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私たちが起業で大切にしてきた5つのこと

大塚雄介 /Coincheck

私たちはこれまで「STORYS.JP」(現在は事業譲渡)「Coincheck」といった事業を展開してきました。そして今年は「Sharely」というオンライン株主総会のサービスを展開しています。

日々試行錯誤するなかで、事業をやるにあたっておさえておくべきポイントがおぼろげながら見えてきました。

まだまだ挑戦中の私たちではありますが、同じように起業に挑戦中の方のヒントに少しでもなればと思い、私たちが起業するうえで大切にしてきたことをまとめてみます。

キーワードは ①タイミング ②市場選び ③パートナー選び ④フラットな視点 ⑤思い の5つです。

①事業は「競争優位性」より「タイミング」

まず、事業は参入する「タイミング」がすごく重要だと考えています。

遅すぎても早すぎてもダメ。私たちが起業したとき、それにまったく気づいていませんでした。経験してはじめて、身に沁みてわかったのです。

重要なのは「競争優位性」だと思われがちです。もちろんそれも大事なのですが、それよりも大切なのが実は「タイミング」なのです。参入すべきタイミングで一気に市場シェアを取り切ったら勝てる。その感覚は、やっぱり経験しないとなかなかわからないかもしれません。

私たちは、新しく大きな市場が生まれるためには「3つの条件」があると思っています。それは

①技術革新が起こる
②インターフェースが変わる
③法律が改正される

の3つです。この3つが交差するとき、新しく大きな市場が生まれます。

仮想通貨の事業は、まさにこの3つの条件が交差するタイミングでした。ブロックチェーンという新しい技術が生まれ、スマホでやりとりするというお金のインターフェースが変わりました。

唯一わからなかったのが、法律がどうなるかということでした。

調べてみると当時、自民党がビットコインを「価値記録」という新しい概念で規定していることがわかりました。

私は確証を高めるために、ツイッターで自民党の議員に連絡をとり、直接質問しに行きました。今後、仮想通貨が法律で「NO」と言われてしまったら、市場がなくなってしまうからです。確実な一次情報を得ておきたかったのです。

(ちなみに議員の方は、国民から正当な理由で「会いたい」と言われればほぼ会ってくれます。基本的には声を聞いてくれます。)

議員の方に話を聞いてみると、当時の与党としては「仮想通貨をきちんと産業にしていこう」という方針だとわかりました。それで「法律まわりの方針が確認できたので、外部環境は整いつつある」という確信を持てたのです。

コインチェックが現在の規模になれた理由は、この3条件を満たすタイミングを逸しなかったことが大きいように思います。①技術革新②インターフェースの変化は多くの人が注目していますが、③法律の変化まで注目しておくと新しく大きな市場の出現に気づくことができます。

私たちは、今「Sharely」というオンライン株主総会のサービスを提供しています。このサービスを始めたのも、競争優位性というより「タイミング」「市場を取り切れるかどうか」を重視したからなのです。

②大企業が入ってこない市場を選ぶ

2つめは市場の選び方です。市場については「大企業が入ってこない市場」を選ぶことです。

再び仮想通貨の話になりますが、当時の仮想通貨市場は大企業が参入するにはレピュテーションリスクが大きすぎました。「ビットコインは怪しい」とみんなが思っていて、メディアの論調もそうでした。レピュテーションリスクが高いと大企業の既存事業にマイナスに作用してしまうためリスクをとりにくくなるのです。

今でこそ「MUFGコイン」などがありますが、当時は大企業が参入するにはリピテーションリスクが大きい市場でした。それが逆に、リスクテイクをできるスタートアップにはすごくチャンスだと思ったのです。

大企業が参入しないということは、スタートアップどうしの戦いになります。

競合のスタートアップのなかで、実は私たちはいちばん後発でした。ただ圧倒的にいいUXを設計できれば、勝負できるのではないかと思いました。親しみやすくわかりやすいUXで、大企業よりも先にユーザーに選ばれるプロダクトを提供すればいいのです。

「技術ありき」で考えない

このように、私たちが考えているのは「新しく大きな市場が出現するタイミングを狙う」そして「大企業が参入しにくい市場を狙う」ということです。

私たちは「仮想通貨の会社」と思われることが多いため、ふつうに考えたら「ブロックチェーンを使った新しい事業をやる」というのが自然な流れなのかもしれません。表面的なストーリーとしてはそのほうがわかりやすいでしょう。でも、それは「表面的」でしかなく「本質」ではないと考えます。

「ブロックチェーンが必要なら使う。必要ないなら使わない」というだけです。「技術ありき」でビジネスを始めることもあると思いますが、それだと「本当に必要とされるようなサービス」ではなく、ただ「こちらが提供したいサービス」になってしまう危険性もあるのです。

新しく始めた「Sharely」というサービスにも、今のところブロックチェーンの技術は使っていません。ただ、株主総会は今が転換点だと私たちは考えました。技術が変わり、インターフェースが対面からオンラインに変わりつつあり、法律の解釈も変わろうとしているタイミングだからです。

