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恋愛noteまとめました♪

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今まで書いた恋愛小説やエッセイをまとめたものです。
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実らなかった果実、もぎ取れなかった果実

実らなかった果実、もぎ取れなかった果実

【463】

恋愛小説やエッセイを書くことがある。

まったくの妄想から描かれるものもあれば、自身の体験をヒントにして書くこともある。そのまま丸出しにしていることは少ないように思える。

昨日書いた作品に関しては七屋糸さんが企画している#月刊撚り糸 に毎月参加させて頂いているお題に沿って書いたものだった。

この企画は恋愛小説を書きましょうという決まりはない。しかし、今まで参加した3回のうち2回は

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海風の届く住処で/ショートショート#月刊撚り糸

海風の届く住処で/ショートショート#月刊撚り糸

「八木ちゃんってどうしてこんなとこでバイトしてるんですか?」
私のことは何故かみんな苗字に”ちゃん”付けで呼ぶ。それは先輩だけではなく後輩の薫君からも同じ。「どうして?」って聞くなら私こそ聞きたいぐらいだよ。よりによって君たち後輩からも”八木ちゃん”なのって。それにそうやって聞かれるのはこれで何回目だろう。

随分と古株になったガソリンスタンドでのアルバイト。私が1年ほど続けているうちに元からいた

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交差点/ショートショート#BEATZONE

交差点/ショートショート#BEATZONE

【522】

雨上がり晴れた午後。
やけに埃っぽい空気はこの時期特有か。
取引先へは駅から北へと10分ほど歩く。土日も関係なく忙しくすることは慣れていたが、どうしても週末の賑わう街中をスーツ姿で歩くと周囲が恨めしくもなる。

汗を拭う。6月にもなると湿気が纏わりついて体が息苦しくなる。もわっとした空気が車が通りすぎる度に巻き上げられ風になる。

スクランブル交差点で立ち止まる。
向こう側で見覚えの

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蒲公英の一輪挿し/ショートショート#月刊撚り糸

蒲公英の一輪挿し/ショートショート#月刊撚り糸

【524】

遠くから微かに声が聞こえる。
「お母さん、お母さん」
誰だろう。私のことを何度も呼んでいる。

お母さんと呼ぶ声が時折「佳乃」と名前で呼ぶ声に変わる。
それは懐かしい香りが籠ってて、吸い寄せられるよう。確かに聞えるその名を呼ぶ声がだんだんと遠くなる。

ねぇ、行かないで。そう手を伸ばす。不思議とその手はぐんぐんと伸びていくがどうしてもその声の方に届き掴むことが出来ない。

そのうち変

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恋するスイッチ/ショートショート

恋するスイッチ/ショートショート

【563】

”パチン”と胸の奥の方で音が鳴る。何かが弾ける音じゃない。何かが始まる音。
それは恋が始まる合図。

”好きかも”という予感がどこかで”好きなんだ”と確信に変わる。脳内の管制塔から血液が体内を巡る様に一気に駆け巡る。やがて体が紅潮して止まらない。

いつの間にか目で追いかけて、君の仕草に魅せられる。
笑い声、表情、視線。叶うことなら私に向けてとわがままな想いが高まる。
もっと知りたい

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別れて、それは空気となる

別れて、それは空気となる

【529】

《男女の友情があるのかないか》
これ何度となく聞いたことのある設問。みなさんどう答えていますか?

このあたりって世代間のギャップや価値観の相違があるでしょうね。
価値観じゃないか、恋愛観だね。
人を好きになるポイントは当然人それぞれ違うものだから。

草食系ってヘンテコな言葉が当てはまる僕らより1回り以上も下の世代は不思議なものだ。
小耳に挟んだ話によると男女で同じ寝床にいようとも

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助手席はいつも/ショートショート

助手席はいつも/ショートショート

【552】

久しぶりの再会。
なんだか君はうれしそうだ。
「元気だった?」そう言いながら後部座席の扉に手を掛けた後に「あ!」って思わず声を出して笑いながら助手席の方へまわる。

「つい、いつもの癖で後ろに行っちゃったよ」「俺も思った。あ、後ちゃうで」ってね。
単身赴任でやって来た名古屋へと君がやって来た。3ヶ月ぶりに君に会う。
いつもだったらお決まりの後部座席に君がいる必要はない。誰も僕たちのこ

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触れないキス/ショートショート

触れないキス/ショートショート

【555】

「じゃ行くね、ありがとう」
あまりにも自然とかわされたそれは風を切って、時を一人だけ止めた。
そしてそこに取り残された。
欲しかったのは”ありがとう”の言葉じゃなかったのに。君からもらったのは感謝の言葉。

男性側の”いい感じ”と女性の思うものは間違いなく違う。
好きになる感覚と”したくなる”感覚も違う。
男性はそれが一緒になりがちだけど、その点女性は冷静で賢い。
だから比べるとどう

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引き千切る叫び/ショートショート

引き千切る叫び/ショートショート

【498】

これで何度目の口論だろう。
年上のボクが感情を制御出来なければならないはずなのに。もう我慢ならないと運転席で声を上げる。それはフロントガラスから反響するようにして隣に座る君へと降り掛かる。

一体何がそこまでの気持ちにさせたのかは覚えちゃいない。それよりも脳裏に残っているのは君のその後の行動だった。
「私、怒鳴る男って本当に無理だから。ここで降りるわ」
そう言い放ちシートベルトを外し

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9DAYS

9DAYS

【489】

「この人のためになら死んでもいい。そんな人と出会ってしまったの」そう一点の曇りもなく言われたことがある。アスリートの選手宣誓さながらのそれはふいに見上げた流れ星の様に一瞬の瞬きみたいに砕け散った。らしい。
真夏だったはず。記憶の在り処は8月のこと。僕と彼女が出会ったのはきっと8月。最後に会ったのは9月だったからそうだ。断片的な夏の終わりのことを思い出してみる。

ローカル線の小さな駅

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キスをするのに一難あり/ショートショート

キスをするのに一難あり/ショートショート

【466】

「私、はじめてかも…」

嬉しそうにしてるのかと思いきや、成海は真面目に驚いて笑っている。

初めてのデートの帰り道。

いや、ボクと鳴海は付き合ってるわけじゃないからデートと呼ばず《食事に行った》と呼ぶ方がいいのかもな。



初めて見掛けたときから釘付けになった。

大きな瞳でジッとこちらの目を見て来る人だった。

初対面なのに「ずいぶんこっち見て来るなぁ」と戸惑うほどの視線だ

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季節を感じたとき君は笑う#月刊撚り糸

季節を感じたとき君は笑う#月刊撚り糸

いつもより少し遅めの朝食。

お互い仕事が休みの日は起こさないでいる約束。ゆっくり転がるようにベッドから抜け出して、半分ほどしか開いていない目を擦りながら珈琲とミルクティーを淹れる。

春先の朝の肌寒さもこの時間になると陽射しのおかげで弱まる。黒のキャミソールの肩紐がキッチンをのそのそと歩くたびにハラリとずれる。

たっぷりミルクを入れる君の珈琲は甘く、もはやカフェオレと呼べるほど。それが好きな君

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