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ヒプマイ楽曲が引用・オマージュしてる洋楽ネタを検証してみた vol.3

こんばんは、前回の砂糖の写真がダサすぎて何かヘッダー画像にカッコいい写真はないかと必死に自分のカメラロールを探したナカジです。
ヒプマイみたいな版権モノって画像の扱いセンシティブだからね……自分で描けたらいいんですが、残念ながら文才を授かった代わりに絵の才能にはからきし恵まれなかっtアッやめて石は投げないで!

ヒプマイがオマージュしている洋楽の元ネタ解説第3回目は、シンジュクディビジョンこと麻天狼の「Shinjuku Style~笑わすな~」について解説します。
第1回、第2回を未読の方はこちらも併せてお楽しみください。

ここで紹介されている曲を聴き比べてみたいと思ったらApple Musicのプレイリストもどうぞ〜。


●「Shinjuku Style~笑わすな~」麻天狼/「Nookie」Limp Bizkit

「Fling Posse VS 麻天狼」の3曲目に収録されている「Shinjuku Style~笑わすな~」です。
洋楽の元ネタは前回までの2回で紹介した曲よりだいぶ古く、なんと20年前の曲です。
アメリカのミクスチャー・ロック・バンド、Limp Bizkit(リンプ・ビズキット)の曲「Nookie(ヌーキー)」がオマージュされています。
原曲は1999年発表のアルバム『Significant Other』に収録されていますよ。

はい、ここでリンプ・ビズキットと聞いて「ジョジョのスタンドじゃん」って思った方〜? 鋭い! そして正解!
そうです、『ジョジョの奇妙な冒険』の第6部に登場するスポーツ・マックスのスタンドの名前はこのバンドから取られています。
荒木先生がスタンドの名前に実在のロックバンドの名前をつけていることは有名だが、このリンプ・ビズキットも例外ではないのだッ!!!(ドドドド)

ではまずは歌詞に着目。一番引用と対比がわかりやすいのはサビの韻です。
原曲のサビの1ライン目が「I did it all for the nookie」なのに対し、ヒプマイの方は「手加減なんざ抜き」ですね。
「Nookie(ヌーキー)」というリリックを「抜き」という日本語に置き換えて被せています。そのあとの「カモーン!」というコールは、原曲を聴いてもらえればわかる通りほぼそのままです。

冒頭に戻って、「これがMy Wayだ ダイブやべー」というリリックがありますね。
この「My Way」も、リンプのヒット曲の曲名です。
こっちは2000年リリースのアルバム『Chocolate Starfish and the Hot Dog Flavored Water』に収録されています。

「ダイブやべー」のダイブがカタカナなのは、「かなり」や「けっこう」と同義の「だいぶ」と、ラウドロックのライヴでスタンディングフロアの観客の頭上を興奮したファンが転がる行為=クラウドサーフをかけたダブルミーニングです。日本ではクラウドサーフのことを「ダイブ」と言うのが一般的です。
実際、リンプのライブは興奮したファンによるクラウドサーフが頻発しますし、ボーッとしてると転がってくる人に頭を蹴られたりするので大変危険です。ダイブする方も床に落ちて叩きつけられるリスクあるしね。
普段ロックのライヴに行かない人にとってはダイブなんで「なんでそんなことするの???」という謎行為だと思いますが、何ででしょうね……私にもわかりません。ちなみに私も20代後半までは時々ダイブしてました。エヘ。

このリンプ・ビズキットは、1990年代後半に大ブレイクしたミクスチャー・ロックと呼ばれるカテゴリのバンドです。
ミクスチャー・ロックとは、メタルやパンクといったラウドなロックにヒップホップを掛け合わせたロックのサブジャンル。
90年代はRAGE AGAINST THE MACHINE(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)やKORN(コーン)といったミクスチャー・バンドが次々と登場してロックシーンを賑やかしていましたが、そのフォロワー的存在としてデビューしたのがリンプでした。
当時のリンプはぶっちゃけて言うと歌詞にシリアスなメッセージ性はほとんどなく、言葉遊びやお下品ネタが多いバンドでした。
それゆえティーンエイジャー、特に白人のキッズからは絶大な支持を集めたんですが……果たして寂雷先生みたいなキャラに「Nookie」のオマージュをさせてよかったのだろうかという一抹の疑問は感じますw
ちなみに「Nookie」は、アメリカ英語の俗語で「性行」を意味します。

