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無名性がクリテイティブな力になる

ぼくは海外のポッドキャストを聴くのがスキで毎日散歩しながら聞いている。おもしろいポッドキャストを聴くとTwitterに内容をアップすることが多いんだけど140文字では窮屈なので今日はこっちに書く。

今日聞いたのはロドリゴ・アマランテというブラジル人ミュージシャンの話である。かれはブラジルでは有名なミュージシャンなのだが、そのことに飽き足らなくなってアメリカにわたってきたという。もういちど無名の存在にかえって自分の音楽を確かめたかったのだそうだ。

現在はアメリカで活躍中で、いちばん名前が知られているのはNetflix の『ナルコス』というドラマのテーマソングだそうである。ぼくはNetflixを見てないのでわからないけど見た人もいるのではないでしょうか。

ブラジルでは演奏をはじめる前にすでに客が「ロドリゴ」の音楽を聞くのだという準備ができてしまっている。しかしアメリカに来ればじぶんは無名であり、客を音楽だけで征服しなければならない。この状況に自分を追い込むことで創造性をかきたてられるという。話を聞いていると芯からのアーティストだと感じさせられるのである。

彼にかぎらず、本当の実力派クリエイターがいちど有名になったあとで自分の力を試したくなるというパターンはたまに聞く。スティーブン・キングもかつて似たようなことをやった。

ぼくが最初に買ったキングのペーパーバックは「Thinner」というんだけど日本語では『痩せゆく男』と訳されている。でもあれは当初スティーブン・キングではなくてリチャード・バックマンの作品だった。出す作品がすべてベストセラーになってしまう1980年代のキングが「自分の作品は本当に面白いのだろうか。おもしろいのなら名前を変えても売れるはずだ」という実験としてリチャード・バックマン名義で出したのである。そして、やはりヒットしてしまった。

たとえていうなら、有名な芸人さんがまったくの匿名アカウントでバズって多くのフォロワーを獲得した後で「実は○○でーす」ってカミングアウトするようなものだろうか。でもそういう話は聞かないですよね

そういや村上ショージさんの娘さんが「ばたーぬりえ」という芸名でお笑いコンテストでチャンピオンになった後で、ショージさんの娘だとカミングアウトしたことがあったけど、ああいうやり方をするとたとえ親が有名人でも自動的に実力が証明されてしまう。すごいことである。

ところで、宮崎駿監督は世界的に有名だけど、今かりにまったく無名のアニメーターとしてどこかの国でデビューしてもあっというまに売れるだろう。無名で終わるってありえないだろうなあ。。。

逆のパターンとして、昔の名前を使って議員に立候補するというながれもありますね。。べつに政治家としての実力があればそれはそれでいいと思うんだけど、たまーに昔の名前だけでやっている人もいるような気がしないでもない。まあ、いいわるいはともかく、ロドリゴやスティーブン・キングがやったのと逆のパターンであることはまちがいない。

それにしても、ボサノバは素敵である。ロドリゴもいいがボサノバと言えばジョアン・ジルベルトだろう。ジャズとボサノバはなぜか相性が良く名盤が多いが、中でも『ゲッツ/ジルベルト』というアルバムは音楽の好きなすべての人が一生に一回は聞いて損のないアルバムです。


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