手紙

人からもらった手紙は、全部とってある。

ささいな手紙でも。

大学時代に片想いしてた人の彼女が、就活本くれたついでに就活の助言を一生懸命書いてくれた手紙も、とってある。

嫌いだったけど。いい子だった。
あの助言を全然大事にしなかった私の方が、よっぽどイヤな奴。

わたし、過去は全部黒歴史といっても過言ではないくらい、あんまり思い出したくないこと恥ずかしいことが多くて、自分のこと無価値な人間だと思ってた時期もあったけど、

子どものころから、大なり小なりもらった手紙をずっと保管しておくと箱にいっぱいになってて、

手紙というのはメールやLINEと違って、手間がかかるぶん同じ内容でもおもたくて、その人の選んだ筆記具と色と筆跡から、その人の人柄表情感情愛情が、何年経ってもあふれてて、

私はこんなにいろんな人からたくさん愛された人間なんだって思える。

一度にファンレター100通もらおうと、
時間差で30年かけて、もらった小さい手紙を100通集めようと、
死ぬときは一緒のような気がする、確かにこの人達に想われた瞬間が人生のどこかにあったのだと。

手紙をくれた人が、私に手紙を書いたことはもちろん、私の存在すら忘れてしまっていても、
それがどうした、私は忘れない。

いや忘れるけど、この手紙でときどき思い出す。

おじいちゃんおばあちゃんがお小遣いやお年玉をくれた時のポチ袋も保管できる限りとってある。

肉筆で、私の名前が書いてある。

去年、大好きおばあちゃんに最後の手紙を書いた、いつも私の味方をしてくれてありがとう、私もばーばみたいな強くて優しい女性に絶対なるので、これからも見守っていてください。

あのときの決意はおばあちゃんと一緒にずっと私を見守ってる。

私は死ぬ時、生涯のうちでもらって保管してある手紙全部を一緒に焼いてほしい。