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大企業が支える「文化」

 (こちらは8月22日に共同通信社から地方紙向けに配信された「スポーツ随想」の千種担当回第6回の記事です。内容が少し古いのはご容赦を…。共同通信社からは許可を得てnoteにも配信しています。)

 ラグビーワールドカップ開幕まであと少し。CMや町中の広告にラグビーが登場するなど少しずつ盛り上がりを見せていますが、私もドラマ「ノーサイドゲーム」を見て熱を高めています。

 「ノーサイドゲーム」は直木賞作家の池井戸潤さん原作で、大手自動車メーカー・トキワ自動車のラグビー部が優勝目指して奮闘する物語です。見所は実際のラグビー経験者であるキャスト陣が見せる迫力のある試合シーンと、ラグビー部を巡る会社経営陣の対立です。ラグビー部、さらにはラグビー界そのものを変革していこうとするゼネラルマネージャーと、コストカットのためにラグビー部を廃部に追い込もうとする取締役が毎回激しく衝突します。

 ところで、私は先日青森ねぶた祭を見に行きました。青森で気象キャスターをしていた時にねぶたに魅了され、それからほぼ毎年見に行っていますが、今年見に行って改めて思ったことがありました。

 ねぶたの制作費用は、運行団体である企業などがそれぞれ負担しています。一台のねぶたを作るのにかかるお金は約二千万円。各団体は翌年全く別の新しいねぶたを作るので、毎年二千万円がかかることになります。制作費用日本一のお祭りと言っても過言ではないでしょう。美しく勇壮な青森ねぶた祭は、こうした大企業に支えられているのです。

 企業経営においてコストカットは確かに大切です。しかしなんでもかんでもコストカットしていると、伝統のお祭りや企業スポーツなどの「文化」は廃れていくと思います。 企業のCSR活動の重要性を、青森ねぶた祭を通じて再認識しました。

神戸新聞(兵庫県)、西日本新聞夕刊(福岡県ほか九州)、徳島新聞夕刊(徳島県)、東奥日報夕刊(青森県)、山陰中央新報朝刊(島根、鳥取県)などに掲載

気象予報士 千種ゆり子

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