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#1 効果云々を語る前に「課題解決型の(スポーツ)スポンサーシップ」という言葉の解像度を上げてみた

■自己紹介

サッカーキングなどのスポーツメディアを運営するフロムワンを経て、現在は"ソーシャルメディア時代のマーケティング"を支援する、トライバルメディアハウスでシニアビジネスプロデューサーを務める金 裕成(きん ゆそん)とです。

「"ソーシャルメディア時代のマーケティング"を支援」とはなんぞやについて、詳しい解説は弊社代表池田のnoteに譲ります

<一部引用>

「マーケティングにおけるSNSやソーシャルメディア活用」ではなく、「ソーシャルメディア時代のマーケティング」と捉えるのです。

広告とソーシャルメディアの連携、PRにおけるソーシャルメディア活用、ではなく、

・ソーシャルメディア時代の広告
・ソーシャルメディア時代のキャンペーン
・ソーシャルメディア時代のPR
・ソーシャルメディア時代のOOH
・ソーシャルメディア時代のオウンドメディア


などと捉える。

「同じじゃね?」「言葉遊び?」「屁理屈こねるな」という声が聞こえてきますが、違うんです。

いくつか事例を見てみましょう。

■なぜ&何を書くのか

5歳でサッカーをはじめ、サッカーメディアの会社にも務めた人間ですので、ご多分に漏れず基本的には「サッカー、ないしスポーツ業界の市場拡大に貢献したい」という思いがあり、

トライバルでもどうにかスポーツ案件をと自由にアポとりまくったりと、動いてきた輩です。

そしてフロムワンではスポーツ関連企業に対して、トライバルでは業種問わず大手企業の課題解決を支援してきましたが、対面する方々の所属は概ね以下の様なところです。

・広報部
・販売促進部
・宣伝部/プロモーション部
・マーケティング部
・CRM部(など、既存顧客を担う部門)
・特定の○○ブランド事業部/ブランドマネージャー
・上記部署の管掌役員/代表取締役社長などのその他経営メンバー

フロムワン時代はもちろんのこと、トライバルにおいてもスポーツにスポンサー(例:オリンピックやサッカーワールドカップなど)している企業の支援をすることもあり、向き合いの方がまさにスポンサーシップ担当でもある、ということがあります。

※トライバルメディアハウスのクライアント例(下記は掲載可能なごくごく一部)
https://www.tribalmedia.co.jp/

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オリンピックやワールドカップとなりますと、やはり権利のセールスやそのアクティベーション支援には電通さんがいらっしゃったりしますので、雑談程度に相談に乗ったりするくらいではあるのですが、そんな話をする中で、

※スポンサーシップの「アクティベーション」とは:
スポーツチーム、大会、選手、協会などにスポンサー(協賛)する企業が、スポンサーになることで与えられるマーケティング権、プロモーション権などを活用して行う活動
https://sports-sponsorship.jimdofree.com/about-1/sponsorship-activation/

「もしかしたら自分が知っている程度のことでも、参考にしていただけることがあるのでは?」

と思い、恐れ多くもスポーツスポンサーシップについて、フロムワンやトライバルで得た知識を基にちょっと書きはじめてみようかなと思った次第です。

▼本稿(やこれから書く記事)の大事な前提
対象は、「(ジョブローテや唐突な異動など不本意的な文脈も含めて担当に就いた)広告主のスポーツスポンサーシップ担当者」を想定して執筆しているため、

・僕とソーシャルグラフ(SNSにおける人間関係のネットワーク)でつながっている、協会やチーム、広告代理店、スポンサー企業、メディアなどで働くたくさんのスポーツ業界諸先輩方にとって、真新しい情報はないかと思われます既出情報を再編集しているものも多分に含みます)

・そのため、「何も知らないやつがなんかがんばってるなわろたw」程度にあたたかく見守ってください笑

・「あ、ここらへんよくわかってなさそうだからコーヒー代くらいで教えてやろうかしょうがねーな」という優しさ業界の世界ランカーみたいな方はぜひお願い致します!!

期せずして前置きが長くなってしまいましたが、あらゆる業務で一番大切と言っても過言ではない「期待値コントロール」がある程度できたっぽいところで本題に入ります。

■「課題解決型のスポンサーシップ」って何?

