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最後はヒトだと思いたい

かつて近所に2件のチェーン店の中華料理屋があった。一軒は入口のところに障がい者用の大きなトイレを備えていた。もう一軒はトイレが厨房の奥にありカウンターのすきまを抜けていかないといけない。スキマは体を横にしなければぬけることができないつくりであり、つまり客になるべくトイレを使わないでほしいということだ。

客のトイレ利用率が増えたらそれだけ掃除に人件費がかかる。全店舗分でこれくらいの掃除コストになるわけで、トイレを店の奥に設置したらこれくらいコストを削減できる・・という発想だったのではないか。

しかし、ぼくは1度行って「感じ悪いな」という思いしかなく2度めは行っていない。ちなみにその店はSARS-2のずいぶん前に閉店してしまった。

一方大きなトイレがある店は、野菜も地元のものしか使わないし、厨房も丸見えで中華鍋をふるっているのが見える。においがつくので入店前に上着をビニール袋に入れなければならないが、自分のホイコーローが踊っているのを見るのは気分がいい。

そこはSARS-2でも客足が途絶えないが、そもそも感染拡大前から午後9時閉店の健全経営だったので時短の影響はあまりない。

ぼくは飲食店についても組織というものについても一介の素人であり、いつも個人の側からしか見ることができないんだけど、組織からはみ出る人間味というか組織を通して感じられる人間味というのはあると思っている。

いまはマーケティング戦略が洗練されており、ぼくも仕事ではそういうのばかり翻訳している。なのでちょっとこういうことを書きたくなった。

トイレが広く厨房が丸見えの店は、華麗なるMBAの行動心理学的テクニックでそういうことをやっているのではないと思う。経営陣の人間味がにじみ出ているのだ。

ほら、地方に行くと一人のおじいさんが建造した巨大な仏像やら、変な自動販売機があったりするじゃないですか。ああいうのはAIの計算で作ることはできない。

ちなみにそのチェーン中華料理店も温泉ホテルを経営しており、よくテレ玉でCMをやっているが、ホテルのメニューにはその店の料理ばかり並んでいる。「群馬と新潟の県境まで行ってこのホイコーローが出てくるのか」と思うとすごーくわけがわからない。

こういう「わけのわからないもの」は、AI時代に人間味をかぎわけるポイントになるのではないかと思っており、そういうわけのわからないものを応援したい気持ちが強い。

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