理系になりたい人生だった

最近「ハーパー生化学」っていう、世界中のその道の学生さんの通学カバンを一昔前の不良の鉄板仕込んだ喧嘩カバンくらい重たくしておきながらしかしそんな分厚い本で勉強するような学生さんってカバンを武器に喧嘩したりは多分あんまりしないのでただただ肩こりの原因になっているだけのものすごい分厚くて重くてデカい本を頑張って読んでいます。

イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書30版 - 丸善出版 理工・医学・人文社会科学の専門書出版社

こんにちはド文系です。

長野まゆみさんの小説とか、Plastic Treeの音楽とかで、「天球儀」「フラスコ」「希少鉱物」「剥製」とかなんかそういう感じの耽美な理科モチーフに強く憧れ、高校の入試で「私は樹木医になります」と言って「へえ〜なんそれ珍しいね」と言われて受かって理系カリキュラムを組みましたが落ちこぼれました。

なんなん、あれ。ベクトルとかなんなん？　サインコサインタンジェントとかいまだに何にもわかってない。真面目にやっても2と5を読み間違える人間ことわたくしは数学IAで100点満点中17点をとり、「教壇の目の前の席に陣どってガチで勉強してこれかよ」となり、ぜつぼうしました。つまり、希望がない。

けっこう本気で理系を目指したんですけど生物学系の実習もマジで無理でした。先生がビニール袋に解剖用の牛の目玉をいっぱい入れて持ってくんの。「倫理倫理ー！！生命倫理ー！！」って思うんだけどごめんおれビーフ100%ハンバーグ食ってたわ、人生。優しい人ぶって本当はシンプルに実習が無理なだけだった。

あとなんか「自分の口の内側の粘膜の細胞をちょっと取って染色してプレパラートにして顕微鏡で見る」とかもやんの。あれ、何？　ひとのいないとこでやらせて！！！　むり！！！！　なんで他者がいる空間で自己の細胞をプレパラートにできるの！！！！　なんでそんなに安心し信頼してるの他者の存在を！！！！　でも他の人がいないところでだったらちょっと見たいな、おれの細胞。わあちゃんと核あるね。ここに遺伝子が入ってんの？　二重螺旋構造なの？　共有結合しちゃってるの？　共有結合だって！　なんでこんなに理科用語って清潔に冷たくて結晶的でロマンチックなの？

……そんな感じで気が散って何にも集中できなくって中学レベルの連立方程式も解けなかったので、「気が散る」という特性を「発想がふくらむ」という方向に活用できる職業、文筆業に就きました。

でもやっぱりお仕事で書く文章で理系モチーフを使いたくなるんだよね。カッコいいもん。なんか。理系のものって。なんか。世界の真理に迫る感あるじゃん？　理系の知識があると物語をつむぐ力も強くなる気がする。手塚治虫さんなんて理系の知識があるからブラックジャックを描けたわけじゃん、例えば。

ああカッコいいなあ。今でも理系に進んでいた場合の人生を夢想します。なんか、なんとか研究所！　みたいなところで、シャーレにガラススポイトで、何かをしとっと垂らして、「ほう……？」とか言いたい。もうこの時点で理系についてのイメージが薄い。だめです。

だめなのですが、まあなんとか、ね、今んとこ、まだ生きてるので、こう、やれることはやろうかなと思って、ね、読める本ばかり読んでないで、たまには、読めない本に挑んでみようと思い、ハーパー生化学を読み始め、そして、各章のまとめ問題みたいなところが全く解けずに「これ大学新一年生が読むってことはつまり19歳とかそんくらいの人がもう解いてるってことだよね……？」となったりしているのでした。

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