「スポンサー」と聞くと、例えば野球やサッカーのテレビ中継でキャッチャーの背後に見える企業ロゴや、ピッチ脇の看板を想起する人もいると思いますが、

今ではよく「看板へのロゴ掲出だけではなく、"課題解決型の(スポーツ)スポンサーシップ"でないとあきまへん」というような話がよく散見されます。

「課題解決型のスポンサーシップ」、なんとなく響き的に良さそうだけどナニソレオイシイノ?

というのを本稿では紐解いていきたいと思います。

僕自身、この言葉の解像度が粗いままであったこともあり、「で、それって具体的になんなん?」的になんとなくモヤモヤしていました。

色々調べたりする中でこれと思ったのは、近年スポーツ業界で存在感が増すばかりのアビームコンサルティングさんの情報整理です(下記のHALF TIMEさんでの連載より、テキストや画像を引用させていただきます)。

そもそもとして、アビームさんはスポンサーシップのモデルが2つあると定義されています。

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本稿で取り扱いたいのは「ビジネスアライアンスモデル(課題解決型)」ですが、「パトロンモデル(応援型)」もあると。

「パトロン(=経済的な後援者)」って言葉選びがもう、気持ちいいくらい明確に言い切っちゃっていますよね。笑

聞くところによると、(名前は言えませんが)あのチームですらスポンサー収益の内訳の8割が親会社関係(つまりパトロンモデル)であるということですから、なんともさみしい気持ちになったと共に、もうこれが地に足のついたまごうことなき事実なんでしょうね。

実際にビジネスとしてWin-Winに、持続可能な形で契約できているのはまだまだ一部で、大半は、誤解を恐れずに・言葉を選ばずに言えば、言わばお金持ち(企業)の道楽的(消費行動的)なものであると。(ノビシロデスネ!

ただ、上記2つは良し悪しでの二者択一的なものではないですし、アビームさんも今後融合された形態になる(厳密に数えると3つ目のスポンサーシップモデルになる)であろうと言及されています。

<一部引用>

それでは、今後、パトロンモデルではなく、ビジネスアライアンスモデルに100%シフトするかというと、我々もそうは考えていない。実際には融合された形態になるものと考えている。

企業がスポンサーを決断するにあたっては、「認知」、「興味・関心」、「選択」というプロセスが存在する。このプロセスの「認知」、「興味・関心」では、当然「応援をしたい」というエモーショナルな訴求が重要で、その共感がなければスポンサーになることはないだろう。

例えば、三重県(執筆者の出身地)の企業に対して、三重県のクラブと、三重県外のスポーツチームがスポンサー営業を行った場合、三重県のクラブに「興味・関心」を持つことは、感情として当然であろう。

その上で、「選択」において、「投資に値するものか」という判断が働くのだが、例えば、企業に対して「応援をしたい」と思っている複数のクラブが提案をしてきた場合、企業側は、お金を払うなら、自身の事業に対して直接的な貢献する方を選ぶ判断を行うだろう。これは企業において、社内の関係者・経営層、ステークホルダーに対しての説明責任を果たす上で当然の判断といえる。

つまり、コンテンツホルダー側は、「認知」、「興味・関心」という段階では、「応援したい」という気持ちに訴えかけ、共感を生み出し、ステークホルダーの最終投資判断となる「選択」というタイミングで、企業の課題解決につながる提案を行い事業上のメリットを感じてもらう必要がある。

したがって、あるべきスポンサーモデルはパトロンモデルとビジネスアライアンスモデルの融合であり、確度の高い営業先の選定において、この点を強く意識する必要がある。

https://halftime-media.com/column/abeam-3/

そして肝心の、「ビジネスアライアンスモデル(課題解決型)」については、下図の様に整理されています(引用している記事の主語がスポンサーを営業する側なので、スライドタイトルがそちらからの視点になっています)。

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この連載自体が優良コンテンツすぎるのですが、領域は違えど同じコンサル業としていちいち惚れ惚れするMECE(ミーシー:モレなく、ダブりなくという意味)な構造分解…!

