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どうすれば、オンラインで『参加してる感』がある場をつくることができるのか?

こんにちは、ゆーのです。

自己紹介↓

対話と場づくりの人。散策者によくいます。東京大学物理工学科。ワークショップ企画運営の軸に《場のゆらぎ》を据えています。関心キーワードは現象学、組織文化。最近はもっぱら、オンラインにおける対話の可能性と限界について考えています。Twitterはこちら


このシリーズは、その名の通り「オンラインにおける対話」について考察をするという企画です。毎月6日に考察をまとめたnoteを公開しています。ちなみに、これまでの記事は以下のリンクから見ることができます。



「参加してる感」を感じにくい、オンラインの場

今回扱いたいテーマは、「どうすれば、オンラインで『参加してる感』が生まれるのか」です。


ちょうど4ヶ月前に緊急事態宣言が発令されて以降、多くのイベントやミーティングが「オンライン開催」になりました。

私も多くのオンラインイベントやミーティングに参加してきましたが、1つだけ、気になるデメリットがあります。それが、オンラインの場では「参加してる感」が感じにくい、という点です。

皆さんも、これまでオンラインでのイベントやミーティングに参加して、こう感じたことはないでしょうか?

「なんだか集中できないなぁ」
「イベントの流れについていけない」
「終わったあと、虚無感がある」

また、皆さんがイベントやミーティングを主催している側ならば、逆にこんなことを感じたことがあるかもしれません。

「イベントが思ったより盛り上がらない」
「聞いてくれているのかわからず、不安になる」
「双方向な感じにしたかったのに、自分だけが喋ってる」


この記事では、これらの問題が「オンラインの場では『参加してる感』を感じにくい」ことによって生じていると考え、その解決方法を探ってみます。



変化した「参加」の定義

少し思い出してみましょう。自粛期間以前、そもそも私たちはどのようにイベントやミーティングに「参加」していたのでしょうか?

きっと、それらの多くが対面で開催されていたはずです。そして、私たちはそこに「行く」ことで場に参加していました。

過去にあったイベントやミーティングを思い出すときも、「ああ、〇〇(地名)であったヤツね」などと、場所に紐づけて想起されることが多いのではないかと思います。


実はこれこそが、オンラインの場において私たちが「参加してる感」を感じにくい理由です。以前の私たちにとって、「参加」の定義は「その場に行く/居る」だったのです。

オンライン開催のイベントでは「その場に行く」ことも「その場に居る」こともできません。以前のような「参加」の仕方がもはやできなくなった、という点で、現在の私たちは「参加してる感」を失ってしまっている状態なのです。



仮想「空間」は、「場」にならない

もちろん、イベントの主催者側の多くは、早い段階で、この「参加してる感」が薄いという問題を把握していたはずです。

そして、その対策方法の1つがオンライン環境への「空間の導入」でした。SpacialChatや、Remoが良い例でしょう。空間を導入することで、「その場に行く/居る」という、以前と同じような「参加してる感」が感じられるよう、工夫をしたのです。


しかし、この工夫で私が難点に感じているのは、「空間に居る」感覚が「場に居る」感覚に発展しない、ということです。

たしかに、部屋や空間をイメージさせる背景画像を用意して、そこに「私」のアイコンを表示させると、あたかも「空間に居る」かのような感覚は生まれます。

ただ、そうやって「空間に居る」感覚を作ったとしても、それが「その場に居る」感覚にはなりません。

その絶対的な原因が、パソコンのスクリーン画面です。

画面に分身(アイコン)を配置することで「その場に居る」感覚を感じてもらおうとするこの工夫は、むしろ「『パソコン上の私』を見つめる、『リアルの私』」という構図を生みます。

つまり、画面上に空間やアイコンを用意しようとすればするほど、(リアルの)私たちが「その場に居ない」ことが、明確に感じられるようになってしまうのです。



新しい参加の定義

それでは、場に居ることができなくなった私たちは、どのようにオンラインで「参加してる感」を感じることができるのでしょうか?

ここで考えてみたいのが、以前の「その場に行く/居る」ではなく、オンラインの場では、参加の定義を「関わり続ける」ことと置き直してみることです。


この置き直しは唐突に思えるかもしれませんが、そうではありません。実は、私たち自身、自然と、オンラインにおいては「参加」=「関わり続ける」ことと認識しているのです。

1つ例を取り上げてみるとわかりやすいので、次の状況を想定してみてください。

たとえば、あなたが大学生だとして、自宅でオンライン授業を受けているとします。昨日は夜遅くまでzoom飲み会があったことと、教授のtenderボイスが相まって、あなたは授業中にこくりこくりと船をこいでしまいました。

かなりの睡眠不足だったため睡魔は酷く、きっと対面授業であってもあなたは教室で寝ていたしまっていたでしょう。

さて、ここで1つ質問です。

授業が終わった直後に、友達に「授業には参加したか」と聞かれたら、皆さんはどう答えるでしょうか?

