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BROCKHAMPTONはいいぞ!vol.16 ライヴ予習(最終回)

こんばんは、BROCKHAMPTONヤクザのナカジです。
8月12日、BHのメンバーが日本に到着しましたー!!!!って早くね!?!?!?!?まだライヴまで3日あるけど???
ヘッダーの画像はRomilのインスタストーリーから拝借しました。
メンバーのSNS見てると、今日入国して早速原宿界隈をウロウロしてるようですね。
Domは原宿のナイキ前、Jobaは神宮前交差点近くの路地裏の画像を上げてました。

15日の単独までは時間もあるので、時差ボケや長距離移動の疲れもしっかり調整して最高のステージを見せてくれそうですね。
あとこれは私の推測ですが、東京で何かしら新作「GINGER」のビデオを撮っていくんじゃないかと予想しています。
これまで「New Orleans」はオーストラリアのシドニー、「San Marcos」はメルボルン、「I Been Born Again」はドイツ・ベルリンと、いずれもツアー先で時にファンを交えて撮ってますからね。
新木場の単独公演でライヴシーンを撮るとか、もしくは東京のどこかでゲリラ的に撮るとか、そういう可能性は充分あると思います。
エキストラ募集あったら参加できるように15、16の予定は空けてある私です。

さて、それではライヴ用予習もいよいよ最終回です。
残る3曲をやっちゃいましょう!

●SUMMER(Saturation Ⅱ収録)

「SUMMER」は実質Bearfaceのソロ曲です。
2018年まではギターを弾きながら歌ってましたが、2019年に入ってからはギターなしで歌ってるケースもあります。
2019年夏のツアーでは最初の方でやった日もあったんですが、7月入ってからはやってない日がほとんどのようです。
サマソニでもやる可能性は低そうですが、単独ならもしかしたらやるかも?
歌詞は「You know that you should be my boy / Oooh, yeah, yeah
In the heat of the summer / You're so different from the rest / You know, you know, you know, oh-oh」と、ごくシンプルなこの4ラインを繰り返しです。
Bearfaceと一緒に歌うもよし、彼の声にうっとりするもよし。

ところでこの曲の歌詞、「私の彼氏になるべきってわかってるでしょ」と歌っているわけなんですが、主人公が男性か女性かは明らかにされていません。
個人的には夏のボーイズラブソングっぽくてとても好きな歌詞です。
が、Bearfaceはゲイとは明言していません(以前一度Kevinが「俺はBHで唯一のゲイメンバーだ…いや、Bearfaceもそうだって」とツイートしたことがありますがおそらくジョーク?)。
まあ別に真相を知りたいとも思わないし、それでこの曲の価値が変わるわけでもないんですが、ちょっとミステリアスな謎を残す素敵な曲であります。
生で聴けたら嬉しいなあ。

●San Marcos(iridescence収録)

上のライヴ動画は冒頭が少し切れてしまっていますが、昨年のツアーでの雰囲気はつかめると思います。
椅子に座ってしっとりとパフォーマンスしていますね。
この曲の合唱ポイントはクライマックスの「I want more out of life than this / I want more, I want more」です。
単語数も少なくスピードもゆっくりで超簡単パートなのでぜひ覚えてください。
各メンバーのソロパートで歌ってるファンも多いですが、正直この雰囲気ならソロパートは大合唱よりそれぞれのパフォーマンスをじっくり聴いた方がいいのではと思います。

ところでこの曲名の「サンマルコス」ですが、テキサス州の地名です。
vol.1のグループのバイオグラフィでも書いた通り、Kevinを中心にBROCKHAMPTONとしての活動を本格化させた彼らが最初に拠点を置いた街がこのサンマルコスという街です。
カリフォルニア州にも同じ地名の街がありますが、彼らが初期の活動に思いを馳せてテキサス州の街から名付けたと考えて間違いないかと。

この曲にはMerlynのパートがないのですが、彼はBHがサンマルコスからLAに再び拠点を移した時に加入しています。
つまりサンマルコス時代はグループに正式参加していないんですね。
それが彼がこの曲でパフォーマンスしていない理由ではないかと思います。

個人的にこの曲が気に入ってるポイントはDomが「Vibranium」という単語を使っていることです。
「Vibranium」はヴィブラニウム、2018年公開の映画『ブラックパンサー』をはじめとするマーベル映画に度々出てくる物質の名前で、世界で最も硬い金属とされています。
アフリカ系アメリカ人のアイデンティティに大きく響いた大ヒット作品の中からヴィブラニウムという単語を拝借して、「ヴィブラニウムより強くなれたとしても、俺が脆くないってわけじゃないんだ」と、決してパーフェクトにはなれない自己の内面を表現しているわけです。
こんなのマーベルオタク的にグッと来ちゃうじゃないですかー!
はあDom……好き……(15回目くらいの再放送)

●Tonya(iridescence収録)※8月13日追記

今回の来日でやる可能性は低いと思いつつ、好きな曲なので願掛け的にプレイリストに入れてたんですが、なんと今回の来日に音源でゲストコーラスを担当しているRyan Beattyが同行していることがわかりました(メンバーのインスタストーリーに写ってます)。
Ryanは「Bleach」にも参加していますので、今回の単独とサマソニで「Bleach」とこの「Tonya」をプレイする確率は高いです!
とは言え、この曲は合唱するよりじっくり聞きたい曲なので、ここでは楽曲の背景についてまとめておきます。

