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タケフサの涙に報いるためには…世界に出てから新卒を迎えた日本サッカーへ。

 「オレたちのオリンピック」になる予定だった、東京オリンピック男子サッカー日本代表の戦いが終わった。

 EUROやコパアメリカ、W杯をTV観戦する際の懸念事項でった、時差による寝不足とかを気にしなくて良いからか、個人的に久しぶりに1つの国際大会を真面目に追いかけたかもしれない。

 上田綾世、前田大然、三苫薫、谷晃生…普段FC東京ファンとしてJリーグを追いかけていて、敵チームとして対峙する中、その存在を脅威として見ていた選手たちがこのオリンピックの舞台でどこまでやれるのか。いちサッカーファンとして、純粋に楽しみであった。

 自国開催ということで気候など、様々な有利に働くポイントがあるかもしれなかっただけに3位決定戦で敗れた瞬間は、虚脱感が大きかった。だが、それと同時に日本サッカーの限界点が目に見える形で、現れたのではないかと私は感じた。

 初めてW杯に出てから23年目、年齢で言えば大学を出て、社会人1年目に該当する歳だ。そんな、日本サッカー界に言いたいことがある!

 “感動をありがとう”はワイドショーだけで良い!

 今日は、私なりに今回のオリンピックで感じたことを綴って見る。

①選手選考


 東京オリンピックを戦ったU–24日本代表、まず、私なりに「変わったな!」と思えたことは2つある。

 まず、海外でプレーする選手の多さ、そして、そんな選手達を全員招集できた点に、日本サッカーの進化を垣間見ることができた。

 これまで戦った6回のオリンピック(ベルリン、メルボルン、東京、メキシコシティは除く)、怪我や病気、所属クラブの招集拒否などがあって、満足のいく選手選考が出来なかった。だが、今回は満足のいく選手選考ができたのではないかと感じている。

 それは、日本サッカー協会の強化体制の変化がもたらした結果だと考えている。ヨーロッパに駐在する現地スタッフを置くことにより、選手の状態の確認、所属クラブとの交渉などの連絡がスムーズに行えたのが大きかったと思う。これは、藤田俊哉氏を中心とした、ヨーロッパ駐在スタッフ、そして日本サッカー協会の強化委員会の仕事は大きかったと思う。海外でプレーする選手が増えていく中、選手は国際化をしている中、協会は今ひとつ国際化から立ち遅れている感が否めなかったので、今回の東京オリンピックでの選手選考に関しては、グッドジョブだったと思う。

 アジアカップやW杯といった大会には、選手を優先的に招集できるが、オリンピックはFIFA主催の国際大会ではなく、各国協会に選手を拘束する優先権がないため、そうはいかない。過去にはメッシ、ネイマールもオリンピックに出場する、しないを巡って所属クラブとの駆け引きが行われた。日本も例外ではなく、今回は自国開催ということで、それなりに融通は効いたのかもしれない。例えば久保建英は、次回のパリオリンピックにも出場できる年齢ではあるが、彼がもっとスーパーな選手になった時、所属クラブがオリンピック出場を認めるかどうかは分からない。東京オリンピックでの選手選考はある意味、様々な条件が重なって起きたミラクルなのかもしれない。

②グループステージの戦いぶりに日本サッカーの進歩を見た!

 次に、グループステージの戦いぶりだ。南アフリカ、メキシコ、フランスといった、決して簡単ではない相手に3戦全勝したのは正直驚いた。特に、メキシコの初戦を観た時に、率直に「グループステージの戦いは簡単じゃないぞ!」と思った。

 ところが、いざ始まってみると初戦の南アフリカ戦、引き気味にプレーしてカウンターを狙うサッカーをしているのを観て、「日本をリスペクトしている!」と感じた。結局後半に久保建英のゴールで先制し、1ー0で勝利を収めたが結果以上に日本の選手たちが、南アフリカにビビらず、堂々と自分達のサッカーをしていることが嬉しかった。また、南アフリカが日本を警戒するようなゲームプランを立てていたのが驚いた。

 2戦目のメキシコ戦は、早い時間帯での先制点、PKでの2点目などラッキーな要素に助けられながらも、タレント集団であったメキシコ相手に堂々たる戦いぶりを見せた。終了間際の失点はあったものの、2−1で強豪メキシコ相手に勝ち点3を得る事ができた。また、怪我明けの三苫薫の状態を確認するのに、このゲームを使えたところにも進歩を感じた。

