「黒人リーグと大リーグの記録の統合」はいかなる意味を持つか

去る5月29日(水)、大リーグ機構が黒人リーグの記録を反映した公式記録の改訂を行いました。

これにより、通算打率ではジョシュ・ギブソンが1位、オスカー・チャールストンが3位に、単年の防御率ではサッチェル・ペイジが歴代3位に、そして通算出塁率でバック・レナードが5位になるなど、投打の各部門で通算及び単年の記録が更新されました。

今回は大リーグ機構がアフリカ系アメリカ人を排除してきた過去の過ちを正すとして2020年に黒人リーグを大リーグであると認定したことを受けた措置です。

大リーグ機構が黒人リーグを大リーグとして認定したのは、大リーグが組織面でも選手の人種の点でも多様性の点で米国内の他の主要な競技に後れを取っているという指摘を踏まえたものであり、4年をかけて記録が精査され、1920年から1948年までの黒人各リーグの成績が合算されるに至りました。

もちろん、黒人リーグは毎年60試合から80試合程度と同時代の大リーグが154試合制であることに比べて規模が小さく、逸散した記録なども含めて正確性の点に疑問の余地が残ります。

そのため、今回の合算に対して、質的にも量的にも異なる黒人リーグを従来の大リーグの記録に加えることに否定的な見方もあります。

一方、多様性の強調こそが社会の要請に対する大リーグの責任を果たすことに他ならないとする機構にとってみれば、黒人リーグを大リーグとして認めた以上、その成績の統合は不可避であり、時期のみが問題となっていました。

このように考えれば、黒人リーグと大リーグの記録の統合は機構による過去の施策を実現しただけであり、何ら驚くべきものではありません。

しかも、今回の記録の統合が行われたとはいえ、実際には黒人リーグの記録のうちの75%が完了しているだけであり、残された記録については今後逐次更新される見込みとされています[1]。

それだけに、先日の記録の統合は作業の完了ではなく、これからも各種の記録の変更があることに注意が必要なのです。

[1]Top leaderboard changes as Negro Leagues join Major League record. MLB, 29th May 2024, https://www.mlb.com/news/stats-leaderboard-changes-negro-leagues-mlb (accessed 2nd June 2024).

<Executive Summary>
What Is the Meaning of MLB's Integration of Negro League Stats? (Yusuke Suzumura)

The Major League Baseball (MLB) integrated stats of Negro League from 1920-1948 on 29th May 2024. On this occasion, we examine the meaning of integration based on the social viewpoints surrounding the MLB.

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