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ソール・ライターの、目を借りて

珍しく、写真関連の本を買った。

随分と長く写真を撮ってきているのにも関わらず、写真集や写真に纏わる書籍はほとんど持っていない。小説や実用書であれば100冊以上がある我が家だというのに、写真に関する書籍は雑誌を除けば片手で足りる数だ。

それなのに「ソール・ライターのすべて」は…気紛れに手に取った5分後には、どうにも手放せない気分になっていて。そのまま素直にレジに持って行ってしまった。

「ソール・ライターのすべて」p111より

大胆な切り取り方に面白みのある構図、洒落た色づかい。時代も国も人種も違うというのに、どこか普遍的な匂いが漂う写真達。今まで目にしたどの写真家よりも(そんなに沢山ではないけれど)、感覚的にしっくりくる。何度パラパラしても飽きない。

記憶にない記憶を覗いているような、自分がかつてその光景を目にしたことがあったような、誰かの目を借りて世界を眺めているような…写真を見ていて、こんな感覚になったのは初めてだった。ああ、世界がそこにある。これはいつかどこかで見た景色だ…そんな錯覚をしてしまうような写真達だ。
 

何度見ても飽きないのは、自分の写真だけかと思っていたけれど。他人が撮った写真で同じような感覚を覚えることがあるなんて…驚いた。

自画自賛のような台詞だけれど…自分の写真というのは基本的に「自分好み」の塊のようなもので、好きで満たされている。撮り手と鑑賞者が同一人物であればこそ、鑑賞時にその視点に入り込むことも容易い。だからこそ、飽きず眺められる。それが全くの他人の写真でも同じ感覚が得られるだなんて思いもよらなかった。

とはいっても、彼の写真と自分の撮る写真が似ているという訳ではない。むしろ全く異なる。だからこそ彼の写真に惹かれたことが意外だったし、不思議な気持ちになったという訳だ。
 

ネットで何でも買える時代になった今でも、時間があるとつい本屋に足を運んでぶらぶらと何時間でも過ごしてしまうのは。こういう思いもよらない出会いがあるからかもしれない。

知らない自分と出会う瞬間、というのはいつでも楽しいものだから。




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