 3戦目のフランス戦は、前半の2得点でフランスのモチベーションを削ぐことにつながり、結果的に4ー0でフランスを下し、3連勝でグループステージ首位で決勝トーナメント突破を決めた。

 南アフリカ、メキシコ、フランス…幾ら、強豪国から見てオリンピックのプライオリティが低く、一線級の選手を招集していないとはいえ、一昔前の日本代表であれば、「これ、勝てんの?」、「1勝するのも大変だよね」と思わせられる強豪国ばかりのグループで堂々とビビらない戦いぶりを披露し、3連勝できたことに進歩を感じた。自国開催とはいえ、決して簡単ではない相手に堂々たる戦いぶりを見せた日本代表に感動した。

③ただ、課題も見えた…

 ただ、決勝トーナメントに入ると、課題も見えた

 予選リーグとは打って変わって疲弊した選手、特にダブルボランチの田中碧と遠藤航の疲弊ぶりは明らかだった。予選リーグでは良い働きをしていた彼らも、中2日の強行日程の連戦で、決勝トーナメントではその疲れからか、パフォーマンスを著しく落としていたように見えた。

 これは、彼ら2人が悪いわけではなく、1試合、1試合、目の前のゲームに勝つことに集中しなければいけなかったグループステージでの戦い方に問題があると感じる。あくまでも、結果論ではあるが、決勝トーナメントを見据えた戦い、コンディションの持って行き方、チームマネジメントが出来ればと感じる。まだ、そういった戦いは日本代表は出来ないのだなと率直に感じた。これは、オリンピックだけでなく、W杯でベスト8に行くための課題なのかもしれない。

 また、準々決勝から3位決定戦までの3試合で1ゴールしか上げられなかった得点力も今振り返ってみると、課題なのかもしれない。手堅く戦う傾向のある決勝トーナメントで、強豪国の守備のブロックを崩しきれなかったという課題が残った。

 ディフェンシブに戦う相手を崩しきれないというのは、アジア相手でも充分に考えられるシチュエーションであるし、これまでの戦いでもしばしば見られた光景だ。その問題が改めて浮き彫りになったと感じた。

④今後に期待すること。

 •違いを生み出せる選手がもっと沢山出てきて欲しい  

 今回のオリンピックでは、久保建英、堂安律、相馬勇紀、三苫薫がいわゆる「違いを生み出せる選手」言い換えれば、1対1で戦える選手に該当するが、そういった選手がもっと沢山出てきて、決定的な仕事にどんどん絡んで欲しいなと感じている。そういった選手が多く出てきて、世界基準で戦えるようになっていけば良いなと感じる。特に久保建英、堂安律の今後に期待したい。

デュエルで強さを!

 元日本代表監督である、ハリルホジッチが使うようになってから盛んに言われるようになった“デュエル”という言葉、私なりには1対1、球際の勝負と解釈しているがこの部分での強さも日本サッカーが世界の舞台で、もう1ランク上に上がるための課題だと感じる。最近海外でプレーしてからJリーグに戻ってくる選手も多いが、海外とJリーグの違いを聞かれた際に特に多い答えが、この“デュエル”に関することだと感じている。

⑤新卒を迎えた日本サッカーに言いたいこと。まとめ

 初めて、W杯に出場してから、23年の月日が流れた。年齢で言えば、大学を出て社会人1年目。新卒を迎える年齢だ。

 今回のオリンピックで、選手、協会スタッフを含めた日本サッカーの進化を見る事ができたと思う。海外組の多さ、選手選考に関するネゴシエーション…一昔前を考えると、隔世の感がある。

 ただ、「引いた相手を崩せない」、「決定力不足」は何ら変わっていない感じがする。東京オリンピックのフィーバー、“感動をありがとう”のムードに流されず、自分の目の前にある日常のフットボールと世界のフットボールを追いかけていくことが、日本のサッカー文化の醸成につながるのではないか…

 そして、今度こそ、釜本さんを追い越すところを見たいよね…

 バモ!ニッポン!

 

 

 

 

 

 

 

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