③パートナーとは「年齢」や「専門」がカブらないほうがいい

3つめはパートナー選びについてです。

私は、一緒に事業をやる相手は「年が近くない」「専門領域が違う」人がいいと考えています。

年が近いと、どちらか片方に光が当たったときに嫉妬が生まれます。そうすると、せっかく事業がうまくいっても、創業者どうしのごたごたが会社全体に響いてしまいます。

専門領域が近いのも、やはり揉めます。

私とパートナーである和田晃一良は、年齢は和田のほうが10歳下ですし、専門の領域も違うので、揉めることがありません。

和田は開発が専門なので、私はプロダクトに対して一切口を出しません。フィードバックはしますが、最終の決断は和田に託しています。逆に、こうやって外に発信することに関して和田は何も言いません。「そこは大塚さんが考えた方法でいいんじゃないですか?」と言ってくれています。

それぞれ担当する領域があって、お互いの領域に対してはリスペクトし合っている。無関心なわけではなく、信頼し、背中を支え合っているという感じです。

もちろん議論になることはありますが、感情的になることはありません。それはお互い「ベストは尽くしている」という前提で話しているからです。だから「それがベストだと思うなら、いいんじゃないですか?」と言える。経営判断に関しては、何が正解かなんてわかりません。だから「ベストは尽くしている」という前提が大切なのです。

④常識にとらわれず、フラットに見る

4つめは「フラットな視点」です。

起業のときに重要なのが「情報を入れすぎない」ということです。私たちが仮想通貨の事業に参入できたのも、余計な情報に惑わされず、シンプルに考えることができたからです。

もちろん情報を遮断することには功罪あります。世の中の空気がわからなくなったり、いわゆる「盲信」の危険性もある。

ただ一方で、遮断することによって、悪い意味でのレピュテーションを取り入れずに、純粋に突き進めることもあります。私たちは情報をあえて遮断したことで、世間の常識にとらわれずに、フラットにものごとを見ることができました。

コインチェックの創業当時、世の中のメディアはひたすらビットコインを叩いていました。しかし私と和田が見ていたのは、ユーザーの動きだけでした。叩かれていても、ユーザー数はすごく増えていた。

ちなみに私が前の会社を辞めて、コインチェックに完全にジョインする決断をした理由はコインチェックの月間取引高が1億円を超えていたからです。事業が伸びていることが数字ではっきりとわかった。それは当時、実際に運営している人以外は誰も知らない事実でした。明らかにマーケットがあるということが見えていたので、躊躇なく決断ができたのです。

コインチェックの成長を経験して得た教訓は「世の中の意見には振り回されないほうがいい」ということです。特に今はツイッターなどでいろんな人がいろんなことを言います。そして、ツイートの真偽にかかわらず、バズってしまう。だから、あまりそういった声に振り回されずに、自分の知っている「事実」「一次情報」「データ」を信じてやっていけばいいのです。

そして、否定されると自信を失うので、信じていることを無理にツイッターなどで表明しなくてもいい。ある程度、世間とは距離を置きながらやっていく時期も必要です。

創業当時は、VC(ベンチャーキャピタリスト)の方でさえ「えっ? ビットコインやるの??」と言っていました。「怪しいし、きみら金融の知識ないよね?」と。心配してそう言ってくださったのでしょう。ただそれを言われたのはサービスをリリースしたあとだったので「もう遅いです」と言うしかありませんでしたが。

正解のない世界を切り開いていくとき、感情や世間の空気に振り回されず、一次情報をつかむことはますます重要になってくると思います。

パートナーの和田がすごいところは、人の発言を鵜呑みにしないところです。発言を聞いても「これは、この人の色眼鏡を通した発言なんだ」ときちんと認識している。そして「その発言の理由は?」「リファレンスは何なの?」と必ず一時情報を確認します。ここは決して手を抜きません。

たとえば「誰々さんが、法律の関係でできないと言っていました」という発言を聞いても、和田はそこで思考停止せずに法律(原文)を確認します。するとたいていは「第何文の何条にこう書かれているからできるのではないか?」と突破口が見えてきます。

「こういう理由でできないです」といわれたとき「そうか、できないのか」と思考停止するのではなく、「なぜできないのか」を突き詰め、一次情報をあたると、意外とできない理由をのべているだけで、真実はできるということは多いのです。このトリックに気付けるか気づけないかで、結果が大きく異なってきます。

⑤テクノロジーで新しい時代をつくっていく

最後の5つめは「思い」です。

①タイミング ②市場選び ③パートナー選び ④フラットな視点 と紹介してきましたが、いちばん大切なのがこの「⑤思い」ですし、①〜④が揃っていても⑤がなければうまくいかないでしょう。

あたりまえですが、どんな商品もサービスも「開発者の思い」が大切です。「こういう世界だったらいいな」「こういうものがあれば素敵だな」といった思いです。

私と和田の根底にある思いは「時代が求めるプロダクトを創り出し、時代を創る」ということです。それをアウトプットしたカタチが、たまたま市場要因がそろった「仮想通貨」や「株主総会」だったというだけの話です。

私たちが携わった商品・サービスで、誰かが「便利だな!」と思ってくれる。「このサービスがあってよかった!」「助かった!」と思ってくれる。そのために日々、仕事をしているつもりです。

さて、「私たちが起業で大切にしてきた5つのこと」と題して、思いつくままに書いてみました。またなにかシェアできるようなことがあったらnoteに書きたいと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。


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大塚雄介 /Coincheck

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