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Re: あなたの部下で良かったと思える幸せ

私は2年弱ほどチームを率いる立場だったことがある。メンバーは多いときで5〜6人の小さなチームだ。マネジメント経験なんて後にも先にもそのときだけだ。

幸いメンバーに恵まれたこともあり、私自身大きく成長できた経験だったが、メンバーたちが今でも何かと頼ってくれたり相談してくれるのがとても嬉しい。

そんなメンバーだった1人で今は友人であるKayo Sasakiがラブレターのようなnoteを書いてくれたので、その想いに応えて私の視点からマネジメント経験を書こうと思う。なお本人の希望もあり、文中彼女のことは普段通り「Kayoちゃん」と呼ばせてもらうことにする。

逆ピラミッド型マネジメントの裏事情

Kayoちゃんが書いてくれた通り、私のマネジメントスタイルは逆ピラミッド型だった。私が一番下で、みんなを支える形だ。

実はこれには理由がある。私が一番英語が下手で、かつチームが主に扱うデジタルマーケティング(プロモーション)の実務経験がほとんどなかったからだ。

そのため私には教えてあげられるような実務スキルもなければトレンドにも疎く、加えて英語も下手では偉そうにできるはずもなかった。私にできたのはただ1つ、みんなを精神的に支えることである。

現に私はチームメンバーがプロジェクトマネージャーを務めるプロジェクトに一担当者として入り、そのプロジェクトマネージャーに教えてもらいながらソーシャル広告を担当したり、別のプロジェクトリーダーの下リサーチを担当したりすることもあった。

後から知ったのだが、これは効果的だったらしい。Harvard Business Reviewの記事にはこう書かれている。

「リーダーを目指す人が、自分は特別で他者より優れているのだと証明しようとすると、かえってリーダーシップを発揮できなくなるおそれがある」

「リーダーになりたければ、まずはフォロワーになろうと努めることが効果的」

「部下に従う」というのは抵抗のある人が多いかもしれない。しかし私はディレクターになる数カ月前までインターンだった身なので、そこの抵抗感はあまりなかった。Kayoちゃんからしたらちょっと前までインターンだったやつがいきなり上司になってさぞ面喰らったことと思う。

メンバーのモチベーションUPが至上命題

Kayoちゃんはnoteで、私がメンバーに人間として向き合っていたと書いてくれた。実はこれは、私自身が元上司にキャリアの節目でお世話になっていたというのが大きい。その元上司は私がインターンとしてサンフランシスコに渡り、さらに正社員として働き始める背中を押してくれた人だ。だから、私も誰かの背中を押せるような存在になりたいと思った。

そこで手始めに作ってみたのがゴール設定シートだ。実は昔勤めていた会社にも似たようなものはあったが、そこで書いたことが業務の割り振りや配置に活用されているとは到底思えなかった経験がある。不本意な異動後体調を崩し結果的に退職した私からすれば、そんなものはただのアリバイ作り(=「部下の要望を聞いてますよ」工作)じゃないかとすら思っていた(もちろん個人の感想です)。

だからこそ、作るなら本当に意味のあるものにしたかった。ただこういう類のものは私の経験上、普段思ってもいないことをその時だけ平気で書いて、提出したらキレイさっぱり忘れてしまうということになりがちだ。そして振り返りのときに「こんなこと書いてたのか」とようやく思い出す。

そこで私が作ったのは、プライベートも含めた長期ゴールをまず考えてもらい、そのために四半期で目指すこと、そしてそのために実行することを決めてもらうというものだ。長期ゴールは本当に何でもいい。「自分にもっと自信が持てるようになりたい」でもいいし、「趣味の活動でプロになりたい」でもいい。その人が心から目指しているものを達成するために、仕事を利用してもらうという考え方だ。

幸い(かどうかはわからないが)我がマーケティングチームでは幅広い仕事を抱えていたので、このシートを基に私はそれぞれにとって良さそうな仕事を割り振っていった。その際は「なぜこれをあなたにやってもらいたいのか」という理由を、シートに書かれた内容を根拠にして説明した。

私がマネージャーとして何よりも大事にしたかったのが、メンバーのモチベーションを上げて仕事へのエンゲージメントを高めてもらうことだった。それには、仕事を与えられたものとしてこなすのではなく、自ら成長する機会として捉えてもらう必要がある。しかもその「成長」は、よくありがちな単なるスローガンとしての抽象的な概念ではなく、目指す先を明確にしたものだ。その意味で、個人的なゴールと仕事を紐付けたことはいい方法だったようだ。

かくして私は「みんなのママ」となった

ゴールを決めて仕事を割り振ったら、後はどうぞご自由にというスタンスだ。扱う範囲が広すぎてすべてに首を突っ込むのは不可能だったのもあるが、できるだけあれやこれや口を出さないようにはしていた。

なぜなら、私自身それがキライだからだ。口を出されると「じゃあお前がやってみろ」と思うタイプである。だから基本的に仕事の進め方に口を出さず、週1回のチーム会での進捗報告を受け、後はSlack上の会話だけ追っておいて、そこで何か問題がありそうだったりメンバーのケアが必要そうだったら声をかけていた。

もう1つ私が心掛けていたのは、「今いいですか」と声をかけられたらできる限り「いいよー」と返していたことだ。しかも対面だと敢えてのんびりした声を出していた。「忙しそうで話しかけづらい」と思われたくなかったからだ。それに必要なときに頼れる存在であることがマネージャーとしての私の存在意義だと思っていたのもある。

そうこうするうちにいつしかチーム外の若手の相談まで乗るようになり、あるときはなぜかほかのチームのメンバーが福利厚生システムの手続きについて私のところに聞きに来た。それが1回だけでなく2回もあったので、「別にいいけどなんで私に聞くの?」と尋ねると「なんか色々知ってそうだから」という答えが返ってきた。光栄である。かくして私は人事担当の同僚から「みんなのママ」と言われるようになった。

メンバーに興味を持って人間関係を築くこと

私の手探りのマネジメントスタイルは、小さな会社の小さなチームだったからできたことかもしれない。あと、社内にもともとマネジメントに関して決まった形がなかったため、自分が良いと思う方法でやらせてもらえたという幸運もある。

その方法の根底にあったものを掘り下げてみると、私自身が人付き合いの際に「深く関わりたい」タイプだというのが大きい。だからメンバー1人ひとりに興味を持ち、人間関係を築いていった。私が面接でメンバーを選んだわけではなかったのだが、ご縁で同じチームになった彼らのキャリア選択や生き方のお手伝いができるということで、私はとても張り切ったのである。そんなチャンスをもらってとてもありがたかったし、今では色んな会社に巣立っていった彼らがその先の道を模索するうえでまた相談しに来てくれるととても嬉しく、また張り切って世話を焼いてしまう。

とはいえ、メンバーの成長が嬉しかった反面、私自身ももう少し現場で活躍したいという思いが芽生えてきたのは以前私のキャリアストーリー「川下り型キャリアを実践する女の話」に書いた通りだ。マネジメントを離れた今は毎日せっせと現場仕事をしているが、またチームを持つことになったらそれはまたおもしろいだろうなと思う。

(写真は左がKayo、右が私。真ん中はのちにチームに参加したメンバーの1人、Yasuko。サンフランシスコにて)

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