伊藤忠、ファミマを完全子会社に、5800億円でTOB、JA系と「食」で連携。


【ファミマを完全に子会社化する】
 伊藤忠商事は8日、ファミリーマートを完全子会社化すると発表した。5800億円を投じ、TOBを実施する。新型コロナウイルスを機に消費者の行動が変化し、コンビニエンスストアはこれまでの成長モデルが揺らいでいる。伊藤忠は主軸の消費者向けビジネスに欠かせないコンビニを立て直すため、両社で実店舗とデジタルとの融合など新たな消費ビジネスの構築に取り組む。

【ファミマとJAグループ提携で、商品の拡充を計る】
 TOB価格は1株2300円。ファミマ株の8日終値(1754円)に対し、31%のプレミアムとなる。ファミマはTOB終了後に上場廃止となる。その後、伊藤忠は4・9%分の株式を全国農業協同組合連合会(JA全農)と農林中央金庫に約570億円で譲渡し、JAグループと商品や販売網の拡充で提携する。

【3〜5月   昨対と比べ10%落ちた】
 ファミマの収益は落ち込んでいる。同日発表した2020年3~5月期の連結純利益は前年同期比71%減の57億円だった。都心部での出店を進めていたが、新型コロナで広がった在宅勤務が逆風となり、既存店売上高は10・5%減だった。同日会見した沢田貴司社長は「商品構成などが巣ごもり需要に対応しきれていなかった」と話した。

【店舗の飽和で競争が激化している?】
 コンビニはファミマとセブン―イレブン・ジャパン、ローソンの3社がけん引し、新規出店とサービス拡大によって生活インフラとして定着した。ファミマもエーエム・ピーエム・ジャパンの買収や、サークルKサンクスを傘下に持つ旧ユニーグループ・ホールディングスとの経営統合を通じ事業を拡大してきた。
 ただ店舗の飽和で競争が激化し、成長力に陰りも見えている。膨大な顧客データを活用する米アマゾン・ドット・コムなども脅威となっている。
 株式の非公開化で、経営判断は素早くなる。ファミマは国内に1万6613店(5月末時点)を持つ。1日に約1500万人が来店し、消費者の接点としては大きい。伊藤忠は人工知能(AI)などを手がけるスタートアップにも出資している。両社で業務の効率化やデータ活用に取り組み、「既存のビジネスを改良」(沢田社長)して新たな成長モデルにつなげる。

【品揃えはJAグループとの提携を生かす!】
 品ぞろえの面ではJAグループとの提携をいかす。農畜産物など生鮮食品の品ぞろえを強化する。逆にJAが持つ地方の店舗や直売所ではファミマの商品を取り扱う。顧客の嗜好に合わせファミマの加工食品の材料を国産食品に切り替え、新商品も共同開発する。
 商社は資源開発など企業間の事業が多い。コンビニは世界で調達した食料などの供給先というだけでなく、フィンテックなどの次世代技術を使った消費者向けビジネスの拡大に重要な役割を持つ。三菱商事は17年にローソンを子会社化した。
 伊藤忠は98年からファミマを持ち分法適用会社にし、18年に追加出資で子会社にしていた。今回、完全子会社化でファミマの経営への関与を強める。伊藤忠は時価総額や株価で三菱商事を上回り、業界首位となった。ファミマの完全子会社化によって利益は押し上げられる見通しで、利益額の首位も目指す。

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