

世間は今、空前の鬼滅の刃ブームですが、ビジネスシーンにおいて鬼滅レベルで大流行しているのが「DX: Digital Transformation」という概念です。

DXという言葉はおそらく2017年頃から本格的に世の中に出回り始め、現在では右を向いてもDX、左を向いてもDX、猫も杓子もDXという状況になりつつあります。

ただ、至るところで流れてくる"DX"という言葉の氾濫をみているうち、自分は『はたしてDXって何を指している概念なのか?』がよくわからなくなってきました。

ヤプリさんの稲垣吾郎さんをつかったCMは、むちゃくちゃ皮肉が効いていて面白いなと思いました。デラックスだと思ってる人、普通にいるんじゃないかと思います。笑えるようでわらえない。

正直にいえば「それって単なるITつかった便利ツールの導入じゃん」っていうレベルの内容でも"自称DX"だし、一方で経済産業省中心に「国家レベルでDXを推進」しています。同じ言葉のはずなのに、レベル感があまりに違いすぎて本質的になにを指した概念なのかもよくわかりません。

色々と記事なり事例なりを通じて理解を深めようとしましたが、とある解説記事に至っては「DXとはDijial Transformationである」と書いてあって、バズワードに乗っかるにしてもせめてスペルチェックくらいしたらどうでしょう、という状態です(しかもSEO強くて検索トップに出てくる。。。)

そんなレベルでDXに関する情報が飛び交いカオス化しつつあるなか、「ものすごく大事っぽいけどそれが何を指してるのかよくわからない」状況に決着をつけるべく、自分の理解も兼ねてなるべくシンプルに"DX"という概念を整理してみようとおもって今回の記事を書いてみました。

もちろんDXという概念は一つに定まるようなものではないので、「こういう考え方もあるよ」とくらいで皆さんの理解のサポートになれば幸いです。

難しい言葉でケムに巻くようなことはせず、なるべくシンプルでわかりやすく行こうと思います。

「データ」を軸にDXを図解してみる

いきなり自分なりに考えた答えを出してしまいますが、色々と考えた結果、「データ」を軸に以下のようなステップで整理をしてみました。

全体像

以下、考え方について述べていきます。繰り返しになりますが、あくまで私の考え方ですし、これが正解と言い切る気も全くないので、異論・反論はwelcomeです!

そもそもの違和感は「DXがすぐ実現できそう」と誤解を招くセールストーク

さて、もう一度立ち返って出発点から考え直したいと思います。以下は経済産業省が設定しているDXの定義です。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

抽象的ではありますが、この定義をベースにすれば、DXはつまるところ「何かしらの変革」です。つまり、一朝一夕にできるようなものでは絶対にありません。すぐ変わるもの、変えられるものを捕まえて、変革とはあまり呼ばないでしょう。

したがって、少なくとも私の中では、「DXは時間がかかるもので、ステップを踏んで変わっていくもの」であるという認識が最初からありました。

しかし、昨今のウェブ広告をみると「(商品名)でDX!」だの「DXの必需品!」だの、魔法のようにDXが実現できそうなウリ文句が並んでいるのが現状です。

この部分については、正直サービスベンダー側が正しい情報提供をしていないのではないかと感じています。おそらく私でなくても一朝一夕でDXが実現できると思っている人はいないでしょうが、バズワードを使ったほうがプロモーションが伸びることからあえて"DX"という言葉を使っているのでしょう。

ここについては、改めて「DXは一朝一夕に実現できるものではなく、しっかりと腰を据えて取り組むべきものである」ことをユーザーサイド/ベンダーサイド双方で、認識を揃える必要があると思います。一足飛びに実現できるような魔法の方法はない前提で、腹を決めて取り組むべきなのです。

最初のステップ: "データの受け皿"を用意する

DX実現に向けて、最初に目指すべき状態は「オフラインにしかないデータをオンラインで扱えるように"データの受け皿"を用意すること」です。

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アナログ中心のオペレーションで回っている現場だったり、あまりデジタルツールに詳しくない企業だったりすると、たいてい以下のような様々な課題に悩まされています。

・必要な資料や帳票がデータになっておらず、紙でしか存在しない
・そもそもベテラン従業員の頭の中にしか情報がなく、他の人が知り得ない
・デジタルツールが導入されていても、場当たり的に決まっていたり
 部署ごとに違うツールだったりでフォーマットが統一されていない