仮にそれが対面授業で、あなたが教室で寝てしまった場合は「少なくとも行きはした(どちらかというと参加した)」と言うことができます。しかし、それがオンライン授業で、家で寝てしまった場合はどうでしょう?「寝てしまっていた(参加していない)」と答えるのではないでしょうか?

ここからも、オンラインの環境においては「その場に居る/行く」という旧来の「参加」が通用しないことがわかります。

そして逆に、どういう場合に「授業に参加した」と言えるのか、というと、オンライン授業においては、授業を聞いてメモを取ったり問題を解いたりしてはじめて「参加した」と自信を持てるのではないでしょうか?

授業を聞く、メモを取る、問題を解く。

これらがまさしく、「関わり続ける」ことです。「その場に居る/行く」ことができないオンラインの場では、聞く/見る/するという「関わり」を続けなければいけないという、不断の努力の末にはじめて「参加」が可能になるのです。

このように、その場に居る/行くことができないオンラインの場では「関わり続ける」ことが「参加」の新しい定義となります。*

「関わる」だけではなく「関わり続ける」ことが求められているという点から考えると、オンラインの場においては「参加」のハードルが上がっている、ともいえるかもしれません。


*ここでは単純化のため、参加の定義を改めたと書きましたが、そもそも以前の参加の定義に含まれていた「場」という概念は「空間と人間の活動」がセットとなったものであり、その意味で本来「関わり続ける」ことは(拡張された意味での)「その場に居る」ことと同義であるとも言えます。
 そのような見方で言うと、この記事の論点は、場がオンライン化されたことによって「行く」や「空間に存在する」という特定の関わり方ができなくなったが、むしろ、より多様な関わり方によって「その場に居る」ことができるのではないか、というものだとも言えるでしょう。



多様な選択肢を提示して、「遊び場」を作ろう

それでは、オンラインの場で参加者が「関わり続ける(=参加する)」ためには、なにが必要なのでしょうか?

それは、主催者が、はじめから多様なツールを提示しておくことです。

そもそも、オンラインの場は誰にとってもはじめての場所です。誰しも、行ったことのないカフェに入ったら勝手がわからず最初戸惑うように、参加者もオンラインの場において「どう関わっていいかわからない」という困惑を感じています

また、オンライン環境では何かをするのに権限が必要な場合が多く、参加者にとっては「何かしたくても勝手に遊べない」場になっていることが多いです。

だからこそ、最初から「今日はどういう関わり方ができる場であるか」というツールの選択肢をしっかりと提示し、また、感じ取ってもらうことで、参加者には安心して場に関わったり遊んだりしてもらうことができます。

具体的に、私が意識すべきであると考える点を3つ挙げて、この記事のまとめとしたいと思います。

【1. できるだけ多様なツールを用意する】
例①:Googleドキュメント→議事録や感想の共同編集
例②:zoomのチャット→感想や質問のつぶやき
例③:ホワイトボードツール(miro、MURAL、Google Jamboard等)→議事録や感想の共同編集
例④:ワークシートの事前配布→個人個人でのメモ・まとめ
例⑤:(セミナーなどにおいて)別チャンネルでの裏音声の配信

できるだけ多様なツールを用意することで、1人1人が自分にあった関わり方をすることができるようになります。この用意をみくびっていると、まさに「どう参加していいかわからない」場になってしまうので注意です。

【2. 行為の選択肢だけではなく、情報も】
1. で挙げた例のうち、①〜④は「関わり方」を提示していますが、⑤は「(別のかたちの)情報」を提示しています。

関わり方の提示だけでは、公園で「鬼ごっこだけをしていなさい!」と遊び方を指定されているようなものです。そのような窮屈な状況を避けるために、関わり方の選択肢を多様にするだけではなく、情報自体も多様にしておくことがよいと思われます。

【3. 最初に、どういう関わり方ができるのかを感じてもらう】
たとえ豪華な遊具がたくさんある公園に行っても、誰かが遊んでいるのを見たり、自分で少し遊具を触ってみたりしないことには、そもそも楽しく遊ぶことができません。

オンラインの場においても、多様なツールや情報を用意するだけではなく、あらかじめ最初のうちに「今日はどういう参加ができる場であるか」ということを参加者がよく感じ取れるようにしておくことを強くオススメします。
たとえば、チャットをツールとして使用していたあるzoomイベントでは「入室したら、チャットに一言挨拶をお願いします!」と導入することで、チャットを投稿する心理的ハードルを下げるようにしていました。



オンラインに、よい場が増えますように

オンラインでのイベントやミーティングは、誰にとってもはじめての経験です。それは、参加者も主催者も同じことです。

緊急事態宣言から4ヶ月が経った今でも、きっと双方にとって「うまくいかない」ともどかしく思うことは多いでしょう。

そのような方々にとって、私の記事が少しでも役に立ってくれれば嬉しいなと思います。

心から、この世の中によい場が増えることを願って。




次の記事は、9月6日に公開予定です。また、1ヶ月後にごゆるりと読んでいただければと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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