珈琲とプリンと祖父と時間

最寄からバスで30分。
綺麗に整理された自然のある街のなかに
父方のおじいちゃんは住んでいます。

近くのセブンでコーヒーを2つ、やわらかいプリンと、私が好きなアイスを買います。(プリンにするか、アイスにするか、杏仁豆腐にするかを決めるのがとてもむつかしく時間がかかります。)
そして、こぼさないようにしっかり持って会いに行きます。

昔は一緒にランチしたり喫茶店に行っていたのですが、おじいちゃんは年でもう歩けなさそうなのです。だから歩ける私は時間を作ってせっせと会いに行きます。

私とおじいちゃんは何やらたくさんのことを話しています。本当にたくさんの大切なことを話していますが、お互いよく忘れます。

おじいちゃんは年だからナチュラルに忘れてしまうし、私はぼーっと聴くのが基本スタイル。

でもこうしてせっせとお喋りしに行く理由は、
おじいちゃんの笑う顔、思い出そうとする顔、怒る顔、目の色、岩みたいな爪、プリンをもつ手、ゆっくりとした動き、コーヒーとお菓子のいいにおい、斜めに入るお日様、遠くをみつめる時間。が好きだから。

とくにいちばん好きなのは、おばあちゃんの話をするときのおじいちゃんのお顔です。
あれは、恋する少年の顔です。そう見えます。
とてつもなく、なつかしく、嬉しそうなのです。

そんな時間がだいすきです。

大切な人とお話しするとき、その人の過去に「おじゃまします」をして、なにも語らずに「おじゃましました」をするという心持ちでいるのも、なかなかよきものだと思いました。

そして、そちらのほうが意外にも、大切なことは覚えていられるものです。そんな気がします。

おじいちゃんは私のすきな時間の先生です。

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