旅する蝶 ・ アサギマダラ
旅に出たい。出来るだけ遠くに。
そう思うのは人間だけでは無いのかも…という空想のきっかけは、1匹の蝶だった。
横須賀にある小さな無人島「猿島」で、不思議な蝶と出会った。
突然、目の前に現れたその蝶は、宝石のような羽根をひらひらと動かし、目の前を横切った。
蝶を写真に撮ることはあまり無いのだけれど、あまりの美しさにバックから急いでカメラを取り出して、夢中でシャッターを切った。
羽根が、透けている。
ステンドグラスのように、セピア色で縁取られた模様。その中が、まるで水色の真珠のように輝きながら、動くたびにキラキラと光る。きれい、すごくすごくきれい、とシャッターを切りながら何度も思った。
ゆっくりと深呼吸をするように、優雅に羽を動かながらアシタバの花に留まる。
そしてほんの少しだけ蜜を吸うと、すぐにまたヒラヒラと、どこかへ消えてしまった。
なんだかすごく印象に残って、今日はこの蝶に出会うためにここに来たのかも…と興奮気味に思う。
気になって調べてみると、この蝶の驚くべき習性に心を掴まれた。
名前は「アサギマダラ」
なんと、日本から遠く台湾や香港まで何千キロも、まるで鳥のように海を渡る「旅する蝶」らしい。
浅葱色だから「アサギマダラ」なのね、と納得する。
こんなに小さな個体で、どうやって数千キロにも及ぶ渡りが出来るのか、渡の経路や越冬場所、そしてどこに向かっているのか、など、詳しい生態は未知の部分が多いという。
今回、色々調べてみたので、覚え書きとして書いてみようと思います。
アサギマダラとは
アサギマダラ(浅葱斑、学名:Parantica sita)は、チョウ目タテハチョウ科マダラチョウ亜科に分類されるチョウの1種。
平地から山地、高原まで広く見られ、ほぼ日本全土に分布している。都市部の公園などに飛来することもある。
羽を広げると10cmほどにもなり、ステンドグラスを思わせる茶褐色と、薄い浅葱色の斑模様の羽を持っている。あまり羽ばたかずに、ふわふわと優雅なに飛ぶ。好きな花はフジバカマ。
長距離を移動するため「旅する蝶」として知られる。
マーキング調査が始まる。
1980年代から、全国の有志によって、羽根に油性ペンでマーキングをして放し、次に見つかった場所を結んで移動経路を調べるという調査が開始。
大阪の「アサギマダラの会」を中心に、全国で観察組織が作られていて、大人から子供まで、夢中になっている人が多いようだ。そうした人たちのお陰でだんだん飛行ルートが解明され、毎年のように移動距離は更新されているらしい。
現在の最長飛翔距離はなんと2500キロ。
2011年の記録なので、今はもっと伸びているのかもしれませんが、私が調べた限りでは、和歌山県でマーキングしたアサギマダラが、83日後に香港で見つかったこの記録が最長のようです。
「アサギマダラの会」HP
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/kanazawa/asagi/asagi.html
どこまで行くの?
私が好きな説は、台湾からもっと先の中国大陸まで渡って、どこかに大集合する場所があるのではないか、というもの。
台湾や沖縄などの島で止まるよりも、その方が自然だし「海を渡る、それも自力で」という強さも、集合場所がある、と思うとなんだか納得が出来る。
中国ではまだアサギマダラについて研究が進んでいない、というかこの活動が認知されていなくて、実際どこまで飛んでいるのか分からないらしい。
*こちらのサイトに色々と詳しく書いてありましたので、興味がありましたらぜひ。
2020年のニュース
どうやら地域によっては、アサギマダラは秋を告げる蝶のようで。楽しみに待っている人がたくさんいるみたいです。知らなかったなぁ。
今もどこかで
私が出会ったあの蝶は今、どこにいるのだろう。
きっと本能に突き動かされるまま、自由に旅をしているはず。沖縄に寄ったりするのかな、良いなぁ。
もともと猿島は、なんとなく寄っただけの島だった。私が住む逗子市から横須賀市は近くて、よく行くホームセンターの駐車場から猿島が見えるので、いつか行ってみようと思っていた。アサギマダラに出会えたのは、あの1匹だけだったから、あの場所で出会えたのは運命だったのかも、なんて思う。
アサギマダラの渡について考えていたら、国境は人間が作った架空の線で、地球は分断されていない、丸く、繋がっている。それを感じることが出来て、心が少し軽くなった。今、自由に海外に行くことが出来ないから、余計にしみじみと感じ入ってしまう。
私が出会ったあの蝶も、今ごろ海の上を飛んでいるのかもしれない。
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