「リヒャルト・シュトラウスの誕生日」に思ったいくつかのこと

6月11日は作曲家のリヒャルト・シュトラウスの誕生日ということで、今日はダニエル・バレンボイムの指揮によりシカゴ交響楽団が1998年に録音した管楽器協奏曲集を聞きながら朝のひと時を過ごしました。

シュトラウスについては歌曲から交響曲まで折に触れて耳を傾ける作曲家であり、旋律の煌めきと発想力豊かな展開、そして楽器の活用法の大胆さには日頃から大きな興味を抱くところです。

私がリヒャルト・シュトラウスの作品に初めて主体的に向き合ったのはNHK FMの『20世紀の名演奏』がヨゼフ・カイルベルトとバンベルク交響楽団の特集を行った際、1968年の来日公演の実況録音として『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』を放送した1995年5月のことでした。

この時の録音は含み笑いのある旋律と意外性に富む構成をカイルベルトが丁寧に腑分けし、バンベルク響が濃厚さと軽快さを織り交ぜた演奏で巧みに表現しており、大変に聞きごたえがありました。

放送ではNHKの音源が利用され、私もカセットテープに録音して繰り返し聞いていただけに、2003年にCDとして発売されたときには嬉しく思い、早速買い求めたものでした。

また、私が高校1年生であった1992年には、当時お世話になっていた、交響管弦楽に造詣の深い皮膚科医から「リヒャルト・シュトラウスに聞いてはいけない話は3つあり、1つ目は『ヨハン・シュトラウス一家とのご関係は?』、2つ目は『あなたの作品は何管編成ですか?』という問いであり、3つ目は『この作品はいつ終わるのですか』ということ」という冗談とも本当ともつかない話を教えられたのも、印象的でした。

このように、リヒャルト・シュトラウスは私の愛聴する作曲家の一人ながら、1940(昭和15)年のいわゆる紀元二千六百年記念のために日本政府が依頼して作られた『大管弦楽のための日本の皇紀二千六百年に寄せる祝典曲』については、何度聞いても馴染みにくい作品となっています。

周知の通り、祝典曲はシュトラウスが自発的に作曲したのではなく、日独親善という外交的な役割を担いつつ、当時ドイツでもっとも著名であったシュトラウスが国家を代表する形で筆を執った作品です。

かつて、破格の謝礼の提示を受け、1876年の米国独立百周年を記念してワーグナーが手掛けた『アメリカ合衆国独立百周年記念行進曲』がごく平凡な出来栄えであったのと同様、祝典曲を聞く限りにおいてはシュトラウスの場合も依頼された仕事では実力を発揮しにくい作曲家であったと思うところです。

もちろん、こうした感想は祝典曲の優れた演奏に出会っていないという結果であるかも知れません。

それでも、荘厳さを追求するあまり、持ち味である光り輝く音楽とはなっていないことから、私も見立てもあながち誤りではないのではないかとも思う次第です。

<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of Richard Strauss for Celebration of His Birthday (Yusuke Suzumura)

The 11th June is the birthday of Richard Strauss who was born in 11th June 1864. In this occasion I express miscellaneous impressions of Strauss and his music.

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