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2021年5月の記事一覧

「緊急事態宣言の延長」に際して政府当局者は小欲を捨てて大欲を実現できるか

昨日菅義偉首相は記者会見を行い、5月31日(月)に期限を迎える9都道府県に発令中の新型インフルエンザ特別措置法に基づく緊急事態宣言について、6月20日(日)まで延長することを表明しました[1]。

現在の緊急事態宣言が発令された今年4月下旬から5月上旬に比べれば、対象となる地域における新型コロナウイルス感染症の新規の感染者数が減少しているとはいえ、所定の基準に従えば依然として厳しい状況が続いている

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「オリパラ関係者」は「科学的知見」をどこまで活かせるか

去る5月25日(火)、米国の医学専門雑誌The New England Journal of Medicineの電子版に、アニー・スパロー博士(マウントサイナイ医科大学)らの論文"Protecting Olympic Participants from Covid-19 — The Urgent Need for a Risk-Management Approach"が掲載されました[1]。

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菅義偉首相は「党首討論の活性化」を実現できるか

報道によれば、自民党の森下裕国会対策委員長と立憲民主党の安住淳国会対策委員長が会談し、今国会での党首討論の実現に向けて大筋で合意したとのことです[1]。

前回の党首討論が行われたのは2019年6月19日のため、実現すれば菅義偉首相にとっては初めての党首討論となります。

菅首相は国会での答弁が質問に答えていない、あるいは同じ答弁を繰り返しているなど、問題視されました[2]。

また、今年4月に行

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「東京オリンピックとIOC」を巡る議論で重要な視点は何か

今夏の東京オリンピック・パラリンピックの開催の可否について日本国内の世論が一致をみていないということは、周知の通りです。

オリンピックを「唯一の商売道具」としている国際オリンピック委員会(IOC)にとって大会の中止は折角の商品を自ら投げ捨てるようなものです。

しかも、東京大会については保険金によって損失を補填できるとしても、今後は保険料の高騰は不可避となりますし、現在米国NBCと締結している放

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IOCは思いもつかない苦境に立たされているか

昨日、7月23日(金、祝)に開会式が行われる予定の東京オリンピックまで2か月となりました。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大がの兆しを見せない中で大会を開催することについて、日本国内では否定的な意見が広まりを見せています。

これに対し、大会の開催を前提に放映権の販売や各種の協賛金の募集を行っている国際オリンピック委員会(IOC)としては、唯一の商品とも言うべきオリンピックを中止することは、売

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「与党による入管法改正案の今国会成立の断念」が持つ意味は何か

5月18日(火)、与党は出入国管理法の改正案の今国会での成立を断念しました[1]。

これは、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の遅れや緊急事態宣言の延長により菅義偉内閣の支持率が低下の傾向を示す中で、採決に固執することで今年7月の東京都議会選挙や今年10月までに行われる予定の衆議院選挙に悪影響を及ぼすことを懸念しての措置となります。

各種の世論調査でも回答者が政権の最優先課題として挙げる事

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気候変動問題と大リーグの関係

去る4月26日(月)、日刊ゲンダイの2021年4月27日号の27面に連載「メジャーリーグ通信」の第91回「気候変動問題と大リーグの関係」が公開されました[1]。

今回は大リーグによる気候変動問題への取り組みを検討しています。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。

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気候変動問題と大リーグの関係
鈴村裕輔

米政府が主催

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「菅首相のかみ合わない質疑」は何を意味するか

5月10日(月)に衆参両院の予算委員会で行われた質疑では、菅義偉首相の答弁が質問に答えていない、あるいは同じ答弁を繰り返しているなど、問題視されました[1]。

特に、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する場合などに東京オリンピック・パラリンピックの開催が可能か否かを問う野党議員に対して「国民の命と健康を守っていく」と繰り返したことについては、「五輪については、後ろ向きな内容でもなく、必ずやると

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「緊急事態宣言の新規適用と期間延長」に際して菅義偉首相に「正確で率直な発言」を求める

本日、東京都、大阪府、京都府、兵庫県に発令されていた緊急事態宣言の適用期間が延長されるとともに、新たに愛知県と福岡県が適用の対象に追加されました。

現在の各地の状況に鑑みれば、適切な措置と言えるでしょう。

その一方で、緊急事態宣言の発令や解除について菅義偉首相が「判断の責任は全部、私にある」[1]と発言するとともに、緊急事態宣言の解除の基準について「ステージ4を脱却することが目安となるが、具体

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「失言の構造」から考える高橋洋一氏の「さざ波発言」の問題点

本日加藤勝信官房長官は記者会見を行い、5月9日(日)に内閣官房参与の高橋洋一氏のTwitter上での発言に関連し、国民の命と暮らしを守ることを最優先に対策に取り組む考えを示しました[1]。

高橋氏は、日本や米国、英国、インド、フランスなどの新型コロナウイルス感染症の感染者数を掲載した図を参照しつつ、「日本はこの程度の「さざ波」。これで五輪中止とかいうと笑笑」と書き記しています[2]。

今回の発

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「緊急事態宣言の延長と拡大」に際して当局に感染症対策のさらなる工夫を求める

昨日、政府は5月11日(火)に期限を迎える新型コロナウイルス感染症にかかる緊急事態宣言を5月31日(月)まで延長するとともに、発令中の東京都、大阪府、京都府、兵庫県に加え、愛知県と福岡県も対象とすることを決めました[1]。

今回の延長に伴い、百貨店など大型商業施設への休業要請を中止して20時までの営業を容認する一方、飲食店に対する酒類の提供の見合わせなどは継続して行われることになりました[1]。

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日本国憲法の施行から74年に際し改めて「改憲への道のりの遠さ」を考える

本日、1947(昭和22)年に日本国憲法が施行されてから74年目を迎えました。

新型コロナウイルス感染症の拡大を受ける中で国家全体の利益のために個人の利益を抑制することが必要であり、あるいは安全保障の観点から緊急事態に対処するためいわゆる緊急事態条項の制定が必要という指摘があります[1]。

確かに、昨今の状況に鑑みれば、こうした意見が一定の力を持つことは当然です。

その一方で、鳩山一郎、岸信

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「初心者向け」の取り組みについて思ったいくつかのこと

「初心者向け」、「入門編」というとき、人はしばしば「やさしいもの」、「分かりやすいもの」を意味します。そして、本来ある対象の部分を抜き出したり縮約して「初心者」や「入門者」に提示する傾向にあります。

確かに、初めてある対象に取り組む人にとって対象の全体を示すことでかえって難しさを感じ、対象の持つ魅力を伝えきれないという懸念は当然のものです。

しかし、既に「初心者」や「入門者」の域を脱した人のあ

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今上陛下のご即位2年を祝し当局に「皇室の積極的な情報発信」を勧める

今日、今上陛下が2019年5月1日に登極されてから2年が経ちました。

昨年1月から新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、全国を巡行して国民と親しく接するという戦後の皇室が築いてきた「開かれた皇室」の取り組みを実践することが難しくなっています。

今上陛下もオンライン形式により行幸できない難点を補う試みを積極的に行われていものの、国民一般が今上陛下や皇室の日々の取り組みに接する機会が減少してい

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