・「課題解決の方向性・目的(左と真ん中)」と、

・「課題解決のために必要なコンテンツホルダー側(スポンサーを営業する側)のアセット(右)」

が一覧化されていて、とってもわかりやすいです。

従来のスポンサーシップによって享受できるメリットが看板掲出などによる認知獲得や販売促進、つまりマーケティングの4Pで言うPromotion偏重だったのに対して、

課題解決型のスポンサーシップではもはや4Pに留まらず事業活動のありとあらゆる側面(採用といった人事領域など)で活用を検討していくというのが上図から見て取れるかと思います。

※マーケティングの4Pとは:
https://innova-jp.com/marketing-mix/

マーケティングミックス_図1

■「バリューチェーン」で整理してみよう

というのを踏まえますと、アビームさんの整理でもとてつもなくわかりやすくて十分すぎるのですが、

スポンサーシップを「事業に対して直接的に貢献する課題解決手段」とするのであれば、

個人的には「バリューチェーン」に基づいて整理するほうがよりしっくりくるかもなと思っているこの頃です。

※バリューチェーンとは:
バリューチェーン(価値連鎖)とは、商品やサービスが顧客に提供されるまでの一連の活動を価値の連鎖として捉えたもので、「事業活動を俯瞰して、顧客満足を生み出し利益を創出するにはどこに目を付けるべきか」という点を見いだすための思考フレームです。

言い換えれば、

・自社の製品やサービスはどのような活動を経てお客さまに届いているのか
・それらの活動はどのようなコストがかかり、どのようにお客さまに貢献する価値を生み出しているのか
・どの活動にコストを含めてどのようなリソースをどの程度投入することで利益が最大化するのか


ということを大局的に検討するための道具です。

https://cs.oricon.co.jp/michitari/article/222/

※下図は一般的なメーカーのバリューチェーン

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いかがでしょうか。

読んで字の如く、「商品やサービスが顧客に提供されるまでの一連の活動を価値の連鎖として捉えたもの」ですので、

「事業に対して直接的に貢献する課題解決手段」を整理する上では、より必然性があり、本質的、且つ網羅的に整理できそうな感じがしないでしょうか(僕だけでしょうかw)。

つまり、

「"課題解決型のスポンサーシップ"とは、事業のバリューチェーン全体における課題解決にスポンサーアセットを活用することである」

がより解像度の高い理解であろうという本稿の結論です(改めて言葉にした結果だけ見ると普通なのですがw)。

■事例

例えば、サッカー界のレジェンド鈴木啓太さんが代表を務めている、アスリートの腸内細菌を研究するAuB株式会社のスポンサーシップ事例は一つわかりやすいのではないでしょうか(他にもたくさん好事例はあると思いますが)。

文末にプロジェクト①~③と詳細の記載もありますが、端的にはAuB社の、

・研究開発
・新規ビジネスマッチング・開発

京都サンガF.Cのアセットが活用されているといったところでしょうか(マーケティング4PのPromotion要素は割愛)。

また同社は鈴木啓太さんの古巣である浦和レッズにもスポンサーしています。

恐らく座組みは京都サンガF.Cのそれと類似しているでしょうから、それに加えて古巣に対するエモーショナルな愛もあり、まさにこれは「スポンサーシップモデルの融合形態」とも言えると思います。

またくどいようですが、単なる看板掲出がダメと言いたいわけではありません。

スペインの世界的ビッククラブ、FCバルセロナのスポンサーになった当時の楽天三木谷さんは、下記のようにおっしゃっています。

年間65億円という金額は、広告宣伝費という考えに立つと、経済効果的にはもう十二分に採算はあっているんです。

世界でのブランドの露出効果を考えた場合、実際に広告換算したらいくらになるのかということを考えると、少なくともその数倍の価値はある。


https://number.bunshun.jp/articles/-/827975?page=2

実際にシリコンバレーでの認知度が格段に上がったりと、グローバルでのビジネス展開がとてもしやすくなったという話もありましたから、まさに何を課題解決したいのか

当たり前ですが全てにおいて目的に対して適切な手段を選ぶべき(手段の目的化はダメ、ゼッタイ)、という話ですね。

以上です。
つらつらと書いてみましたがいかがでしたでしょうか。

今後続くのかどうかはあたたかーーーく見守っていただけますと幸いです。

ちなみに、ヴェルディ佐川さんのこんなツイート

も拝見して、トライバルが提唱する熱狂顧客やファンダムと絡めた記事を書いてみたくもなったような、なっていないような、です。

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