北京五輪はわれわれにいかなる教訓を与えるか
昨日、冬季オリンピック北京大会の閉会式が行われ、17日間の日程が全て終了しました
所期の会期が予定通り行われたことは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大という状況を考えれば、関係者が自賛するのも当然と言えるでしょう[1]。
一方、女子フィギュアスケートにおける「ドーピング問題」を巡り、国際オリンピック委員会(IOC)が主体的な対応を行わず、世界ドーピング防止機構(WADA)の判断にも疑念が呈されたことなどは、競技を公正に行うことは何かという問いを投げかけるものでした。
また、新型コロナウイルス感染症対策として組織委員会が行った措置は、ある意味で過剰であったと言えるかも知れません。
あるいは、米英を中心とする「外交ボイコット」の発端となった中国国内の人権問題については、依然として具体的な解決策が見出されないままです。
こうした状況に対して、競技を終えて出身の国や地域に戻った選手が批判を行い、スウェーデンのニルス・ファンデルプール選手が中国での開催を決めたIOCを極めて無責任だと発言したこと[2]などは見逃せません。
もとより、中国でのオリンピックの開催に異議があるのなら、大会に参加しないという方法もあることでしょう。また、帰国後ではなく大会中に批判するということも選択肢の一つとなります。
しかし、北京大会における選手の表現の自由や言論の自由が制約され、大会組織員会対外連絡部の楊舒副部長も「オリンピック精神に背く言動、とりわけ中国の法規に背く行為は何らかの処罰の対象になる」[3]と明言しています。
それにもかかわらず、IOCが選手を保護する姿勢を示さない以上、選手が片言隻句を捉えられて不当な扱いを受ける可能性があることを考えれば、ファンデルプール選手や他の選手たちが帰国後に積極的な発言を行うことにも十分な理由があります。
何より、大会運営の基本とも言うべき競技中の選手の安全の確保も、技の高度化や競技そのものの高速化もあり必ずしも適切に行われなかったことは、今後の課題となります。
以上の点には、北京大会に固有のものもあれば、冬季大会に不可避のもの、さらにオリンピックという大会やIOCが解決すべきものも含まれます。
こうした事項について、何が問題であり、どのような解決方法があるのか、あるいはいかにして改善できるかを大会組織員会や各競技連盟、さらに各国オリンピック委員会、IOCなど関連する諸機関が詳細に検討し、確実な取り組みを行わなければ、オリンピックの価値そのものは今後ますます提言することにならざるを得ません。
関係者、各機関が現実を直視することが期待されるゆえんであります。
[1]中国、五輪外交 崩れた目算. 日本経済新聞, 2022年2月21日朝刊4面.
[2]北京五輪閉幕. 毎日新聞, 2022年2月21日朝刊3面.
[3]How Much Freedom Of Speech Will Team USA Athletes Be Guaranteed At The Winter Games? Here’s What Organizers And Human Rights Groups Say. Forbes, 2nd February 2022, https://www.forbes.com/sites/lisakim/2022/02/02/how-much-freedom-of-speech-will-team-usa-athletes-be-guaranteed-at-the-winter-games-heres-what-organizers-and-human-rights-groups-say/?sh=2e094ae02849 (accessed on 21st February 2022).
<Executive Summary>
What Are the Lessons of the Beijing Olympics for Us? (Yusuke Suzumura)
The Beijing Olympics ended yesterday and there are some remarkable issues such as athletes' freedom of speech and expression and relationships between Olympics and politics. In this occasion we examine these issues as an important subject of our lessons.