このようにオフラインにしかデータが存在しない状況では、そもそも変革に向けて必要なデータが一切蓄積されない・可視化されないため、受け皿となるようなデジタルツールを活用していくことが必要となります。

ここであえて"活用"と書きましたが、必ずしも新しいツールを新しく導入する必要があるわけではなく、既に導入されているツールを使いこなせるようにするのでも全く問題ないとおもっています。

ただし、以降のステップにつないでいくために、加工しやすいデータ・フォーマットへの変更だったり、他のデータと連結するための紐付けの整備だったりと、導入済みのツールであっても手を入れずに済むことはあまりないと思います。

新規導入であれ既存ツールであれ、いずれにしてもツールを活用するために現場のオペレーションを見直すことが必要となるため、そのプロセスを通じて効率化余地を把握することが可能です。

注意すべきなのは、だからといっていきなりコスト削減につながることはあまりないことです。むしろ今まで慣れていたやり方と変わってしまうので、短期的には効率が落ちてしまったりするかもしれません。

いきなりツール導入でコスト削減までを期待するのではなく、まずはデータの受け皿をしっかりと整備することが重要である、という意識でスタートするのがいいと思います。ツール導入はあくまで最終的なDXにつなげるための1stステップであることを念頭におく必要があります。

2ndステップ: データを収集し理解する

最初のステップで活用するツールが決まったとして、その後大切になるのはシンプルに言えば「使い続ける・辞めない」ことです。

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どうしても新しいツールになれなかったり、または既存ツールでも使い方が変わったり、慣れないやり方を続けるのは根気が必要です。

最初はなんのためにこんなことをしているのか?と、辞めたくなる誘惑も強いかもしれません。しかし(当たり前ですが)ツールを導入して"受け皿"だあっても、中身が貯まるわけではありません。しっかりと使い続けないとせっかく導入したデジタルツールも宝の持ち腐れです。

現状のオペレーションを一切変えずに導入可能なデジタルツールはほぼ無いため、程度の差はあれ現場には多少の痛みが伴います。ともすれば元のやり方に戻りたくなるところを我慢して、定着に向けて根気強く使い続ける必要があります(もちろん使い勝手を見ながら必要に応じて改善することは必要ですが)

逆に短期的に効率が落ちたり成果が出なかったとしても、新しいやり方に慣れさえすれば自然と業務データが集まる体制になりますし、本社や管理サイドが現場の状況をいち早く把握することもできるようになるでしょう。デジタルツール導入で期待されるような効率化やコスト削減も一定実現できると思います。

この段階を実現できれば、いわゆるSMBや中小企業であればツール導入で現場実態を把握できたり無駄なオペレーションコストを下げるだけでも、十分なビジネスインパクトが生むことも可能だと思います。

3rdステップ: データを使いこなす

2nd Stepが実現できると、データを流通させるデジタルツールが現場に浸透し、日々の業務をおこなう中で自然とデータが集まる状態になっていることでしょう。「受け皿」と「中身」が揃った状態です。

次のステップでは「集まったデータを使いこなし、分析結果を解釈して何かしらのアクションに落とし込む」ことが目標となります。

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So What? = だから何?」という言葉が外資系企業などで使われることがありますが、事例やデータは集めただけではなんの意味もありません。ツールを導入しても、そのダッシュボードをただ眺めているだけで業績がよくなるわけでもありません。

したがって、収集したデータをどう解釈し活用していくかが大変に重要となります。近年、データサイエンティストという新しい職種が注目されていますが、まさにデータサイエンティストが活躍するフェーズです。

逆に言えばこのステップに達していない企業で優秀なデータサイエンティストだけを雇っても、あまり活躍できないかもしれません。結局、データ収集に向けたツール導入からしか業務を始められないからです。

データ分析を行い、現場の何かしらの課題・改善点が見えるようになれば、あとはそれを解決するためのアクションを行うだけです。但しデータ分析で可視化されるのはあくまで「問題点」だけであることが多く、「解決策」までもがデータ分析から自動的にわかることはなかなか難しいと考えておいたほうが思います。

もちろん、幸いにして課題と解決策が直結するようなケースもあると思いますが、解決策はトライアンドエラーで探しだす必要があると思っておいたほうがいいでしょう。ローマは一日にして成らず。

