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『ことばの向こうに旅をして』 〜旅と言語と異文化交流

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カタコトだって、ことばはことば。国は違っても、人は人。まあるい地球のあちこちで、互いの言葉が通じないまま、それでも「わかりたい」気持ちで対話を続けた経験をつづるエッセイ集。202… もっと読む
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「今、旅の話なんて読んでくれる人がいるわけない」と病んでました(笑)

「今、旅の話なんて読んでくれる人がいるわけない」と病んでました(笑)

Q. 新刊『ことばの向こうに旅をして』は、牧村さんがnoteで公開していた2本の原稿が元となっています。どうして、「わかりたい」というタイトルで、ことばと旅をテーマに文章を書いていたのですか?

それは、争いをやめたいからです。

私は、昔の人がどんなことを考えていたのかを知るのが好きで、よく古い本を読んだりするんですけど、ある本(※)の中で、明治時代、国際通信のための電信線が海底に引かれた時に「

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羽田と成田を間違えたけど間に合った話

羽田と成田を間違えたけど間に合った話

「羽田 成田 間違えた」

これで検索していらした方、お気持ちお察しします。
めっちゃ焦るのわかります。まずは、深呼吸してください。
どうすればいいか、最初に手短にまとめます。

以上です。幸運を祈るぜ。グッドラック。

ここからは、今まさに羽田と成田を間違えて「うわあ間に合うかなあ」と思いながら移動している人が車内で気を紛らすための経験談です。

リアルです。実際わたしは今から1時間ちょい前に羽

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ベッド・アンド・バッドガールズ

ベッド・アンド・バッドガールズ

「どうして……どうして全部壊すの!?」

 彼女は叫んだ。大麻を吸った。カリフォルニアでのことだった。

 叫んだ彼女のほんとの名前は、ここに書いたらまずいと思う。彼女はトルコ人だ。トルコ語の名前を持っている。その名前が日本語でも馴染み深い響きだったので、わたしは、彼女にこう言った。

「わあ、×××さんっておっしゃるんですね! ×××さんって、日本でもよくある名前ですよ。わたしの小学校の時の同級

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ヘルシンキに来るつもりはなかった

ヘルシンキに来るつもりはなかった

 ヘルシンキに来るつもりはなかった。

「ご搭乗予定の飛行機は…………により…………できません」

 途切れ途切れの空港アナウンスを、なんとか聞き取ろうとするも、雑踏、反響、乗客の怒声。わかったのはとにかく、「日本に帰る飛行機が出ない」ということだけだった。
 二〇一四年十月十五日、日本航空とフィン・エアーの共同運航便。フランス首都パリのシャルル・ド・ゴール空港から、フィンランド首都ヘルシンキのヴ

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