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「Nookie」を収録したアルバム『Significant Other(シグニフィカント・アザー)』はミクスチャー・ロックの名盤の一枚として知られ、アメリカ国内だけで700万枚のセールスを記録、日本でも10万枚以上売れました。ヨーロッパやオーストラリアなどでもバカ売れしたそうなので、全世界セールスは余裕で1000万枚を超えてるはずです(当時はまだインターネット黎明期で楽曲のダウンロード販売なんてなかったので、音源を買うとなればCDを買うのが当たり前の時代でした)。
2009年のサマーソニック(日本で屈指の規模のロックフェス)では、2番目に大きいステージでトリを飾っていることからもその人気ぶりがうかがえるかと思います。

アメリカのミクスチャー・ロック・ブームは日本のバンドにも多大な影響を与えています。ロックバンドにDJがいるというスタイルも、この頃リンプが広めて定着したものと言っていいでしょう。例えばMAN WITH A MISSIONなんてまさにそうですよね。彼らもリンプに影響を受けているバンドです。

そして「Shinjuku Style」を予備知識なしで初めて聴いた時は「なんで2018年にリンプのオマージュ???」と思ったんですが、クレジットを見て納得。この曲に関わっておられる制作陣の方々、みんなリンプの影響直撃世代で、日本のミクスチャー・ロックの発展と深く関係していた方たちなんです。

まず作詞を担当しているのはラッパ我リヤのMCのお二人(Mr.Q/山田マン)。90年代から日本のヒップホップシーンで活動しているラッパ我リヤですが、彼らの曲を聴いたことがないという人でもアラサー以上ならこの曲が記憶にないでしょうか?

この曲はDragon Ash Feat.ラッパ我リヤ名義で2000年にリリースされたシングル「Deep Impact」です。チャート成績はオリコンシングルランキングで最高2位を記録しました。
この曲がリリースされた当時、私は15歳でしたが、こんなに硬派なミクスチャー・ロックの曲がチャート上位に来たのはこれが初めてだったように記憶しています。この後、2003年くらいになるとORANGE RANGEが「上海ハニー」をとヒットさせますけど、あれなんかもっとポップですもんね。
日本のヒットチャートでもラウドなミクスチャー・ロックが商業的に成功できるようになった、その端緒となったのがこの曲と言えます。

「Shinjuku Style」の作曲者としてクレジットされている安藤健作さんもミクスチャーロック界隈と関わりが深い方ですね。現在はnoTOKYOというバンドで活動されているそうですが、前歴はSmorgasに、前出のDragon Ashのツアーメンバー。Smorgasも日本で長く活動しているミクスチャー・ロックのバンドです。私も2004年と2006年にライヴを観た記憶があるけどカッコよかったなあ〜。

もうお一方の作曲者、Hatchさんについてはあまり情報を得られなかったんですが、今までどんな仕事されてる方なのかご存知の方いらっしゃいましたら詳報求む。

というわけで、「Shinjuku Style」を制作したのはおそらく世代的に30代後半より上の、リンプ直撃世代の方々。そんな彼らが自分たちのルーツとも言えるミクスチャー・ロックへの愛、そしてリンプ・ビズキットへのリスペクトを込めて作ったのが「Shinjuku Style」と言ってよいと思います。
「Shinjuku Style」ギターの音もリンプのギタリスト、ウェス・ボーランドの音にめっちゃ寄せてあるしな〜!(彼は非常に独創的なギターサウンドの作り方をすることでも有名です)

そうそう、これは完全に余談なんですがリンプ・ビズキットからウェス・ボーランドが一時脱退した時、後任のギタリストを探すために日本でオーディションを開催した、なんてこともありました。あとウェスがX JAPANに参加したり、土屋アンナのバックでギター弾いたりな……なんだったんだろあの時代……(遠い目)。ちなみにリンプ・ビズキットは今も活動していますが、90年代後半頃の勢いは失っております。スン……。

今回これでリンプ・ビズキットが気になった方はとりあえずアルバム『Significant Other』を聴いてみてください。あとはYouTubeで「Limp Bizkit」と検索して上位表示されるビデオはだいたいどれも大ヒットした曲ばかりです。

個人的に一番好きなのはこの「Rollin'」かな。英語で汚い言葉満載です。
あっでも寂雷先生も「愚かなMother F--ker」ってFワード(英語における放送禁止用語)使ってたし、やっぱりリンプに影響受けてるのかもしれません。

次回はちょっと趣向を変えて、Division All Stars「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-+」からナゴヤディビジョンのパートについて書きたいと思います。

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