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地方コーポレートエンジニアとITベンダの地方支店。関係の変化と今後のリアルの必要性について考えた

corp-engr 情シスSlack(コーポレートエンジニア x 情シス) Advent Calendar 2020#3  17日目の記事です。

yurineeです。地方製造業でコーポレートエンジニアこと情シスやってます。初アドベントカレンダー参加です。何書こうか迷いましたが、技術系は皆さんの素晴らしい投稿だらけなので、ちょっと視点ずらしてブルーオーシャンで泳ぐことにしました。

この1年、covid-19によってオンライン会議やオンラインイベントが当たり前になりました。情報収集の方法が大きく変化したある日、ふと気づきます。「あれ?自社担当の営業さん達と、しばらくコンタクト取ってないけど全然困ってない」
オンラインで解決することが増えている今、ITベンダ地方支店との関係や担当営業さんの必要性について改めて考えてみました。

本テーマについて、ご意見を下さった各地の情シスの方々と、私のちょっと意地悪な問いにも真摯にご回答下さった某複合機メーカーの営業部長様に、深く感謝申し上げます。

1.地方におけるcovid-19前後での情報収集手段の変化

covid-19以前の情報収集状況は、ベンダ営業さんの定期巡回もあり、地方企業間では似たり寄ったり。受け身でもどうにかなりましたが…

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往来自粛によって営業訪問が途絶え、情報は自動的には入って来なくなりました。積極性の有無による情報格差が拡大していると思われます。

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2.自社で起こったこと

リアル面談の停止により、情報の入手や打ち合わせはオンライン中心になりました。WEB会議では所在地は関係ありませんので、地方でも首都圏の企業と直接打ち合わせできます。それだけでは得られない新しい知識や情報は、オンラインコミュニティやイベントから積極的に入手するようになりました。

オンラインコミュニティでは相談相手が一気に数百倍となり、欲しい情報や相談の回答が手軽・気軽​に手に入るようになりました。新鮮でリアルな評判が飛び交いますので、機器やサービスの一次選定はある程度ここで行うようになりました。

オンラインイベントについては、オンライン開催が増えて地方としては超絶恩恵を受けました。加えて、イベント自体を知る方法にも変化がありました。​手段それぞれに特徴があります。

・開催企業のDMによる案内:詳しい、早い​
・日経や記事サイトのメルマガ、過去イベント参加によるDMなど:同上​
・ネットのコミュニティから:自分が望む内容とのヒット率が高く情報が早い​
​・地元ベンダ営業さんからの紹介:公式開催分は既に知っている、遅い、ジャンルが狭い

地元ベンダさんはこれまでのメイン入手元だったのですが、ちょっと残念な結果に。選別して教えてもらえることもありますが、ほとんどがノルマ的に一斉メールでやってきます。

システム導入時の企画、選定、導入手段にも変化が起こりました。

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気づけば、自分たちの日常の相談先が変わっていました。

​・組織強化と地域情報​:地元のコンサルの先生(ITコーディネータ)​
・技術​:首都圏のマルチベンダコンサル企業
・日常のちょっとしたこと​:オンラインコミュニティ・SNS

あれ?ベンダの営業さんは…?

昔から地方では、地元ベンダとの関係で様々な問題やリスクを抱えています。

地方支店は案件事例が少ないので、直接経験のある人を全国から探したりするために一旦持ち帰りor別日の会議に持ち越される(商談が遅くなる)​
・商材紹介・相談回答・提案内容が、担当営業さんのスキルに大きく左右される​
支店の営業担当者数が少ないため、担当営業さんを変更できない場合が多い。トラブルがあっても、その企業との取引自体を絶つか、我慢するかの究極の二択しかない

そこに追い討ちをかけるように、往来自粛によって地元支店へのアポイント要件が激減しました。弊社の場合、気づいたときに残っていたアポ要件は以下の3つで…

・既に導入しているシステムの相談・更新手続き​
・検討したいサービスの指定販売店だった場合に、提案依頼~導入
・この支店・この方!で指名したい活動や特殊な相談​

以下の要件は、ほぼ不要となりお断りしていました。

・新規サービスの調達(提案依頼→提案→導入窓口→導入支援→保守)→前述​
・セミナーや展示会の案内​→前述
・困りごとが発生した場合の最初の相談​→前述
・契約書類の書類受け渡し​→オンライン化
・事務消耗品などの物品購入→オンライン化
・担当が変更になった場合のご挨拶訪問​→お断り(メールか電話対応)
・ちょっとそこまで来ました・定期訪問等​→お断り

あれ?いよいよ地元支店の出番がない。

3.必要とされる営業、声がかからなくなる営業

気になったので、座談会等で様々な地方や四国の情シスの方にご意見をお聴きしてみました。面白いことに、営業担当必要派と不要派で大きく意見が分かれました。そこから見えてきたことがあります。

自粛以前と以降で「情報収集方法に大きな変化はない、積極的と言えるほどのオンライン活用はしていない」と回答された情シスさんに、必要派が多い傾向がありました。この方々に共通するのが、次の点です。

・営業及び地元支店と強い信頼関係ができている
・一人情シス、またはごく少数情シスである
・営業及び地元支店が、担当企業のことをよく理解しており、過不足のない適切な提案ができている
・営業担当者が1社を長く担当しているor担当が交代しても引継が上手い(支店全体で顧客企業をフォローできている)

