【FF12】3つのシーンでストーリーの醍醐味を知ろう part1【解説】

(※ネタバレあり)

はじめに

FF12のヲタクなので, FF12の話をします.

FF12の話になると何処からともなく「システムは最高、ストーリーは……」「打ち切り漫画」「主人公が空気」「バルフレアアアアア!!!」という声が聞こえてくる. FF12に詳しくない人は「何言ってんだこいつ……」と思うかも知れないが, どれもFF12のストーリーの"稚拙さ"を揶揄する言葉だ.

僕はこの記事で, 上のような意見に敢えて反論したい. そして僕はこう言いたい.「システムは最高、そしてストーリーも実は最高」と.

そのためにこの記事では, FF12のストーリーにおけるターニングポイントと言える3つのシーンを取り上げる. 以下の3つがそれである:

シーン1: ガリフの地ジャハラでのヴァンとアーシェの会話イベント,
シーン2: フォーン海岸でのバルフレアとアーシェの会話イベント,
シーン3: リドルアナ大灯台頂上での一連のイベント.

シーン1は, 「主人公としてのヴァン」を語る上で外せないイベントであり, 作中屈指の名シーンでもある. シーン2は, バルフレアとアーシェの関係性を考える上で無視出来ないイベントだ. そしてシーン3は, FF12のストーリーにおける最大の山場であり, このシーンの理解なしにFF12を語る事は出来ないと言える最重要シーンである.

これらの重要シーンを丁寧に見ていく事で, FF12のストーリー面の魅力を伝えていこうと思う. もしこの記事を最後まで読んで頂けたらその後は是非, FF12のムービーシーンだけでも一通り見てみて欲しい. ストーリーを続けて追う事で, 前後関係が分かりやすくなる. 特に既プレイの人は, 初見時とは全く違う印象を持つ事が出来ると思う.

なお, 台詞の書き起こし・ストーリーの解釈については, 無印版の公式攻略本『アルティマニアΩ』のストーリー解説に多くを寄っている事を明記しておく.


シーン1の解説. FF12の主人公は一人ではない.

まずシーン1: ガリフの地ジャハラでのヴァンとアーシェの会話イベントを見ていこう. このシーンは, ヴァンがここまでの冒険の総括として一つの悟りを得るシーンであり, それゆえに彼の物語が一区切りつくシーンである. 

この会話を通して, ヴァンの担っていた主人公の役割の大部分は, アーシェ(とバルフレア)に託され, 描かれる物語が変わる. ヴァンはまだ序盤のこの時点で, 大きな精神的成長を遂げてしまうからである. 必然的にこれ以降では, 他のメンバーの成長がメインに描かれる事になる.

これが, 主人公(=ヴァン)が空気と言われる所以である. しかし, 実際には主人公が空気なのではなく, このシーンを通して主人公が交代しているのだ. 描かれる物語が変わるのだから, 当然と言えば当然である.

まとめると, FF12のストーリー全体の流れは以下の図のようになっている.

前半: ヴァンの物語. 自分の生きる道を探す.

-------ガリフの地ジャハラでのイベント-------

後半: アーシェ・バルフレアの物語. 自分の過去と決着をつける.
(サイドストーリー: フランの過去, バッシュとガブラスの因縁, ヴェインとシドの野望)

このシーンの重要性を理解した所で, 詳細に台詞をみていこう.

序盤のストーリーの主軸は, ヴァンとアーシェの対比だ. 2人の立場は大きく異なるが, 先の戦争で大事な人(ヴァンは兄, アーシェは夫)を亡くしており, 自分への無力感に苛まれている点で共通している. 彼ら2人だけが故ラスラ王子の幻影を見る事が出来るのは, それが理由である.

ヴァンはそんなアーシェ相手だからこそ, 自分の弱さや悲しみを語る事が出来る.

ヴァン: 帝国が憎いとか、仕返ししてやるとか――怨みばっかふくらんで――けど、その先は全然。どうせなんにもできやしないって、気がついて、空しくなって、そのたびに兄さんを思い出して――。

帝国への憎しみ, 何も出来ない自分への無力感, そして親しい人の死への悲しみ. どれもヴァンとアーシェが共有する感情だ.

しかし, ヴァンはここで更にその一歩先へと踏み出す.

実は, この会話シーンよりも前にある「お前なら何が欲しい?何を探してる?」というバルフレアからヴァンへの問いかけは, ヴァンが自分を見つめ直す契機となっている. 

スクリーンショット (230)

スクリーンショット (232)

問いかけられたその時には, 答える事が出来なかった. しかしこの問いかけによって, 彼は気付く事が出来た. 今まで語っていた"夢"は, 自分の弱さや悲しみから逃げる口実に過ぎなかったのだと. 

ヴァン: オレ、そういうの忘れたくて、とりあえず『空賊になりたい』とか――景気いいこと言ってたんだろうな。兄さんの死から――逃げたかったんだ。アーシェについてここまで来たのも、きっと逃げたいからなんだ。

そして, 彼は決別する事を選択する. 弱かった自分から. 過去から目を背け, 逃げる事しか出来なかった自分から. そして, 逃げるための口実ではない, 本当の夢を見つける決意をする.

ヴァン: でも、もうやめる。逃げるのはやめる。ちゃんと目標をみつけたいんだ。オレの未来をどうするか、その答え。

ここに, 叶える方法も分からず漠然とした夢しか語れなかったヴァンの成長が見て取れる. 兄の死から逃げるように始めた冒険が, 自分を見つめ直し, 新たな道を歩み始めるきっかけとなったのだ.

新たな道を歩み始めたヴァンに対し, アーシェは自分の目指すべき道を見つけられずにいる. 彼女の迷いは直後のヴァンとの掛け合いに表れている.

ヴァン: アーシェと行けば、みつかると思う。
アーシェ: みつかるかな――。
ヴァン: みつけるよ。

アーシェの問いかけは自分への問いかけでもある. 答えを見つける確信を持っているヴァンに対し, アーシェは自分の答えを見つける確信が持てない. 

共に道を歩んでいくかに思われた同年代の2人は, ここからそれぞれの道を歩んでいく事になる. 自分の道を探す決意を固めたヴァンの物語は一旦ここで終わり, 答えを探すアーシェの物語へと繋がっていくのだ.

スクリーンショット (227)

夜空を見上げる2人の姿が印象的.

このようにシーン1では, 「主人公ヴァン」の成長がアーシェとの対比をもって鮮やかに描かれている. その成長のきっかけは, 確かにここまでの冒険の中にあったのだった. だからこそ, 彼は冒険を続ける. そして, 彼の主人公としての役割は, その後アーシェ(とバルフレア)に引き継がれる事となる. FF12の主人公はヴァン1人だけではないのだ.


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