【短編】5.ひまわりの夢
ひまわりの種を食べるとおへそからひまわりが生えるというが、それは嘘だ。
正しくは。
ひまわりの種を食べると、夢を見るのだ。
一面のひまわりの夢を。
青い空と白い雲の下、どこまでも続く一面のひまわり畑。
それはどこかにあって、どこにもない景色。
日差しは暑いが、今はどこかに忘れ去られた優しい暑さだ。
流れ落ちる汗を、どこからか吹いてくる涼しげな風が撫でていく。
私たちはいつの間にか、夏にぴったりの服装になって、ひまわり畑に迷い込む。
前と後ろがわからなくなり、出口に迷う。
それでも必ず夢は終わり、やがて現実に戻るのだ。
人がひまわり畑に何らかの感情を抱くのは、それが原因だという人もいる。
ちなみに友人のYの話だが、一度、夏の終わりに食べてしまったらしく。
一面の枯れたひまわりは、なかなかのホラーだったと言ってげんなりしていた。
どうも夢の中のひまわり畑も時間は経過するらしい。
だから、ひまわりの種を夏の終わりに食べるのはお勧めしない。
どうにも退屈な景色になるから。
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