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災害分野全般

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「日本ってなんで地震が多いの?」とか 「地すべりのニュースを見たけど、ウチは大丈夫なんだろうか?」など 災害に関する素朴な疑問にお答えできれば・・という記事です。 災害をただただ… もっと読む
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【災害から身を守る vol.1】相手の正体を知ろう

私が専門として学んできた地質学は非常に面白いしワクワクする学問です。 でも世間ではまだまだ認知されていない印象です。 最近ではブラタモリのおかげで興味を持ってきた人も増えたかもしれませんが・・。 やはり日常の中で具体的に関わるようなものじゃないと、なかなか興味が湧かない人も多いと思います。 このシリーズでは、そんな人たちに知っておくと得をする災害から身を守るための地質のお話しをしたいと思います。 第一回は「相手の正体を知ろう」です。 彼を知り己を知れば百戦殆うからずとは孫

日本の”災害大国”の真実とは? part1【災害から身を守る vol.2】

前回は「災害の正体を知ろう」ということで、日本で主に起こる災害のうち、地質学と関係の深いものについて簡単に紹介しました。 (トップ画像出典:国土交通省) 真実を理解するためには、「長い歴史」を理解することが大切です 日本は「災害大国」と呼ばれてますよね。 あまりにも激甚災害が多いので、みなさんどうしても「分かりやすい理由」が欲しくなる気持ちは分かります。 東日本大震災の時も人工地震というデマが広まりましたが・・・。 そう考えたくなる気持ちは分かるのですが、1つだけ皆さんに考

日本に地震が多い本当の理由【災害から身を守る vol.2】日本の”災害大国”の真実とは? part2

前回は、日本には災害が起こる要素のほぼ全てが揃っているという残念な事実をお伝えしました。 今回はそれについて、もう少し突っ込んでお話ししたいと思います。 災害大国の理由日本が災害大国な理由は、簡単にザックリ言ってしまうと ・プレートのせい ・気象条件のせい です。 気象は、雨や雪が多いということですね。 雨や雪解けで河川水が多くなれば、山が削られ、脆くなり、崩れやすくなりますし、洪水も起きます。 プレートはニュースなどで良く聞くと思います。 簡単に説明しますと、地球表面

日本に火山が多いワケ 【災害から身を守る vol.2】 日本の”災害大国”の真実とは? part3

前回までは日本に地震が多い理由までお話ししました。 今回は「日本の”災害大国”の真実とは? part3」として日本に火山が多い理由についてお話します。 日本に火山が多いワケこの世界地図を見てください。 これは世界の火山の分布をしめしています。日本のだいたいの位置をピンクで囲ってます。何か気づきませんか? そう、前回お見せした世界の地震の分布と似てると思いません? これは火山も地震と同様に、プレートの境界に多いという事を示しています。そしてやっぱり日本は真っ赤になっていて

衝撃!日本はツギハギだらけの弱いヤツ 【災害から身を守る vol.2】 日本の”災害大国”の真実とは? part4

日本は災害大国。プレートのせいで地震は多いし火山も多い。そりゃ災害大国と言われますよね。 ただですね、残念ながら災害大国の理由はまだまだあるんです。 梅雨時期だったり台風が来たりすると土砂災害が起こりますよね。 大規模な土砂災害による被害は、日本のどこかで毎年必ず起こっていると言っても過言ではないくらい、しょっちゅうニュースがあります。 これ、日本列島がツギハギだらけの弱いヤツだからなんです・・。 ※熊本県を中心とする記録的な豪雨により多くの方々が被災してしまっています。

日本には安全なところなんて無い?? 【災害から身を守る vol.2】 日本の”災害大国”の真実とは? part5

日本は災害大国です。このシリーズをお送りしている間にも災害が発生してしまいました。 これまでに地震が多い理由、火山が多い理由、土砂災害が多い理由についてお話ししてきました。 今回は日本に安全なところはあるのか?についてお話しします。 (トップ画像出典:国土交通省) そもそも安全なところなんて無い?? 正直言いますと、私の口から「ここは安全ですよ」と言える場所はありません。非常に残念ですが・・。 もちろん、ある一定の条件が揃った場所であれば、それなりに安心して住めるとは思

土砂災害はザックリ3種類!:土砂災害とは?part1【災害から身を守るvol.4】

※まず冒頭で令和2年7月豪雨に被災して亡くなられた方々に心より御冥福をお祈りするとともに、被災した全ての方々にお見舞い申し上げます。 大地震や火山噴火も怖いですが、土砂災害は毎年と言って良いほど、日本国内のどこかで起こっていますよね。 例え自宅付近に山がなかったとしても、旅先や出張先などで被災してしまう可能性もあります。 相手の正体を知っていれば、被災を免れる可能性は高まります。 土砂災害はザックリ分けて3種類 細かいことを言うとキリがないので、まずは簡単に「3種類」を頭

