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泡と幻

遺された写真を整理しながら過ぎ去った瞬間を振り返ろうにも、
僕の記憶はいつも曖昧でその夜飲んだビールの泡とともに消え去っていく。
なんで笑っているのか。なんで泣いているのか。
僕はそこにいたはずなのに。何かを感じて写したはずなのに覚えていない。
変なの。すごくいい加減だ。

一ヶ月以上も外の世界から切り離されて生きていると、大量の写真に焼き付いたものすべてが幻のように思える。
それくらい世界は変わってしまった。嘘みたいに。
でも僕はそこにいて、君も確かにそこにいた。
笑ってる。怒ってる。吐いてる。泣いてる。抱き合ってる。変な顔。まだ付き合ってる。まだ出会ってもない。キスしてる。溺れてる。
横浜。東京。大阪。名古屋。京都。那覇。パレルモ。ロンドン。パリ。セート。アルル。ベルリン。ミラノ。レイキャビク。イスタンブール。トビリシ。キエフ。

一ヶ月以上も前の、すでに懐かしくもある元の世界はもう二度と戻ってこないだろうし、もちろん過ぎ去った時間も戻ってこない。
みんな、各々の人生の絶頂を知らないうちに過ごしているんだな。
そんな当たり前の発見。多分それもいま飲んでいるビールとともに忘れる。
もう、そこにはいない。
君も。
僕も。


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2020/4/26 ロンドン London



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