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「あなたがいい」は、テンションあがる。

年末、Netflixで『日本で一番悪い奴ら』という映画を見ました。実在した北海道警察最大の汚職事件がベースの犯罪映画で、軽妙で笑えて、でもドキドキする、すごくおもしろい映画。

綾野剛さん演じる主人公諸星は、18歳で警察に入るまで柔道しかしてこなかった、年長者と話すときは「押忍!」しか言わないような素直すぎる青年で、その無垢さがあだとなり「悪い奴ら」に抱き込まれ、どんどん図に乗って、極悪人へと成り下がっていきます。

冒頭2箇所、明確に「あ、いま調子にのった!」という場面があるんです。そこでの綾野剛さんの演技がおもしろすぎて、繰り返し見ちゃったんですけど。

ひとつは、刑事になって早々に拳銃所持のヤクザを捕まえて、ピエール瀧さん演じる敏腕先輩刑事(でも悪いことしてる)に「猟師の初心者が丹頂鶴仕留めたようなもんだぞ!」と褒められるシーン(21:33)。

もうひとつは、その先輩に紹介してもらったクラブのママの家で「(先輩の紹介だからじゃなくて)あんただから寝たんだよ」と言われるシーン(25:55)。

どちらも綾野剛さんの調子にのっていく演技がすばらしいのでそこだけでも見て欲しいのですが、この2つのシーンをみてやっぱり尊敬する人から「あなただから」って言われるのはすごく気持ちがいいし、やる気の出ることだよなあと思いました。

評判の男、ぼくを買いかぶる。

昨年の秋ごろでしょうか。

とある青年がぼくのところを尋ねてきました。異業種の彼とは名刺交換をしたことがある程度の間柄で、突然の「ご相談があります」という連絡に少し驚き、同時にワクワクもしました。かねてより、自分にも他人にも厳しい友人から「あの人はすごく優秀だ」という話を聞いていたからです。ハライチの岩井さんが褒める芸人なら間違いないだろうみたいな、そういう期待感がありました。

写真で見るよりよっぽど大きい身体をゆらし、少し汗ばんでやってきた彼は、開口一番こう言いました。

「フリーのPRパーソンになります。いろいろ考えましたが、今井さんしかいません。ぼくの全売り上げの何パーセントかを差し上げるので、ぼくの人生を編集してもらえませんか?

ときに、人は人を買いかぶります。優秀だと評判の男とて、それは例外ではないのでしょう。ぼくはとりあえず、あっはっはと大笑いをしました。隣で聴いていたうちの副社長がお茶を口に含んでいなくて助かりました。初対面のお客さんの前でお茶を噴き出すのは失礼だからです。

話はこうでした。

PRのことは極めていきたいと思っているが、考えれば考えるほど「自分自身のPR」の難しさを感じる。どうしても客観性を担保することができない。これは誰かにやってもらうしかない。じゃあ誰がいいだろう。同業だと張り合っちゃうなあ。いろいろ発信もしていきたいし、そういうのも見てくれる編集者がいいかもしれない。対等に話せる、同世代か少し上がいいなあ。ぼく、どんなもの読んできたっけ……。『夢、死ね!』いい本だったなあ。『サマる技術』も勉強になった。そうだ、あれを編集した人にやってもらうのがいいかもしれない。いま独立したみたいだし、相談してみよう!

とまあこんな感じでぼくらのところへやってきてくれたのでした(中川さん、船登さん、そして星海社に感謝です)。鼻息荒く、先述のような提案をしてくれたわけなのですが、それだと、ぼくらが提供できる価値と比べてあまりに不釣り合いだと思ったので、そこは丁重にお断りし、代わりに、互いになんでも相談できる関係になろう、なんならうちの広報もやってくださいなと提案し、契約書のない業務提携のような形にして、今に至ります。オフィスもともにしています。

名前を言うのを忘れていました。その人を買いかぶりがちで豊満な身体を持つ青年の名を片山悠といいます。PR業界では「かたぷる」という名で知られた人間です。

半年近くいっしょに過ごしてきました。10回ぐらい飲んだと思います。上海出張にも一緒に行きました。深夜にオフィスで話し込むこともありました。そうして時間を共有するなかで醸成された気持ちがふたつあります。ひとつは「この人はホンモノだ」という確信、そしてそんな人がぼくに「あなたがいい」と言ってくれたことの喜びです。

片山さんはほんとうにずっと仕事をしているし(心配になるぐらい)、ほんとうにクライアントのことが好きだし(無垢すぎないかと思うぐらい)、「自分はまだまだ一流に達していませんが、同世代でぼく以上に熱意をもってPRのことを考えている人はいないと思います」と真顔で口にする凄味があります。

一同、はりきっています。

そんな尊敬するPRパーソンと一緒にイベントをやることになりました。これは、彼がこれから立ち上げるPRコミュニティの初動となるもので、編集・イベント両面から、弊社ツドイが全力でサポートしています。

PRについては、ぼくも初心者です。編集とすごく似ているところもある気がしますが、まだ全貌はつかめていません。でも、彼が掲げる「PRの概念を普及させて“関係格差”をなくす」というミッションのことは、半年一緒にいる間にちょっとわかってきました。

・自己紹介が上手になる
・互いに気持ちのよい関係を長期的に築く
・できれば、ファンになってもらう

これが彼の言う「PR」なんじゃないかと今は思っています(片山さん、違ったら明日オフィスで教えてね)。主語は企業でも団体でも個人でもよくて、自分にとって大事な人と上記のようなコミュニケーションが取れる人、それがPRパーソンではないか、と。

企業の広報職に就いている人はもちろんですが、フリーランスの人をはじめ、個人単位で聞いても価値のある話が展開されると思います。ちょっとでも気になった方がいたら、ぜひお越しください。

ホンモノのPRパーソンと、その人に「ツドイがいいんです」と言われてはりきっているぼくらとで、たのしくためになる空間(会場の永田町GRIDもかっこよくて必見)と時間を用意してお待ちしております。