土石流をもっと詳しく!:土砂災害とは?part2【災害から身を守るvol.5】

※まず冒頭で令和2年7月豪雨に被災して亡くなられた方々に心より御冥福をお祈りするとともに、被災した全ての方々にお見舞い申し上げます。 前回は土砂災害の種類について簡単にお話ししました。 でも相手は自然現象ですので、中間的なものがあったり、3種類が複雑に関係しあったりしています。 今回は土石流について、もう少し深掘りします。 土石流の原因を詳しく前回はサラッと説明しましたが、土石流の原因である土砂はなんなのでしょう? まず考えられるのは河川内にもともとある土砂ですが、これが

がけ崩れ(崩壊)をもっと詳しく!【災害から身を守るvol.6】

※まず冒頭で令和2年7月豪雨に被災して亡くなられた方々に心より御冥福をお祈りするとともに、被災した全ての方々にお見舞い申し上げます。 ここ数日は土砂災害についてお話ししていますが、がけ崩れ(崩壊)が一番説明しにくいかもしれません。 何せ自然現象。規模やカタチなど様々なものがあります。 規模が大きくなるほど、がけ崩れと言うより崩壊と呼ぶようになります。 では、今回はがけ崩れ(崩壊)について少し深掘りしてみましょう。 落石もがけ崩れの1つがけ崩れの究極に規模の小さいものは落

地すべりをもっと詳しく!【災害から身を守るvol.7】

※まず冒頭で令和2年7月豪雨に被災して亡くなられた方々に心より御冥福をお祈りするとともに、被災した全ての方々にお見舞い申し上げます。 今回は地すべりについて少し深掘りします。 地すべりは、色々な意味でキングオブ・土砂災害なんですよ! ※トップ画像は奈良県の亀の瀬地すべり:国交省より 地すべりは土砂災害の親玉?! そうなんです。親玉なんですよ。 ザックリ解説では「動きが遅い」と言いましたよね。 年間数cm動いてれば、速い方です。 もちろん、年間1mとか動く地すべりもありま

巨大地すべり×ダム=大惨事?!:仙台市泉区七北田ダム周辺地域part1【御当地ハザードマップvol.1】

とある地域ハザードマップを掘り下げていこう!というシリーズの第1弾です!! 始めにお断りしておきます災害は様々な条件が重なって起こります。 ハザードマップはこれまでの知見や地形・地質の調査結果などにもとづいて作成されています。 そしてこのシリーズでは、そのハザードマップから読み取れる事項に、既存の地形・地質情報を加え、筆者が最悪の事態を想定したものです。 ですので、ここで取り上げた地域が、特別危険な地域ということではありません。そもそも日本はどこでも災害が起こり得るような

地震地すべりかどうかを見抜くには?:巨大地すべり×ダム=大惨事?!:仙台市泉区七北田ダム周辺地域part2【御当地ハザードマップvol.1】

前回は宮城県仙台市の七北田ダムに面している地すべりを見ました。 この地すべり、地震地すべりの荒砥沢地すべりと形状が似ていますが、果たして?? 地震地すべりの特徴いくつか文献(木下ほか2010、阿部ほか2011)を読んでみたのですが、まず地すべりという用語の定義が曖昧なため、多種多様な"山崩れ現象"を地震地すべりとして扱っていました。 ですので「これが地震地すべりの特徴だ!」とは一概には言えなそうです。 斜面災害対策の技術が進歩した近年で、リアルタイムで「地震地すべり」が認

「横っ面」を比べてみました:巨大地すべり×ダム=大惨事?!:仙台市泉区七北田ダム周辺地域part3【御当地ハザードマップvol.1】

現状で知られている日本最大の地震地すべりよりも大きい?という疑惑が生まれている、宮城県仙台市泉区の七北田ダム地すべり(筆者が勝手に命名)。 これが本当に地震で動く地すべりなのか?ただ今検討中です! 荒砥沢地すべりとの比較②:断面形状・・その2前回は荒砥沢地すべりの断面図を紹介するまででした。 とりあえずは荒砥沢地すべりの断面図をもう1度。 今度は真ん中のC測線の断面図です。 赤線がすべり面。底面はほぼ水平ですよね。 では、七北田ダム地すべりの断面図を見てみましょう!

それ、水平?それが問題なのよ:巨大地すべり×ダム=大惨事?!:仙台市泉区七北田ダム周辺地域part4【御当地ハザードマップvol.1】

トップ画像はスーパー地形(カシミール3D)より抜粋。 3D機能で空中写真をかぶせた画像です。 なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト) 断面図を考えてみる前回からの続きで、七北田ダム地すべりの断面形状がどんな感じになるのか?を考えてみます。 地質の情報から、0~20度で想定します。 この断面図をもとに検討を進めます。 まず、頭部から地下へ切れ下がる部分。 下図の、荒砥沢地すべりで言うところの、右の青丸