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クリエイティブな人々が作る、緩いネットワークとしての社会

クリスマスウィークだというのに、家族全員が風邪でダウン。そんな中3人の子供のうち2人が、ノロウィルスのようなものにかかってしまった。

かかりつけの小児科医も休暇中ということで、初めてバーチャル診断というものを利用してみた。

私が働くアメリカには国民健康保険というものはなくて、会社員は会社が入っているグループ健康保険に入る。月々の保険料は会社が全額負担してくれるところもあるし、何パーセントか自分が払わなければならないところもある。

保険がカバーする内容も会社が加入している保険会社やプログラムの内容による。

幸いにも私の保険には、「無料バーチャル診断」というのが含まれている。これは、医者にテレビ電話でみてもらい、処方箋も出してもらえる画期的なシステムだ。

若い人には当たり前かも知れないが、こういうのが普通にあると、「私は未来に住んでるんだなあ」と実感してしまう。昭和生まれの私には、「バックトゥーザフューチャー」の世界である。

まず、保険会社のサイトにログインして、オンラインで問診票に書き込む。そこから「待合室」画面に入って、5分くらいすると白衣を着たベテランぽいお医者さんが出てきた。

触診できるわけではないので、視覚を補うために症状を口で伝えなければいけないが、一般的な病気なら十分診断してもらえる。医者も的確な質問をしてくれて、かと言って事務的なわけでもなく、子供も安心していた。

近所の薬局までオンラインで医者が処方箋を出してくれ、診断後5〜10分たてば薬を受け取ることができる。

ぐったりした子供を車に乗せて病院に連れていって、他の病人達に混じって待合室で待つのに比べ、自宅のカウチの上で医者が来てくれるのを待っていればいいなんて、なんて便利なシステムなんだ。と、めちゃめちゃ感動した。

そして、こういうものがこれから主流になっていけば、医者ですら場所に縛られず、自分の働きたい場所で働きたいときに働くスタイルが可能になってくる。

それと同時に、より安い労働力を求めてコールセンターがオフショアにアウトソーシングされたように、同じ事が医療の現場でも起きる現実が目の前にある。

こういうのが当たり前になっていく世界で、人はどのように働いて生きていくのだろうか。この疑問は、現在子育て中の私たち親世代には他人事ではない。将来どういう人間になってほしいのかという、子育ての根幹哲学につながってくるからだ。

2029年には、上の子供は高校生だ。これからの10年、未来に独り立ちする子供に一体何を教えていけばいいのか?

私の感覚では、2020年代は個人が一つの場所や組織に縛られず、自分を武器に戦っていく傾向がますます加速すると思う。働き方は自由になるし、収入源も多元化するし、またはそれほど必死で働かなくても生きていける道が出てくるかも知れない。引きこもりでも社会貢献できるし、田舎に住んでいても、世界中の人と大きな仕事ができる。

ただ人は、人間関係を築かないと生きていけない。個人がどんどん個々の単位になっていくのと同時に、現実世界でもバーチャルでも緩くつながっていくネットワークがどんどん増えてくるのではないだろうか。これは既にオンラインサロンのような形で出てきている。

20年代には、個人が目的に合わせたネットワークに複数所属し、広く浅い人間関係のなかを漂うようになる気がする。それと同時に、現実社会での家族、近しい友人、恋人など、自分らしくいられる人間関係が深まっていくのではないだろうか。

そんな未来予想図の中で、どういった人間が幸せに生きていけるのか?私は、2つの能力が必要になると思う。それは、莫大な情報を自分なりのフィルターを使って取捨選択し、自分の頭で考えて、新しい価値を付加できるクリエイティビティ、そしてそれを相手にうまく伝えていくことのできるコミュニケーション能力である。この二つは、AIでプログラムすることがまだ難しい領域で、とても「人間らしい」能力だ。

そしてそういった能力を支える根っこのようなものになるのが、目的意識と愛情ではなかろうか。衣食住が満たされ、たいていの単純作業はロボットがやってくれる世の中になれば、人は日々の生活の苦悩や煩わしさから自由になる。だからこそ、マズローのヒエラルキーのトップである「自己実現の欲求」が満たされていく生き方をしないと幸せを感じられなくなってゆく。それはすなわち、自分がこの世界に何を残せるのか、他人のために何ができるか、考えて実行しながら生きていくということであろう。

親として子供にそういった人生の基本的な考え方や能力を教えていくのは、一大プロジェクトだ。でも私は、こういった時代の変わり目に、次世代を担う子供達を育てていけるのはとても幸せだと思う。そして私自身、これから訪れる新しい10年に、とてもワクワクしている。

#2020年代の未来予想図

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