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文章をあと一歩磨き上げるための20のチェックポイント

先日、ある方のビジネス系の生原稿を手直しをご依頼いただいたのだが、自分が何を意識して文章の「良い悪い」を判断しているかを見つめるきっかけになった。その作業工程に、ある種のメソッドが見出せそうだったので、汎用性の感じられる部分を備忘録としてここに残しておこうと思う。自分の文章を最後にもう一歩磨きたいときのお役に立てれば嬉しい。なおここに書いたのはあくまで単独文の表現についてのみで、また個性や味わいを演出するテクニックは記載していない。つまり文章全体の構成や、世界観の表現とは別の話。

文章を一旦書き上げたら、「初めて読む人」の気持ちで客観的に、声に出すように読んでみる。そしてスムーズに読めるか、意味が入ってくるか、主旨が伝わるか、読んでいて気持ちいいかなどを検証する。どこかで引っかかったとしたら、以下のポイントでチェックしてみると、ある程度解決すると思う。

その1●誤字、脱字がないかチェックし、あれば正す。

その2●表記のゆらぎ(漢字の使い方など)がないかチェックし、統一する。
バラついていると読み手はそこに意図を感じ、スムーズに読めなくなる。「聞く/聴く」、「子供/子ども」など。「〜するとき/小学校の時」など、特定の時刻や時期の場合は漢字、「もつ/持つ」「〜していく/〜に行く」「なか/中」「うえ/上」など、副詞的使用法はかなに、実際の動作や実際の位置の場合は漢字にするなどで使い分けるケースも多い。また「するほうが/する方(かた=人)が」など、両方に取られかねない表記は、読み間違いを避けるために使い分けるケースもある。いずれにせよ明確な意図をもって使い分けること。

その3●同じ意味で用いている単語に対して、複数の単語を使っていないかチェックし、あれば統一する。
「聞き手/相手/お客様/お客さん」、「先生/教師/指導者」など。(替えるなら明確な意図をもって)。2と同様、バラついていると、読み手は無意識のうちにそこに違いを見出そうとし、不必要な情報として引っかかったり、文章理解がぼやけていく。

その4●「○○や△△」と併記した表現を再三使う場合、その順番が入れ替わっていないかチェックし、あれば揃える。
その2、3と同じ観点。

その5●3つ以上の名詞や動詞を並列させる場合、その並び順が適切かどうかチェックし、整える。
例えば体のパーツなら上から下へ、要素の具体性にばらつきがあるなら具体的なものから抽象的なものへ、また並列の1要素が短いものから長いものへなど、読み手の思考の流れがスムーズになる並び順を意識する。

その6●敬体・常体の統一ができているかチェックし、整える。
リズムをつけるために部分的に混ぜてもいいが、明確な意図をもって。

その7●文末の言い回しが重複していないかチェックし、あれば変化をつける。「〜と思います」「〜なのです」「〜ではないでしょうか」「〜と言えます」「ということ」など。

その8●主語と述語の係り受けが正しくできているかチェックし、ズレていれば修正する。
特に複数の情報を併記しているときや長い文など、案外途中で変わってしまっているもの。

その9●敬語が頻出していないかチェックし、極力削る。
特に、企業から消費者への文章や、サロンや講師からお客様や生徒に向けた文章には、敬語表現が多くなりがち。丁寧語はともかく尊敬語、謙譲語は、敬う相手に向けた動作の場合でも最小限に、それ以外の登場人物に向けた動作や自分の動作の場合は、できる限り排除する。これも、伝えたい情報を際立たせるために余計な情報を極力減らす意図。

その10●主語、目的語がわかりにくくないかチェックし、省略していれば必要に応じて補う。
誰の行動か、何をするのかなどがわからなくなっても、読み手が推測してくれることはほぼなく、ただ「わからないつまらない一文がある」と感じて読み飛ばすだけ。

その11●主語や目的語がわかりにくくないかチェックし、動詞と離れすぎていれば動詞の近くに移動する。
これも10と同じで、読んでいて最後の動詞に辿り着いた頃、「誰が」「何を」するのかがわからなくなっても、読み手はその主語や目的語を探しに文頭に戻ってくれることはほぼない。

