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今だから感じられる、本当に必要なもの。

緊急事態宣言が出される前。解体が始まるお家で写真を撮りに伺いました。

河瀬さんの友人であるボランティアの方々と一緒にお家の中を片付けたあの日と比べ、あの時にあったたくさんのものほとんどが撤去されています。

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*撮影に至った経緯はこちらから

家族みんなで集まった思い出のダイニングテーブルの上に置かれたお花。燃えてしまったお家の中に置かれたその花は、外で見るものとは違う色をしているように見えました。

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そして解体前最後のこの日。火事の被害から免れた書斎を整理される河瀬さん。本やCDがたくさん詰まった本棚を整理しながら話してくれました。


「ほんとさ。なんもいらないよね。ほとんど、いらない。」


火事に遭われて、河瀬さんは物への執着がなくなったと教えてくれました。

その言葉を聞いて被災地に行った時のことを思い出しました。

蛍が飛び交うほどきれいな水が流れ、美しい棚田が続くのどかで美しい集落が、土砂に流されて何もなくなってしまったあの光景。

「ああ、何も、ないんだ。いつかはなくなってしまうんだ。」

その後、被災地から戻った後に私は家のたくさんのものを処分しました。

その時のことを思い出したのです。

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片付けを続ける河瀬さんの横では、お子さんたちはお家にらくがきをしていました。今までの思い出を壁いっぱいに綴ります。

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それを見た河瀬さん。「こういう時って、らくがきしたくなるもんなんだねえ」そう言いながら壁に向かってたくさんシャッターを切ります。

河瀬さんは家事に遭われてから写真をたくさん撮っていて。撮られた写真は、何か滲みでているような感覚がします。

愛おしいから撮る。

河瀬さんがそうやって写真を撮る姿を横で見てハッとしました。


自分は残せているのだろうか。

この日伺ってから数日後に緊急事態宣言が出されました。外出を控えなければならなくなった今は、河瀬さんご家族を撮影することがなかなか難しくなって。撮影できること自体がなんて有難いことなんだろうと実感します。

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そして撮影を終えた数日後、河瀬さんがこう教えてくれました。

へんな言い方するけどさ
火事になって、よかったっておもってるの。
家族と過ごす時間とか、人の想いとか、仕事のあり方とか、そういう忙しさで見えにくくなっててたことを、一気に可視化してくれたの。
新たな出会いもあるし
こうして志保さんと写真を通じて繋がれるしいいことだらけ。


火事になり、想像できないほどに大変な状況に遭われてしまって。お気持ちを計り知ることなんて到底できない。
でもそれ以上に河瀬さん自身は、とてもすばらしいものを手に入れられたのかなあ。


コロナの影響で世界はあっという間に変わってしまい、人との接触を避けなければならなくなりました。

でもその分誰かに会いたくなったり、いろんなものの有り難みを知れて。
人との実際の距離が離れるほどに、心は近くなるような感覚がします。

いま世界が大変な状況になってしまったこと、そして河瀬さんご一家を撮影させていただくことになり、本当に必要なもの、人との繋がりの大切さについて、改めて考えるようになりました。


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この写真は、河瀬さんのご友人が集まりボランティア活動をした日に撮影したもの。宝物だと言ってくれた写真です。今だから感じられる、本当に必要なものが詰まっている気がします。

大切な人同士が集まれて、またこうして写真を撮れる日が来ることを願って。新しくなったお家で1日でも早く、ご家族や仲間といっぱい笑ってる写真が撮れますように。




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