まずタイトルの「Tonya」ですが、Kevinの歌詞にもある通りこれは2017年制作の映画『アイ・トーニャ 史上最大のスキャンダル』から取られています。
1990年代にライバル選手に怪我をさせるというスキャンダルを起こしたフィギュアスケーター、トーニャ・ハーディングの実話に基づく物語です。
トーニャをそういった行動に駆り立てた存在として、娘の人生を支配するスパルタ母親が印象的に描かれています。
実際に日本でもかなり話題になった事件でもあり、私もこの時の騒ぎはなんとなく覚えてるので、30歳以上なら記憶してる方もいるのではないでしょうか。

で、この曲のテーマは大きく2つ。
一つは初期からのメンバーだったAmeerが女性問題を起こしてグループ追放となったこと。
そしてもう一つが「親と自分」です。
「iridescence」の収録曲はほぼ全てロンドンで制作されているんですが、この曲だけは例外で、ハワイで制作されています。
なぜハワイなのかと言うと、Ameerの一件があってからBHはニュー・アルバムの制作を一旦ストップし、ハワイにヴァケーションに行ったから。
Kevinの「I feel like brothers lie just so my feelings don't get hurt / I said, I'll try vacationing, I'll try to run away」という歌詞が、まさにそのことを表しています。

ちなみにこの時ハワイで撮られた写真や動画は、この後のシングル群のジャケ写になったり、ライヴ中に背景で流れる映像として使用されてます(1999 WILDFIREのジャケがまさにそれ)。
来日公演でも見られるかもしれません。

そして二つ目のテーマについて掘り下げていきましょう。
Kevinは自身のリリックで「My life is I, Tonya」と書くことで、「mother」という言葉を使わずに、自分と彼の母親の複雑な関係を表現しています。
「Junky」の曲解説にも書いたように、自分がゲイであるという告白が母親に受け入れられなかった哀しみと、それでも母親に認められたいと願っていた彼の葛藤が見え隠れします。

この曲のトップバッターはBearfaceです。
彼はアイルランド出身でアメリカ国籍者ではないので、きちんとしたビザを取得できるまでは観光ビザで何度もアメリカに出入りしていました(本当はダメですが……今はちゃんと芸能活動ができるビザを取れているそう)。
90日間アメリカに行って活動してはアイルランドに戻ってきて、またアメリカに行って戻ってくる……ということを繰り返す自分のことを母親はすごく心配していたと、彼はのちに語っています(そりゃそうだ)。
この暮らしを続けて音楽で食ってく道が拓けるのか、そういう不安があった頃の気持ちを綴っているように感じます。

Merlynのリリックも視点は似ていて、父親には「勉強か金になる仕事をしろ」、母親には「こんなこといつまでも続くわけない」と言われたことを述懐していますね。
Merlynの家族はガーナからの移民で、彼がアメリカに来たのは3歳のとき。
ガーナでは主に農業従事者の貧困問題が深刻で、より良い暮らしを求めてヨーロッパやアメリカに渡る移民が多いとされています。
余談ですが「Am I Wrong」が大ヒットしたノルウェーのユニット、Nico & VinzのVincentもガーナからノルウェーに逃れた移民の息子で、アルバム「Black Star Elephant」には母親の貧困体験を綴った曲があります。

そんなわけで、両親は息子Merlynにきちんと勉強して確実に稼げる仕事に就いて欲しかったのでしょう。親の気持ちとしては真っ当です。
ところが彼は成績不振でテキサス州立大学をドロップアウトしたのを機に、BHに加入して音楽活動をスタート。
つまりMerlynは、堅実に生きろと望む親の期待に背き、仲間と一緒にミュージシャンとして成功を目指すというアメリカン・ドリームを選んだわけです。
Merlynパートの後に「Somebody's gonna have to tell the truth and I'm gonna tell it」という声が入っていますが、これは子供の目を覚まさせようとする親の言葉と考えると自然な気がします。
「バカな夢を見るのはやめろ、お前がわからんから言ってやってるんだ」的な。
仮にその後の自分が成功したとしても、自分の可能性を親に信じてもらえなかった記憶って子供にとっては結構強く残りますからね。
BHでは末っ子的というか、ちょっとおちゃらけキャラを演じることが多いMerlynが、そんなほろ苦い記憶を綴ったちょっと珍しいタイプの歌詞だと思います。
ライヴで聴けたら、彼の新しい一面が見られそうなのでやってほしいな〜。

というわけで、2019年の来日でプレイしそうな全23曲を解説しました!
いやー書いてて疲れたわ。お疲れ私。
紹介した曲全部を覚える必要はないし、とりあえず自分の好きな曲を、自分にできる範囲で予習して当日のライヴを楽しんでください。
私の記事がそのお手伝いになればと思います。
ライヴの盛り上がりはシンガロングの音量が全てじゃないけど、やっぱ「この曲が好きだよ!」って気持ちを伝えるのに合唱はとても有効だと思うので。

Twitterとかでも話題になってますが、やっぱ外タレの来日公演って減ってるんですよ。
他のアジア諸国のギャラが上がって、日本に来ないアーティストが増えた。
そんな中、2019年にBROCKHAMPTONは来てくれるんですよ。
クリマンさんが大金出して呼んでくれたんですよ(たぶん)。
「日本って大したことないな」って思われたら、もう次はないかもしれないんです。
だから今回の来日で、「日本のオーディエンスよかったな、また日本でライヴやりたいな!」って思ってもらいたいんです私は。
だからどうか皆さんも単独公演行って、サマソニでBROCKHAMPTON観てくださいよろしくお願いします!!!!!!
BROCKHAMPTONはいいぞ!!!!!!

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