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「手をかけること」と「適当に」のさじ加減

ウスネオイデスの花が咲いた。

よく観察しないと見逃してしまいそうな、小さな小さな緑色の花。
エアープランツも上手く育てば花が咲く、と聞いてはいたものの、蕾にも気付いていなかったからとっても嬉しい。

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今回はウスネオイデスの花から「手をかけること」と「適当に」のバランスについて、色々と思いついたことを書いてみます。


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『ウスネオイデス』・・・空気中の水分を吸収し育っていくエアープランツの仲間。別名スパニッシュモス。よくインテリアプランツとして飾られています。

実は1度、枯らしてしまったことがあって。思っていたよりも水が必要みたい。そこで今回はかなり慎重に育てていた。

夕方になると毎日霧吹きで、たっぷり水をあげて。
風の強い日は部屋の中へ避難。
1ヶ月に1度はホウロウのボウルに水を張って、4.5時間ほど漬けてあげる。これはソーキングと言うらしい。ウスネオイデスのお風呂みたいなものかなぁ。月に1度つかりに行く、みたいな。

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(こんな感じで夕方、ベランダで水につけてあげています)

そんな風に、毎日なんだかんだとお世話をしていたから、かなり愛着が湧いている。かわいい。

それとは反対に。

山の植物は、誰かが手をかけて世話をしなくても、どんどん育つ。
場所によっては地域の人がたまに手入れをしていたりするのだけど、それも時々で、基本的には適当に放置していても、育っていく。

一斉に芽吹く樹々や草花。今は、毎日のように景色が変わる。緑が燃えるように輝いて、本当にいきいきとしている。

どちらも、とても美しいと思う。

その対比を見て「手をかけるところ」と「適当にしたほうが良いところ」についてつらつらと考えた。

どうしても自分の仕事と重ねてしまうのだけど。


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私の仕事は、まぁ、手がかかるほうだと思う。みずから手をかけにいった節も、あるけど。

ガラス胎有線七宝の作品は、1つ作るのに最低でも1ヶ月くらいかかる。もちろん1ヶ月に1つしか作っていない訳ではなくて、同時進行でいくつか作っているのだけど、工程が多い分時間がかかる。

そうやって1つ1つ丁寧に、時間をかけて作るというのは贅沢なことだと思う。ずっと、制作に対してこういう時間の使い方をしたいと思っていた。そのために20代から色々と考えてきたし、それが出来るような状態であるための努力は、惜しまないようにしたい。

でも。最近、もう一つの欲がフツフツと心のうちに湧いてきているのを、無視出来なくなってきた。思った瞬間からすぐに形に出来るというような、即興的な作り方をしたいという、欲。


今の作り方は色や模様、かたちもある程度の計算をもとに作られている。工程が多い分、どうしてもそれが必要になる。即興とは真逆の計算された進めかた。そうやって、たくさん工程を重ねて出来あがった時の喜びもあるし、大事にしたいと思っている。

ただ、それだけだと時間がかかり過ぎて、焦ってきてしまう。出来上がる頃には随分季節が進んだように感じられて、あぁ、これしか出来てない・・・って。

きっとまた、調整が必要になってきたんだ。工房に勤めていた頃、大量生産することに違和感を覚えて、今のやり方に変えていったように。


今は「手をかけて作っていく」ものと、もっと肩の力を抜いて、良い意味で「適当に」流れるように作っていくものがあると、バランスが取れる気がしている。


「手をかける」美しさを知って、「適当である」ことの美しさにも気づけるようになったのかな。そうだと良いな。

自分にとって違和感のあるものを、少しずつ手放していく作業はまだまだ続く。それがきっと、自分をより良い方向へ導いてくれると信じて。

ここからどんなものを作るのだろう、私は。


ウスネオイデスの花から、そんなことを考えました。


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さて、今日(6月5日)は二十四節気の「芒種」です。

芒(のぎ)とは、イネ科の植物の先端にある突起部分のことで、「芒種」とは芒のある穀物や、稲や麦など穂の出る穀物の種をまく頃という意味だそうです。

雨に濡れた土や草花から、身体の隅々にまで広がる良い匂いがして、「匂い立つ」という言葉があるけれど、「芒種」はそんな香りの季節だな、と思います。


二十四節気という節目に合わせて、制作のことをnoteを投稿するという試みを始めて今回が6回目。

やっぱりやって良かったなぁと思います。二十四節気というテーマを決めて書くことで、季節をより感じることが出来るようになりました。それにやはり書くことで思考が整理されていくものですね。


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庭の植物には、ところどころに蜘蛛が棲んでいて。

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もうすぐ梅雨になる。

嫌だなぁって思う時もあるけれど、時折こんなにも美しい瞬間を見せてくれる。日々の何気ないところに潜む美しいものたちに、気づける余裕を持っていたい。












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