心当たりがあります。自分がひとり情シスで社内のIT化に立ち向かっていた頃、信頼できるいくつかのベンダの営業やSEさんたちと毎日一緒に頑張っていました。今でもその方や支店に対し、戦友のような気持ちを持っています。社外の人でありながら、情シス業務を行う仲間、情シスメンバーの一角だったのです。この方たちがいなければ、私はとても業務の手が回らず、適切な情報も得られず、導入知識も足りなかったでしょう。

リアル営業さんと二人三脚で良い活動が成立しているときは、以下の情シス業務の一部を代理店に外注化できている状態と言えるのかもしれません。

・IT戦略(その企業の問題点・課題から、必要なツールに気づく)
・情報収集(世の中にどのようなサービスやシステムがあるかを調べる)
・サービスの選定と絞り込み(コスト・用途・レベルのマッチングと評判調査を行う)
・導入時の設計・設定作業(企業状況に合わせた叩き台をより正確に作成)
・補助金・助成金等の情報収集と提案、場合により申請の支援

これらは、自社で全部行おうとするなら相応のスキルと人員が必要です。選定や情報収集を行う際は同時に複数社とやりとりするため、結構な手間と時間がかかります。これらを自社との関係が薄いベンダに一括依頼すると、IT企画等の扱いとなり別途費用が発生することも多いです。

しかしながら、地元営業さんと細かいところまで的確に説明しなくても話が通じるところまで関係を築けていれば、強力なパートナーになってくれます。つまり、情シスが少数の組織では、優秀なベンダさんがこれらの業務やフェーズを肩代わりしてくれている状態といえます。確かにこれは心強い。

自社のニーズをよく理解した提案を、良いタイミングで提供してくれて、そこから選ぶとまずハズレがなく、導入決定後もきちんとフォローしてくれる。こんな優秀な情シス員が常に社内に確保できるとは限りませんから、社外から助けて貰えれば幸運です。そして大手ベンダの本社営業が、地方の中小企業に直接提案を行うのはコスパが悪く現実的ではありませんし、狭い目的案件のお付き合いだけでは、全社最適を考慮した提案は難しいでしょう。地元同士ならではの、相手を熟知した小回りが利くリアルな関係性に強みがある部分と言えそうです。

そしてこの推察と、冒頭記載のベンダ営業部長さんからいただいたご意見は矛盾していません。
「顧客ニーズをきちんと捉え、よい関係を築けている営業担当者は、この状況下でも成績は落ちていない」とのこと。社の方針としても、オンライン営業とリアル営業をうまく使い分け、会社全体で顧客に寄り添う活動に注力されています。

これって結局、営業活動の基本な話ですね。この部分は情シス関係ないな。

さて、逆に考えると、今後必要とされない営業・地方支店というのも見えてきます。

・ユーザ企業より知識もアンテナ感度も低い
・ユーザ企業のニーズを正しく掴めない
・適切な提案を適切な時期にできない
・本部との連携が薄く、支店での前例がないと動けない
・スケジュール調整や動きが遅い
・導入する手続きだけでサポートやフォローがない(手間がかかるだけ)
・「ご面談」してもオンラインで手に入る情報を持ってくるだけ
・そもそも頼りにならない

こういう企業さんは、申し訳ないですがそーっと連絡とらなくなりますねぇ…
あとあれだ、今の時期だと「直接カレンダーお渡ししたいので、リアル対面の面談時間を下さい!5分でいいので!!」って何が何でも譲らない会社。私、その5分のためだけに在宅勤務日に出社せなあかんのですけど。

4.逆に、ユーザー企業側に求められること

地方情シスコミュニティでも話題になった重要な点です。
ベンダ側にも顧客を選ぶ権利はあるわけですから、自社も先方から評価されています。質の悪いユーザー企業にはそれなりのリソースしかあててもらえませんし、先方から縁遠くされるでしょう。「年々営業の質が落ちている」と感じる場合、自社がその営業レベルでヨシ判定を下されている可能性があります。加えて地方では、ベンダによる「丁寧に相手する(担当営業をつける)企業」の選定が年々シビアになっているという話もあります。相手に何かを求めるのであれば、ユーザー側も選別されているという自覚を持ち、パートナーとしての姿勢や質を高める努力が必要だと思います。いい営業さんに恵まれていても、情報収集や勉強は要りますよね。

5.まとめ

今後オンライン商談が発展しても、情シス担当者不足の企業や地方にとって、リアルな関係の営業は必要で、需要がありそうです。では、選ばれるリアル営業と地方支店とは。理想像について、事例やご意見も含め自分なりにまとめます。

・オンライン時代でも揺るがない付加価値を持つのは、地元距離感&小回りを活かした「IT企画力、コンサル力、ITコーディネート力、設計導入フォローの直接支援」という機動力×支援スキル領域×商社的な手配力を持つ営業&支店
・このような方々と信頼関係を築ければ、情シスメンバーの一角とも言える活躍の恩恵を受けられるはずです
・一方で、これだけの高い要求をしつつ対等なパートナーでいたいなら、ユーザー企業側も相応の質を保つ努力と姿勢が必要です

この両者がうまくかみ合えば、この状況下でも今まで以上の関係と成果を生み出せるに違いありません。

今回いろいろな方のお話を聴き、新たな視点や事例に出会い、自分の考え方を広げることができました。初心に返って、自社だけで頑張ろうとせず、並走してくれるベンダさんも頼りながら課題を乗り越えていこうと思います。

今日は情シスSlack産みの親、yokoyamaさんのアドベントカレンダーの公開日でもあります。ぜひそちらもどうぞ!


corp-engr 情シスSlack(コーポレートエンジニア x 情シス)#1 Advent Calendar 2020