但し、step2までの取り組みでデータの受け皿がちゃんと機能していれば、アクションごとにデータを分析して、定量的に効果測定を行うことができるようになっているはずです。つまり「科学的にアクションを評価することが可能」となっているはずです。

これによって、いわゆるPDCAを高速に回し、課題抽出→施策出し→アクション→効果測定→アクションのチューニング、という何度かのサイクルを経て、最適な解決策を発見することができるはずです。

ここまで出来てしまえば、おそらく事業部や営業所など、特定の組織単位であれば十分な成果が出ていることでしょう。

最終ステップ: 『当たり前にする』

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いよいよ最終ステップです。3つ目のステップまでクリアしていれば、科学的に効果が実証された何かしらの具体的なアクション・戦略が見つかっているはずです。ここから先は、まさに経営者やCEOが取り組むべき "本質的なDX" の領域となります。

何かしら有効なアクション・戦略が見つかったとしても、大抵の場合、それを実行するためにベストな体制になっていないことがほとんどです。例えば人員配置・予算のかけ方・オペレーション上のルールなど、様々な点で新しい取り組みは既存の組織体系と一致していないでしょう。

最後のステップでは「新しい効果的な取り組みを"当たり前"に実現できる体制を実現する」ことが目的となります。そのために必要なことは、経産省の定義にあるように、企業文化・風土も含めて聖域なく変革を進める必要があります。

昔から知られる経営理論に「組織は戦略に従う」というものがありますが、まさにそのとおりで、ベストな戦略が見つかったのであればそれを実行するためのベストな組織体系に変えていかなければなりません。言い方を変えれば「企業活動のありとあらゆる面を検討し直し、うまくいったことの再現性をどこまで高められるか」の勝負とも言えます。

だからこそ、DXの実現というものは、トップダウンで経営者が立ち向かうべき課題として捉えるべきなのだと考えています。繰り返しになりますが、そういった意味でも一朝一夕で実現できるものではないと認識すべきなのです。

そしてまた新たな課題を見つけ立ち向かう

おめでとうございます、最後のステップまでを貫徹し、あなたは無事DXを実現することが出来ました!

・・・と、単発の取り組みで終わることがないのがDXだと思います。なぜなら、一つの変革だけですべてが変わるようなうまい話は無いですし、そもそも変化のスピードがあまりに大きい昨今のご時世、日々変わる環境変化に随時適応していく必要があるからです(コロナ流行に始まった2020年を思い出してもらえれば、特に説明も必要ないでしょう)

但し、一度デジタルツールが浸透し、データドリブンで経営課題を議論できる体制・組織風土に変革出来ていれば、二回目以降は初回ほど大変ではないと思います。

Step3の課題抽出・ソリューションの発見とFinal Stepの "当たり前”にする抜本的な取り組み、その繰り返しによって、激しい環境変化にも適応していくことができるでしょう。逆に、一度DXが実現できたとして(それも相当難しいでしょうが)、あぐらをかいていると直ぐに不十分になってしまうかもしれません。

ある意味では、このような『データを元に新しい取り組みを"当たり前"化する継続的な取り組み』そのものがDXの本質なのかもしれません。

まとめ

以上、データを元にステップbyステップでDXを実現していく、という考え方についてまとめてみました。いかがでしたでしょうか。

冒頭も書きましたが、これがDXの唯一無二の解答だ!などとおこがましくて言うつもりはありません。ただし、あまりにバズワード化しすぎて、"DX"という概念の実態が捉えづらくなっているのは事実だと思います。

流行ってるからよくわからないけどちょっとだけやってみる、といった簡単なものではないのは事実だと思いますし、そういう考えでやってしまうと、最初のステップで止まってしまい、かえって悪影響しか及ぼさない可能性も十分にあると思います。

どのようにDXを捉えるにしても、腰を据えて経営者が取り組むべきテーマであるという前提で考えていく必要があるだろうなと、このnoteを書きながら改めて強く思いました。


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株式会社BONX所属。20年11月よりNewsPicksプロピッカー就任。チームワーク、コミュニケーション、DX、知財、スタートアップなどが関心分野です https://twitter.com/nuta0326 https://newspicks.com/user/3315600