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ワリエワ禁止薬物検出について。彼女を批判するのはまだ不適切ではないか

ワリエワ禁止薬物検出の原因は「祖父が使う心臓病の薬」弁護士が主張

というニュースが流れてきて、ニュースへのコメントもツイッターの呟きも彼女に批判的です。

でも、待ってほしい。ワリエワ自身への批判、人格批判は”まだ”早いのではないでしょうか。この構造、僕は2年近く前の2020年5月に起きた木村花さんの報道被害(*注)に近いものではないかと思っています。確証は無いです。でも、15才のワリエワ選手が悪いとは限らない以上、少なくとも決定的な証拠が出て、彼女が批判に値するとわかるまでは、辛らつな批判は現に慎むべきだと思います。

彼女を直接的に批判している人たちは、一人の人間が無実の罪で追い詰められている可能性を認識しているのでしょうか?

そもそもロシアではドーピングが組織的

彼女がドーピングにおいて「特別扱い」を受けているように見えるのには、2つ理由があります。もちろんロシアが後ろから手を回して五輪委員会を丸め込んでいる可能性もあります。しかしいずれにしても彼女自身がドーピング主体である可能性は高くないと思われます。

・ロシアでは選手に無断で禁止薬物を飲食物に混ぜられることがある

・ロシアでは選手が政府に逆らうことは難しい

ロシアという国の持つ特別な事情として、そもそも選手の主体性が大きくない点が指摘できます。ドーピングが国ぐるみなのも異常ですが、政府批判も命取りになりかねないという事情もあります。平和な日本人からは想像できない話かもしれませんが、実際に「暗殺」というキーワードが政府の活動の中に含まれているかもしれない稀有な国です。

ワリエワ氏は板ばさみになっている可能性もある

この国において、家族親戚縁者を人質に取られているような状態で、彼女が「実はドーピングやらされていました」などと公表できるでしょうか? 最悪のパターンは、彼女が国と自身の良心の板ばさみになっている状態です。そうであるなら、今の状態は彼女にとっては冤罪です。もちろんドーピングが事実なら競技は無効です。それはそれとして、ワリエワ氏自身が悪人であるかのような批判は、彼女を追い詰めてしまう可能性があります。

現時点では、「禁止薬物の検出」という事実があるだけで、それ以上はなにもまともに公表されていません。こんな状態で弁護士の主張を信じるなんて、ちょっとお気楽過ぎますし、それでもしワリエワ氏がドーピングしたつもりがなかったのなら、批判した人たちは愚かという言葉では済まされない加害者です。

*注
木村花さんの事件は「ネット上の誹謗中傷だけ」ピックアップされていますが、別の可能性もありえます。実際には脚本による演出(ヤラセ)であるにもかかわらず彼女が悪人であるかのように放映され、にもかかわらず契約の守秘義務で「ヤラセです」とは言えず、放送局が庇ってくれなかったという、構造的な冤罪ではないかと思っています。つまり、彼女はネット上では悪人として批判され、しかし契約によって言い訳もできないという板ばさみではなかったか、という解釈です。

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