その12●読点の「量」と「位置」を調整する。
読点が少ないと、読みにくかったり、主語や述語の構造がわかりにくかったりする。実際に読むうえで切る場面だけでなく、構造を理解しやすくするために打つ読点もある。視覚的に空間を作るために打つ読点もある。例えば主語のあとに長めの文章がくる場合、主語の後で打つ、主語が文章の途中で出てくる場合、主語の前で打つ、複数の単語が並列される場合できるだけ並列のレベルが整うように打つ(打ったり打たなかったりすると読み手は混乱するので、全く打たないか、全て打つか、最後の表現の1個手前だけ打つかルールをつくる)など。いずれにしても明確な意図をもって。

その13●同じ単語を前後2、3行で重複して使っていないかチェックし、あれば別の単語に置き替える。
特に形容詞や副詞、「さらに」「また」「よく」「確かに」「やはり」「改めて」「など」などは重なりがち。意図的に重複させている場合は除くが、明確な意図をもって。

その14●指示語が頻出していないかチェックし、削れるものは名詞に置き替えたり、指示語に名詞を添えたりする。
指示語が頻出すると、その指示語が何を指しているかわからなくなる。また指示語は読み飛ばされることが多いので、しっかり伝えたいときは言葉を補ったほうがいいケースが多い。「それが」→「その体験が」など。

その15●かなと漢字のバランスをチェックし、整える。
漢字の熟語は目に飛び込みやすいので、重要な単語は漢語にしたほうがいいが、漢字の熟語が頻出すると堅苦しい印象になったり、人肌感がなくなるリスクもあるので、適宜ひらがなの単語に置き替える。一方、重要な単語の前はかなだけにしておくことで、読み手の読むスピードをスロウダウンさせ、次の単語が読み飛ばされるリスクを下げたり、次の単語が目に飛び込みやすくする効果がある。文末に余韻をもたせたいときも、漢字から大和言葉に置き替えることで読み手が句点にソフトランディングできる。視覚的な柔らかさや際立ち加減、一語を読むのに要する時間など、さまざまな効果を意識しながら選択を。

その16●かなが続きすぎていないかチェックし、あれば読点を打ったり漢字の熟語に置き替えるなどして整える。
かなは、ひと目で意味を理解するのが難しいため、読み飛ばされやすい。視覚的にかなの連続が中断できるよう、多少意味が変わったとしても、漢字の単語に置き替えたほうがいい場合もある。「そんなときはいつもくよくよしてしまう」→「そんなときは、いつもくよくよしてしまう」「そんなときは、いつも落ち込んでしまう」「そんなときは、いつも憂鬱になる」など。
なお、上記の逆で、漢字が続きすぎている場合も同様に読みづらく読み飛ばされることがある。読点を打ったり、大和言葉に置き替えるなどして調整を。

その17●不必要に長い言い回しをしていないかチェックし、必然性のないものは削る。
「〜を楽しむことができました」→「〜を楽しめました」、「〜というものは」→「〜は」、「〜していかなくてはならない」→「〜しなくてはならない」「〜すべき」、「〜と言わざるを得ません」→「〜です」など。

その18●類似した内容の文を繰り返していないかチェックし、あれば1文にまとめる。
別の表現に言い替えて強調したつもりで、ほぼ同じ内容を繰り返し書いていることがある。離れた場所で同じ内容を繰り返してしまっていることもあるので、注意。

その19●謙遜や、保険をかけるような前置き表現がないかチェックし、極力減らすか、端的な表現に置き替える。
「皆さんはもうすでによくご存知かもしれませんが」「こう言っては詭弁かもしれないが」「私のように経験の浅いものがこんなことを言うと何を偉そうにと思うかもしれないが」など。書き手の人柄を伝えることが主目的の文は別として、通常、情報量が増えることで本来の主題が隠れてしまうので。

その20●不必要な描写や説明がないかチェックし、極力減らす。
例示したエピソード中の出来事や登場人物について、例示目的から離れた詳細な情報があると、19と同様、情報量が増えて、読み手が「なんのためのエピソードなのか」を捉えにくくなる。

20個に達したので、これでおしまい!
まあ上記の要素も、文章の愛嬌として生かすこともできるので、絶対ダメなものでは決してありませぬ。また、洗練されすぎない緩やかな文章を、おしゃべりみたいに読むのが楽しいこともあるので、そのときどきの文章の目的に応じてご活用いただければ。

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