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ペーパードライバーがもらった愛

そうだ私はペーパードライバー。大学一年生で免許をとったものの、運転するのは地元に帰ったときに嫌々少しだけ乗ってみるくらい。

いつか大きな事故をしてしまうのではないかと、自分の運転に対してどことなく不信感をもっている。

結論から言う、私は今回の一週間の帰省で2度も車のトラブルを起こした。

1度目はバッテリー上がり。親戚の家に顔を出そうと、妹に車を借りた。出発時間が遅れたために目的地まで辿り着けず、車内でミーティングをすることになった。酷暑に耐えられずガンガン冷房をつけていた。コンビニの駐車場でミーティングを始めたが、パソコンもスマホも何度も落ちてしまう暑さだった。せめて日陰にいこうと、近くにあったパチンコ屋の立体駐車場に停めて、引き続きミーティングを2時間ほど続けた。ようやく終わり出発しようと鍵を回すも、エンジンがかからない。ガガガという鈍い音だけで、一向に動かなかった。どうやら、エンジンをつけたまま長いこと冷房をつけるとバッテリーってのは簡単に上がるらしい。そんなの知らなかった。JAFの人には(この姉貴パチンコ屋で遊んでいたのか)なんて思われたかな、まあいい。

2度目はタイヤのパンク。同僚の先生がわざわざ地元に遊びに来てくれた。私の地元は車がないと何処もまわれないような、まあ都市とは言えない場所なので、この日も妹から車を借りていた。何もないですよ〜と話していたら、ルーツをまわろうと提案して動画を回してくれた。ここなしでは青春を語れません!と思い出の詰まった商業施設を案内したら、創業者や歴史を調べていた。変な人だけど、変って魅力。そんな人が助手席に乗ってあまりにポンポンと跳ねているので、近頃は事故防止のために道路が変わっているのかと思っていた。目的地の海辺に着いたところで、外にいたおじさんがタイヤを見て何か言っている。窓を開けて声を聞くと、(タイヤ!パンク!)と言われ、はっとした。違った、道路は変わっていなかった。助手席の人がルンルン気分で飛び跳ねていた訳でもなかった。タイヤが潰れていたのだった。

どちらの車トラブルでも、自分ではどうする事もできずに母に電話をかけた。こういうとき、ちゃんと出てくれるのが私の母なのだ。動揺を見せるも命があって良かったと安堵して、この後の手順を説明してくれた。仲介となって車屋さんや保険屋さんに連絡もしてくれた。

不甲斐ない自分が嫌になるし、車に対する恐怖心も高まった。運転は人に任せられる電車や飛行機がいいよね〜なんて都合のいい思考にも至った。

そんなときに差し出してくれた、全国の百貨店で使える商品券一万円分。母が10年も前に買ったのを大切にとっておいたらしい。

半年ぶりに帰省した娘の車運を不憫に感じたのだろう。お金はあげられるほどないからと言いその商品券を渡してくれた母から、商品券の価値以上のものをもらったと思った。愛だ。これ、愛だ、と思った。

ずっと大切に使えるものに使おうと決め、その大きな愛を受け取った。

数日後、母と訪れた幼き頃からお出掛けといえばの町にあるデパートで、前々から欲しかったマリメッコのがま口ポーチを購入した。(筆箱として使うんよね、40周年限定だって)と言いながら、緑の小花が可愛く散らばっているものにした。

ただのものじゃなく、愛が含まれている筆箱とともに、東京への帰路にたつ。

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