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Jリーグ 観戦記|光と摩擦|2020年J3第29節 YS横浜 vs 讃岐

 適度に冷えた神奈川の空気。新鮮な水が体内に流れるようだ。tofubeatsが奏でる軽やかな音色。一つ一つの音が血液を流れ、身体中を巡る。新横浜通りの坂を上り、三ツ沢へと足を運ぶ。絞るように、身体の芯から汗が広がる。淡青の空を見上げ、心身が同化したような感覚を覚えた。

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 眼前にスタジアムが迫る。YS横浜と讃岐の試合。初めてのJ3。観客が少ないせいか、場を包む熱は薄い。秋空を背景に漂う木々の葉。純度の高い静寂が肌を伝う。

 メインスタンドへと伸びる階段。錆びが浮かぶコンコース。サッカーとの距離が近い。そんな気持ちが萌芽した。近づいた距離感に体温は上がる。新横浜通りから続く淡青の空。広がる緑色の絨毯。サイレンが遠くからこだまする。日常から手を伸ばした先にあるJ。手に触れ、僕の心が和んだ。

 牧歌的な舞台。その上で繰り広げられる、苛烈な肉弾戦。互いに上げたディフェンスライン。中盤に生まれた密集。城壁を越えようと蹴られるロングボール。上空を舞う風にも翻弄され、ボールは密集へと落ちる。肉体の衝突。選手たちの怒声。間隙を抜けるために生じる摩擦。一人一人の速さ、高さ、屈強さが緑のキャンバスに浮かび上がる。

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 開通を目標とした城壁へのアプローチ。複数選手が連動したポジションチェンジ。突出した個性の爆発。それらは希薄だ。優劣ではない。一試合ではあるが、1と3の間に横たわる違いを垣間見た気がする。

 遠くに浮かぶ巨大な雲。それは僕に宇宙船を連想させる。前半はYS横浜のプレスに苦しんだ讃岐。後半はボールを奪った後の運動量、タッチ数、パススピードと距離が改善。微かではあるが、YS横浜を自陣へと押し込む機会が増える。終了間際に生まれた、讃岐の先制点。互いに直線的ではあるが、戦況は結果として色の違いを写す。

 時は移り、陽光は白から橙へと変化した。寒暖の十一月。そんな気配を後ろに引きながら、僕はニッパツを後にする。大差かもしれないし、微差かもしれない。しかし、また異なるサッカーの在り方を眼にした。満たされた感情は午後の空に映える。

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YS横浜 0-1 讃岐

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